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プラマイゼロ

私はくじ運が強い。こんなにくじ運が強い人間は滅多にいないと思う。エピソードを紹介する。

・小学生の頃に温泉地で引いたガラガラポンで一等が当たり、米か酒か名産のお菓子をもらえることになった。

・成人式のビンゴ大会で、「絶対に当てる」と宣言し選んで引いた一枚で、百人近くいた中で二番目にビンゴする。

・塾講のバイト先で当たりが出ればデカい箱でチョコがもらえるイベントで当てた。

・近所のショッピングモールでくじを引くと温泉チケットが当たった。

等、大したことがないものから大したことがあるものまで、くじ引きで何度も美味しい思いをしたことがある。人生でそんなにしょっちゅうくじを引いているわけではないが、機会が来れば高確率で大きな当たりを引いてしまう。なんだったか覚えていないような細々した当たりはそれこそ死ぬほどある。

これは、自分の神に与えられし業だと思う。くじ引きギフテッドだ。博打は怖いので宝くじも馬券も買ったことはないし、パチンコ屋で働いていたくせに一度も自分の金で打ったことはないが、一つでも手を出そうものなら、きっと目玉の飛び出るような金額を手にするハメになってしまうだろう。

当たりを引く前に、あ、来るぞ、となんとなく予感がすることがある。本当に当たった時、ほらね、という気持ちになるし、そんな自分にゾッとする。来い、来い、とプレッシャーをかけるのではなく、当たりがこちらに近づいている予感がしたらそれをそっと手繰り寄せるのだ。


そんな稀有な才能を持って生まれてしまった私には、反対に一切持って生まれることのできなかった才能がある。それは、人を引き寄せる才能だ。

小学生2年生の時、信じられないことがあった。当時仲良くしていた子が三人いて、なんと同時期に三人とも引っ越したのだ。まるで私をひとりぼっちにするために仕組んでいるのように、一人、また一人と、「実は私も引っ越すんだ」と告げて、あっけなく去ってしまった。姉には当時、「お前が疫病神だ」と囁かれたが、本当にその通りなのではないかと思った。

他にも、仕組まれたかのように人運が悪かったことが死ぬほどある。スイミングスクールで私一人だけ皆と時間が違った。帰り道、皆の中で私だけ家の方向が違った。学童保育で、同じ学年の女子が私一人しかいなかった。バイト先や授業で女子が私一人しかいなかった。大学進学と同時にスマホの充電口が壊れスマホが二度と起動しなくなり、LINEにログインできなくなり高校までの人間関係全て吹っ飛んだ、etc...

人が周りからいなくなっていく要因は自分の性格や言動のせいもあるが、それ以外の、偶発的な要因や環境要因に対して、半端じゃなく引きが強い。くじ引きと同様、毎回確かな孤独の予感がして、見事引き当てても力なく「ほらね」と言うしかない。


人生は結局プラマイゼロだと言う人がいる。しかし一つ言わせてくれ、人が離れていくというマイナスはくじ運の強さでゼロに持っていけるとでも思っているのか?神よ。私は他にもうっすらあなたに与えられたものや、うっすら奪われたものをなんとなく把握しているが、くじ運の強さと人運の無さだけは、はっきりとあなたが仕組んでいると確信が持てる。頼むから、二度と温泉チケットの代わりに友人を一人奪わないでくれ。メルカリで900円で売れた程度じゃ、絶対に割に合わないから。

 


おしまい


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