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俺とユウキとオカルト

世界ってよぉ、五分前にできてんだぜ!

オカルト好きのユウキは目を輝かせながら俺に向かって世界五分前仮説を熱弁している。

最近頭の調子が悪いと言っていた割にはやけに元気そうに話すユウキに少しうんざりしながら

うんうん、その話なら俺も知ってるよ。

と、いつものようにテキトーに受け流す。

有名な話だ、今更そんなことを言われても何も驚かない

それ、あれだろ、五分より前に世界が存在してたってのが証明できないからってやつなんだろ?
1分前だろうが30秒前だろうが同じじゃねぇか。

俺がそういうと、ユウキはつまらなそうに

なんだ、知ってたのか。

と、悔しさを孕んだ目でこちらを見てくる。

そりゃそうだ、ネットサーフィンが趣味の俺ならよく見かける話なのだから。

じゃあよ、こんな話は知ってるか?

少し苛立ちを込めた声でユウキが話し出す。

話によるとこの世は自分以外の人は全てアンドロイドなんだそうだ。

あー、はいはい、つか、証明できねーだろ。

俺がそう言うとまたもやユウキは悔しさを目に宿して見つめてくる。

まるで、今直ぐにでも証明してやるとでも言わんばかりの気迫で。

当然無理な話だろう。証明なんて。

ユウキは
お前、つまんねーな。
と言いながら俺を小突いてきた。
だから、やり返すつもりでユウキの肩をドンと押した。

押したのは本当に、ただふざけただけ、いや、少しイラついていたのかもだけど。
でも悪気なんてない。
だっていつものことだから。

なのに思いのほかよろけたユウキは足を滑らせて床に向かって倒れていく。

やばい、少し強く押しすぎたか!?
想定外のことが起こったため、緊張で視覚と聴覚が途端に鈍化する。

鈍化した耳にはユウキのあっ、という声がうっすらと聞こえる。

しかし、そんな鈍化した五感は
カンッ
という甲高い音によって強制的に引き戻された。

ありえないはずの音に驚いて、ユウキが倒れたところに目をやる。

ユウキの頭は床にゴロンと転がり落ちていた。

有り得ない。

は?皮膚は?骨は?なんで?なんで?なんで?

混乱した俺が意識を失う瞬間に見たのはユウキの首から伸びた赤や青のコードだった。

頭の調子が悪いってそういうこと?

混乱した頭でそう思った瞬間、俺の意識は深く落ちた。

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