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パーリンカ(PÁLINKA)


日本ではハンガリーはワインで有名だが、パーリンカという蒸留酒へのこだわりも非常に強い。EU 規制に基づくハンガリー国内法では、(1)ハンガリー国内で栽培された果物を原料とし、(2)ハンガリー国内で蒸留・瓶詰され、(3)アルコール度数が精留時は 86% 以下で瓶詰時は 37.5% 以上のアルコール飲料を「パーリンカ」と呼ぶとしている(英語版の Wikipedia より)。

ウォッカとの違い

日本人には分かりやすいように国民酒という意味でハンガリーのウォッカみたいなものと表現するが、同じ蒸留酒でもウォッカとはかなり違う。まず最大の違いは、ウォッカは穀物を原料にしているが、パーリンカは果物を原料にしていること。そしてウォッカの度数は 30 ~ 40 度であるのに対し、パーリンカの度数は 40 ~ 70 度とウォッカより高いこと。私が頂く典型的なパーリンカの度数は 50 ~ 55 度である。

日本酒・ワインとの違い

ご近所さん達とパーリンカやホットワイン(forralt bor)を飲みながらクリスマスツリーを飾っているときに、日本酒の度数を聞かれ、10 度台でワインより少し高いぐらいと答えたら全員が驚いていた。そして日本酒はワインに近いのかパーリンカに近いのか聞かれ、困った。ワインの場合、ブドウをつぶすだけで発酵が始まるが、日本酒の場合、米に酵母があるとは思えないのでパーリンカのように一手間かけないといけないはず。でも度数はワインに近い。そこで調べたら、日本酒は並行複発酵による醸造、ワインは単発酵による醸造、パーリンカは蒸留という方法で作られることがわかった。パーリンカは度数が非常に高い割に、2、3 杯程度では全く悪酔いしない。空きっ腹で 1 杯グイっといっても。ずっと不思議だなあ思っていたら、製造過程で不純物が取り除かれる蒸留酒は悪酔いしにくいことがわかった。

習慣

パーリンカ好きのお宅にお呼ばれに行くと、挨拶の次にすすめられるのは椅子ではなくパーリンカで、立ったまま乾杯したりする。初回に断らず、パーリンカを飲めることがバレたら、以後、車を運転しなくてはならない等の正当な理由がない限り断るのが難しくなる。

種類

私の個人的な印象だとプラム(szilva)のパーリンカが最も人気があるように思う。その他、モモ(barack)、アプリコット(sárgabarack)、リンゴ(alma)、西洋ナシ(körte)、サワーチェリー(meggy)と様々な種類がある。これらの果物を組み合わせたもの(vegyes)や、ワインを作るときに出たブドウの搾り屑で作られたもの(törköly)もある。ご近所さんの一人が自家製パーリンカ(házipálinka)を作っており、数年前にクワ(eperfa)のパーリンカを頂いたことがある。ご近所さんはプラムのパーリンカにドライフルーツを漬けるのが好きなようで、タイトルの写真の左側にある茶色のものはサワーチェリー、下の写真は上からリンゴ、プラム。そしてなんと一番下は古いオーク(tölgy)のドアの修理で出た削り屑をコンロの火で炙ったもの。パーリンカは英語ではフルーツブランデーとも呼ばれるが、これは本当にブランデーのようだった。これらは毎日シェイクして味を染み込ませているそうだ。

蒸留

ご近所さんが自家製パーリンカを作っているとは言っても、パーリンカの蒸留には高度な技術が必要で、確か法律上も蒸留所に依頼しなければならないはずである(2010 年に政権が変わったときに、個人でも自家製パーリンカを合法的に作れるようになり、それが条件だったように覚えている)。蒸留の方法までは調べられないかもしれないが、暖かくなったら、ご近所さんに密着取材して蒸留までの準備の様子を掲載したいと思っている。

2019 年 3 月 3 日追記:2016 年以降、パーリンカを蒸留する個人は
● 蒸留したパーリンカ 1 リットルに対して 700 フォリントの税金を払う
● 1 人が 1 年に蒸留できる量は最大 86 リットルまでである
● 本人が消費することを目的とし、取引(販売・物々交換?)はできない
と法律が改定されている。ただ、現時点では 23,662 件の家庭で蒸留されているが、正式に使用されているのは 6,918 件のみである。
出典
英語:Daily News Hungary
ハンガリー語:Magyar Nemzet

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