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休部

この記事は、2020年に「休部」という名前のtwitterアカウントを使い、僕の名前を隠した状態でほぼ毎日一首発表していった短歌をまとめたものです。Twitterアカウントの方を消そうと思っているので、noteに短歌を残しておこうと思います。
見返すとまだまだ未熟な歌が多いですが、まだまだ作風が固まっていない故の荒削りさが出ていて面白いかなとは思っています。

振り向けば後ろにかかる重心の いったい何があったんだろう

このままじゃだめというならどうだっていいよ ポテチが波打っている

新しい眼鏡をかけて帰る夜月の万有引力を見る

敵襲に倒れた兵は終戦を見ることはなく次の試合へ

ひとりひとりが未来へ紡ぐ物語の外伝として海面上昇

割り箸の落とさなかった片割れをもう一膳と合わせて使う

マンションの最上階の部屋にだけ電気がついている午後六時

りんごルビー留守番電話ルイベ瑠璃ルール類するルアーモジュール

円筒にコインを一つ入れて混ぜどの円筒があなたでしょうか

自己肯定感が足りない惣菜に貼り付けられる半額シール

少し高いメトロノームの一拍目思い出せないあなたの吐息

カレンダー二つめくっていつもよりやや丁寧な歯磨きをする

こちら午後。まもなくそちらに太陽が到着される頃です、どうぞ。

リモコンを押せば見たくもないものが写り込むからリモコンを押す

週刊誌読み耽ってるおばさんは僕より少し先を生きてる

人間の涙を知らぬロボットはタイムマシンを胸に潜めて

12時になれば魔法が解けるから明日のパンを買って帰ろう

私をマジックミラー越しに見る私がいる貴方もいる

いいことを教えてあげる 2種類のクリーム口の中で混ざれり

HIKAKINを見つけたことは絶対にどこの誰にも言っちゃダメだよ

大陸が僕らを乗せて動いてる至る所で電子が揺れる

さくさくと崩されてゆき空っぽのラスクの包みに零れた銀河

フグ毒にはフェロモンがあるみたいだしきっとあの子もフグなんだろう

マイナスはマイナスとつき良いように足し合わせたり掛け合わせたり

心理士がカウンセリングするように砕氷船はじわりと進む

往年の奇跡学者が恋文に残さなかった三文字のこと

ストライプスーツに交差する雨と鍔迫り合いの朝八時半

人類の進化はすごい尾骶骨に差し込むタイプの充電ポート

叩くほど増える不思議なビスケットより高速で増す叩く人

愛しさに鍵をかけた日夢だった頃の記憶は密室となり

アウトソーシング いつかの悲しみは蒔かれて人は雪かきをする

休日の小学校の玄関の蛍光灯が灯っておりぬ

苦しみを隠しきれずにキャラメルが斑らにかかるポップコーンを

大脳は火薬庫なのにどこを見ても火気厳禁と書かれていない

信号が青になるまでの一秒間世界はスローモーションになる

箱庭に好きなものだけ詰め込んでこれっぽっちの幸せですが

衝動は拳銃に似て撃鉄が押した空気の分の背徳

高望み キリンに乗ればキリンより遠くを望むことができない

ビビットに塗り重なったデザートのインスタントに映える死に際

量産型ネットニュースの雑な締めみたいにちゃんとあたしを振って

他人には優しくなれるもの同士抱き合って眠る私と影と

泳ぎ方を知らずに海を漂っているけど有象無象を怨む

しょうがないミスとしょうがなくないミスとしょうがなくないミスで仏滅

ぬばたまのアイスバーンに捕まれば一ミリばかりずれる心臓

鞄の中で溶けていたチョコレート潜めたままに 北国に雨

渦(人工的な)そしてそれを理解するためだけの枠組

本当に布団が飛んだときちゃんと布団が飛んでったって言えそう?

終わりには始まりがある事をいいことにし春夏秋冬の死期

我々はアンパンマンに愛というものの重みを試されている

高級な時計を着けているうちに手首の価値は下がり続ける

ルーティーン 明日会えたら何か気付かない?と言ってみる ルーティーン

するつもりじゃなかったのにした喧嘩二人だけなら揃わぬダンス

始まりは終わりのように頼りない綿毛が春に吸収される

絶対に遅刻する地下鉄に乗り感染者数を知らされていた

産まれたての仔鹿の真似と宣言し生後三日の仔鹿になりぬ

自由とは音符の如く五線譜を越えればそこに可視化する檻

輪郭をくっきり書けば周囲から隔絶される 月が冷ややか

決められた通り静かに挙手をして参考人が話し始める

人生を短編集に喩えればぽつぽつとある真白き頁

ショートケーキに観測されしクレーター束の間白き遺跡となりて

記録には残っていると聞いております記憶にはございませんが

さよならを言えば余白が乗り移り新しいつながりを求める

神龍がドラゴンボールをひとつだけ増やす願いを叶えてくれる

何回も転生をするムスカ大佐はバルス返しの時を伺う

意味のない祈りのように繰り返しトライアンドエラーエラーエラー

リア充をたまに爆発させていて軽い雪崩を観測してる

快速の夢は間もなく発車します次の希望をご利用ください

命ってやつを体現する水を見失っては哭き喚いてた

この世から抹殺したい記憶らを集めてスカイツリーは光る

ほんとうにあなたの事が好きだから本日の件はどうか忘れてください

明日から本気を出せば軽々と終わらせてしまうから出さない

ロウソクのないケーキを食めりハッピーバースデーディア今日の軌道の月よ

いつだって道は一つで花嫁が舞台女優になる日の涙

地球だって生きてるんだし体調が悪い日とかもあるんだろうね

休日のフードコートの行列が無いのに美味いフライドポテト

見せかけの価値を誇示して愉しいか プラゴミがゴミ袋をなじる

冷食がターンテーブルに佇めり電子レンジはホスピスのごと

幽霊が笑ってるらしい惜別の哀しみは癒えそうにないのに

ハローハロー 誰のものだか分からない声の調子でハローハローと

生きているだけで最強生きているだけで最強な人と会えば

母さんに生えてる角を春が来る頃に必ず切り落とさなきゃ

薬にも毒にもならないとか言ってそれってちゃんと苦いんじゃない

両想い切符さよなら最寄駅の改札はいつもひとりで通る

偏屈な愛をたくさんくれたからハジメマシテと言って別れる

どうか僕が想像上の生き物になれますように夢の中でも

落ちる落ちるどんどん落ちる落ちるときは一瞬なのにまだまだ落ちる

感情にバグが検出されましたただちにここで泣いてください

雪融けの水が持ち場に就いてゆく春は大地の連想ゲーム

悪戯をすればするほど褒められて耳にソーセージが乗ったピザ

病欠のあの子なしでの席替えは余った紙を言い訳にして

破壊力と創造力を酷使して今日も今日だけの歌を歌おう

前年の法人手帳捨てられて土に埋もれたままの新緑

いじめられっ子がいじめっ子になる花吹雪 合成数のアウトブレイク

こんにちはあの日助けてもらったでおなじみの鶴ですさようなら

天気雨の跡はすぐ消えパン屋からツチノコがいるみたいな匂い

消しゴムが消しゴムカバーに負けそうなときに助けるだけのヒーロー

好き、嫌い、嫌いではない、好き、嫌い、好き寄りの嫌い、好きだから嫌い、

アイラブと吐いたらユーと言わされる目眩のような春の大空

太陽のネタばらしかよ正しげに明るくなった時間を返せ

無意識に小指に春を貯め込んでいたのだと知る悶えながら

天国に行けば誰もが許されてやりたいことを忘れてしまう

信号が点灯してる話したいことがあるからパチンコに行く

むせたまましばらくしても咳が出る 地球の温度がゆっくり上がる

休日にネットサーフィンしていたらパラセーリングしてる奴に会った

レバニラに集中線が付いていたちゃんと回復アイテムだった

粉砂糖舌で舐め取り新しい自分に生まれ変わらなくっちゃ

味気ない悔いがあること辛くないわさびでちゃんと泣いてしまって

ジンルイヲハイジョシマシタ コウヒョウカ・チャンネルトウロクオネガイシマス

春が来た足音はもう聞こえない誰かが落としたオレンジのシュシュ

駄目だろと思ったときに聞きに行く用の人から駄目と言われる

飛行機に乗り込む君を見送って飛行機を見送る まだ見える

四十分味長続きを首肯して纏わる風がこんなにも春

簡潔に塗り替えられた日常はミルクパズルのような永遠

脳内の天使がポンデリングを乗せてきた悪魔がチュロスを取り出してきた

道草を終えて僕らは慎ましく電車で帰ってきた人ごっこ

俺たちも生きづらかろう不規則に鳴る拍動をベースとしては

「へ」はへびのへ「S」はsnakeのS 生きてるだけでくたびれちゃうね

納豆のからしが深くため息をついて朝から仕事に向かう

海賊は海賊のまま船を降り海賊のままワルツを踊る

素麺を頬張りながら考える楽しくもない平和について

頭からもげた小さな消しゴムは消しゴムのまま役目を終える

バイバイン夢から醒めた頃はもう宇宙の果てに広がるドグマ

タピオカのカップが落ちていてここはghosttown in "the" Tokyo

逆襲が必要だった青春と殺人企図はだいたい同じ

カバのこと馬鹿とか言うのやめなってイボイノシシに怒られるだろ

友達の友達めいたやりとりで天使と悪魔が答えをくれる

思い通りにならないだけの日々もありショートケーキの日のメカニズム

牛丼のテイクアウトを待つ人に牛丼を食べるのを見られる

嘘の字は口に虚しいと書くのだという嘘をつく淡い寝室

静けさが狡い深夜のファミレスで店員にココアを補充させる

俺たちが皮膚呼吸して暮らすにはもっと難しくなくちゃいけない

青色の光を逃がすお仕事を辞めて私は悲しみとして

ひたすらに積み上げてゆく 俺はどのテトリミノでもない 一連鎖

とんかつで例えるならばキャベツだよ唐揚げならばパセリになるが

ダイイングメッセージを見かけた際は頭に#を書き足しましょう

アイデアの海で泳げば楽しいし知らない人が流されてくる

俳優がハンバーガーを食べている俳優だから一口目だけ

姫様はまだ遠くには行ってない月と光の間を探せ

月の鏡にこの世で一番美しい人を尋ねて出てきた女神

風船が{弾ける,しぼむ}人間が{無数の黒と白の縞々}

インドでは普通だよって乗車率1000%の宇宙旅行を

オイシイと鳴く生き物が鳴いていたからオイシイと名づけてあげた

「あっ、雨」の声は雨音にかき消されどう見ても一方通行の水

一昨日の晩御飯とか覚えてる?それが最後の晩餐でした

意味深な羅列 使い捨ての言葉 詩 ぶつ切りの 死 ふりだし 始

悪い後輩みたいなナビが警察がよくいる場所を教えてくれる

行列のできる野望と行列のできない夢で成り立つしくみ

無修正俺の生き様十数件所持の容疑で拘束される

時が過ぎちびた心で単調にはいといいえを選び続ける

人間が人間になるだけなのになんでみんなが怒っているの

全能の愚人になってタロットの逆位置の意味ばかり調べる

残業を済ませた帰路で野良猫に追い越すことを許される夜

命には等しく価値があるけれど回転寿司のいくらととびこ

安定は時に不都合ボックスのティッシュがラスト一枚だった

土曜日に家賃を払う生きてれば死んでることもそれなりにある

異世界に飛ばされたから領収書切って出すだけ快適ライフ

運転が全自動化しハンドルはみはじを埋める空隙と化す

ストライクバッターアウトツーアウトランナーなしで代打自己愛

開演の十二秒後にキターーーーって打って異次元空間に飛ぶ

搦め捕る愉悦を覚え粘性のない糸の出し方を忘れる

風に救われる綿毛と風に遊ばれる綿毛に違いはあらず

タイムリープものの主演を張っている僕に誕生日が来てしまう

本当は幸せでした虹を見て優しい嘘をつきたくなった

ハンガーのカースト内で威張ってるフックのことをじっと眺める

中立を求めてハテナブロックにキノコを詰めるバイトを探す

唐突に好きな動画を聞きあってYouTuberじゃない人を言いあう

10点のあなたに0を一つあげる百の位につけてもいいし

アド街を見たと伝えるこんなにも自意識過剰なのかお通し

仮説では計り知れない影響を冗談にしてしまう優しさ

射幸心とは仲良しで簡単に手に入れられる系の最大

QWERTY 仕事を終えたパソコンがため息を吐く夜 QWERTY

売名を成功させて幼気なシュレディンガーの猫は滅びぬ

長風呂を許される夜見えてない部分の月も休んでるはず

あべしって言ったところで死なないしむしろ死んだ後で言うんだよ

無人島からの脱出からの脱出からの脱出からの脱

結果論だったと思う終点の駅で私が泣いてないのは

ペットショップの隣に仏具屋があってその前でタバコを吸っている

改札になんか切符を戻されて駅員に渡したらなんか通れる

花の名がついたサラダを分け合って誰にも言えぬこと隠し合う

変態に付けられていたドの文字を集め続ける回収業者

人知れずため込んでいた悲しみをボルボックスのように吐き出す

脇道を合法的に横切った夜は星座を無視しても良い

梅干しの種入れに桜桃の種吐けばスズメバチに抗うミツバチのごと

生涯が全て現実だとしたら遠くに逃げるのもいいだろう

伸び過ぎた前髪みたいな消しゴムのカバー切ったら明日は月曜

風船ガムが弾けたときに細胞が一つ生まれて二つ亡くなる

雨音のシンコペーション駆け巡り僕の取り柄を教えてくれよ

NGのシーンだけから作られた映画みたいな二人の出会い

僕がシェフならば5回に1回は気まぐれサラダに包丁入れる

四捨五入したら四十になるような雨がこの街にも降っている

悲しみは水溶性で生きる人の全てにプールの塩素の記憶

生命線が長いんだねと褒められる生命線しか知らない人に

自由とはとても不自由とはとても不平等とはとても平等

引き金を引いたら花が溢れ出すタイプの記者は何も言わない

黄昏の夕日の色をスポイトで搾り取る頃には濁る夜

ありとあらゆる曲の共通点を探すとき邪魔になる物らが僕だ

満月の夜に目覚める本能が僕に皿洗いをさせてくる

ヒトを食うからヒトに理解を示されてしまう生き物がいなくてよかった

藤井聡太は食に興味があるらしい脳内メーカーが言っていた

深淵を覗き込むとき深淵も僕を深淵だと思ってる

自我を持つ時計がずれ始めてから小さなねじに殺されるまで

海賊版の楽園が増え天国と地獄はもはや秘境となりぬ

サイダーのどの水泡も嘘と呼ぶサイダー側が諦めるまで

厄介なバグを修正するように君が数字を辿るナンプレ

なめらかにランチタイムが終わりゆき僕の気配を隠しきれない

引っ越しをすれば捨てれる物たちを残したままでホテルに向かう

鹿が目を向けた先には僕がいて僕はいないことになっていた

携帯を忘れる。ふりだしに戻る。そして記憶を全て消される。

1192じゃなかったのかよ簡単に覆されていいことなのかよ

風呂の神として子供の放尿を注意してからトイレに戻る

あーあの子たぶん今ので完全にファン辞めちゃうねって朝虹が

運命を探していても出会うのは運めくらいでそれもまたい、い

打てる手を全て使って折れそうになったら忘れずにUNOと言え

ハノイの塔を移動する幸せがきっとどこかにあると信じる

ランドセル背負って駆け出す子を追って諦めた子の視線の遠さ

咲き揃う花の写真の片隅で花蟷螂が共食いをせり

目に入るどのマンションの一室の蛍光灯も青白い夜

天国があると信じる人類が作る光が凡そ下向き

氷上をまっすぐ進むギミックに逆らい始めてからが本番

バニラアイスをメロンソーダに沈ませてたまには真実の話をしよう

65535種類の人格全て葬り去るか

箱のない脱出マジックのようだそれでも僕は迷わず逃げる

近づいてくる雷が並べてる真っ只中のドミノを倒す

僕達が見る限りでは太陽が自らを罰したことはない

どこからももう開きません 最後まで傷つけあった代償をくれ

取り調べ室に呼ばれたカツ丼が自白を終えるのを待っている

紫陽花の花、これが花 命ってありふれているから好きじゃない

今日もまた地球は回るかといって誰に強要するとかじゃない

ロマネスコ小さく割いて最後まで自分勝手でいつづけなくちゃ

悲しみに包まれている僕らごと包み込んでくれる星月夜

神様はいないと知っているうちに明日のパンを半額で買う

人生がマラソンならば応援をゴール付近でする人のこと

法外な値段をつけて街中に俺の感情論が溢れた

おもちゃ箱に電気羊を忍ばせてひっくり返す子を待っている

フィッシャーマンズノットのような関係を最後は何も残らぬような

芸人が漫才をするCMで受け入れられる観客の「えー!!」

人間と獣の違い クレープを巻いて食べるか広げて食うか

反省を済ませた夜のバッテリー残量99%

極細の硬めを示す歯ブラシの緑は君でしかなくなった

ひらがなで言うなら「ま」までいろはじゃ「け」アルファベならばセディーユも入る

正義感の強い者ほど逃げる事を選べぬのならやめろ、ケードロ

揃ってるビンゴカードを後ろから覗くと現実が影をさす

水切りのように人工衛星は飛んで銀河の底に佇む

翼とは言えない腕を高く挙げ僕らを貶す風を捉える

モブキャラの家に入って手に入れたおなべのふたが壊れなかった

単純化されてしまった色のジャム すべての者に言い分がある

海に名が付いているのを知らぬまま海を漂い渡るビニール

水味のジュースのような雨が降る朝を命は気づかなかった

変化のない日々そのものが壮大な前振りである 夜が深まる

スライムが集まりキングスライムに化ける理屈を受け入れている

スフィンクスにケンタッキーが何なのか教えた奴がいるのだろうな

水源を確保してから本物と呼べる笑顔が見れなくなった

可愛いに含まれている愛の字のように一途な愛をください

変な車が変な匂いと音を撒き隣の駐車場に入った

最○を決める過程の正しさで競ったら最強が最強

下書きを消して残った跡ほどの後悔をする失言の後

肉塊に閉じ込められた流体が私のために溢れ出すのだ

夕焼けをハラスメントと呼んでいるハラスメントが早まっていく

善悪の本当の意味を知ってるの。ぷるぷる、わるいスライムじゃないよ

悪口を言って損した分ほどの光を月は選んでくれる

筋肉が足りない人の言い分だ月がきれいだなんていうのは

0.99999999999999999999≠1

ほら吹きの子供が今日も街中でニホンオオカミが来たと騒いだ

蟷螂には蟷螂に、人には人に合わせた大きさの武器を持て

ドリンクバーのアイスコーヒーの原液 最低の世界に祝福を

羽で飛ぶ者にも飛ばない者にも等しく届く翡翠の緑

「笑うのは人間だけの特権です」言いたいことは山ほどあるが

ジャンキーなにおい漂うフロアーでBPMを上げる吃逆

洗えないマスクを洗う似たようなことが社会で淘汰されても

落書きの相合傘を片方が抜けた 雨が止んだみたいで

二〇一九年のクイズ番組で出題された「リモートワーク」

オルゴール、僕の記憶を預かって今度会うとき忘れてくれよ

点滅の信号を歩いて渡るついでに信号を歩いて渡る

わたくしが零点になる空間を定義するとき広がる矛盾

種なしのぶどうに混入した種を当たりだよって笑って捨てる

運命が生んだ不思議な斥力であなたが奴とめぐりあったの

微睡みが僕の願いを呼び起こすように時計の針が止まった

「人」の字は人と人とが支え合いたくさんの自意識を宿らす

出欠の切り取り線の隙間から僕の存在感が抜け出す

あなたから優しいハグをもらう日は私は夜を褒めてあげない

始まりか終わりか分からないけれどはみ出している服の糸 切る

歌いながら帰ってるあの人にまた会えて嬉しいうるさい黙れ

大体のベルトの穴はこの僕を分からないのに空いているのか

フリックをばいきんまんは知らぬから「は」を十五回タップしている

孤独とはギミックとしてそこにいるひとくいばこがついに撃つザキ

神様に見つかるように僕たちは黄昏の公園に隠れた

パンダから貰った愛と私から奪った愛で生きている人

善悪を判断できる存在が自分を悪と認めて終わり

明らかに還元率が一よりも高いカジノのバニーガールよ

退屈な会議がずっと終わらない風船ガムが上手く割れない

年収を誰かが言わされるたびに後進国で銃声がなる

ナンパ師が最後の賭けに負けたからアホロートルが笑ってみせた

雷が光って雷が鳴って雷が降る 雷だった

ピラミッドの底辺にいていつだって別の場所へと繋がっている

もみんなに愛されている青年の全ての個性だった姿も

飛びたいのはみんなそうだろペンギンもヒツジもヤゴもコンピューターも

暗い部屋明るい部屋と同じくらい優しくて好き たばこの煙

大喜利と思ってたからうんこって叫んだんだろ面白いだろ

y=2xを作図せよ無限遠まで責任を持て

宇宙人がいるかと問われ星々が議論し直す命の定義

台風が発達します多分しますお家を捨てて逃げてください

ねえ、月がわらっているよ。いなくなるときがこわくてわらってるのね。

三日月をどんなに多く集めても満月にすることはできない

もう何に転職しても地元では雇ってくれるところが無いや

有名じゃ無い砂漠には有名な砂漠に比べ砂が足りない

踏み込んだときには既に戻れない三重殺の自殺と他殺

魔王だと思った人が魔王ではなくて途端に重くなる罪

単純な私を深く信じてるメリーおでんを食べる火曜日

ハッピーでヒッピーでフッピーでヘッピーなホッピー冷えた大衆酒場

危険鮫取扱者各種免許認定機関をまず襲う鮫

呼んでないのに出てきたSiriが悪びれもせず帰ってくその方がいい

投票でボイスがついたキャラクターが彼らに向けて言うありがとう

一生が短いために一度しか脱皮できない蝉の抜け殻

腐心して探し求めた正解を手放す夜の逆さまの月

よく見ると水かきがあるよく見ると昨日こぼした言い訳がある

I amの短縮形に溢れるa 私が一つ行き場を無くす

僕が死んでも月は登るし今だって月は登っているから困る

想像の海はいつでも冷たくて私を満たすには頼りない

本能が疼き出すから満月の日に満月の歌を詠めない

振られずに飲まれたお茶が背負ってる自己嫌悪だよ可哀想にな

赤い薔薇は命を繋ぐ愛という概念が無くなる時のため

被害者が遺した六桁の数はスマホのパスコードだと判った

透明なゴリラが部屋を横切ってそれにしか気づかぬ世界線

レタスには感情がない感情がないからビタミンを吐き出せる

喧嘩する祭があって参加する人がそのための顔をしている

納豆パックに残ったネバネバが多いほど愛がないってことにはならない

疫病に罹り魔王が変身を二回残したまま死んでゆく

サイレントトリートメントかのように誓いのキスをただ見つめてる

誰一人後悔せずに済むようにCtrl+Alt+Del(再起動コマンド)いっせいに押す

彼氏がいる人の彼氏には絶対に彼女がいるって言ったら怒る?

動物で例えるならば猫ですと言う 猫として採用される

なんとなく言って聞かれていた「死ね」をコロナ死ねってことにしておく

雪道を歩いた人がないと分かるほど積雪の速さが分かる

積み上げた記憶の締めに全員が同じポーズの集合写真

あらかじめ用意していた結論を盛り付けて会議が出来上がる

辻褄を合わせるようなわたくしのくの字になって飛ばされてゆく

どちらにも含まれてない者たちがベン図の縁をさまよっている

箱ティッシュの箱にまつわる十五にも渡る特許の元である蜂

センスの神様にセンスが欲しいと乞うためのセンスをセンスの伝道師に習う

地震後に起きる津波や火事までもしっかり保障する大鯰

あなた今、シンガーソングライターをシンガーソング/ライターと言いました

街灯の周りで多く降る雪が標識の止まれに降りかかる

希釈した存在感を流し込むタイムラインに迷い込む蝶

教室の床を選んで逃げ込んだ隠れミッキーいなくなりそう

独裁者みたいなサーモグラフィーにひれ伏すようにマスクの青さ

もうどんなアハ体験も消費税10%の時点でおかしい

誰だって切ったケーキの大きい方を選んでもいいクリスマスイブ

宇宙にも無人島にも持ってかないものを選んで成り立つ暮らし

毎日のトレーニングで腹筋を発射する準備が出来てきた

ネタバレを踏まないように暮らしても目を開いたら既視感がある

サイコロの2・3・4・5に囲まれた1の寂しさ6の寂しさ

いじめ相談電話のカード残っててあの時、捨てられなかったんだね

本を読む読み終えるたび積み上げてその都度ウェイトリフティングする

三ヶ所に分けて置かれた新刊のどこにも売りたさが置いてある

感動の結末までをひきたてるCMを選ばせてくれない

シンキングタイム5.4.3.2.1.0そこからは何も見えない

なんらかの縛りプレイをやっているように思えば動きうる足

缶詰のパイナップルに空く穴をドーナツの穴と同一視する

一般化されて僕でも面白い漫才が作れるようになる

起きてすぐ歯を磨くわけ ガラス瓶のドレッシングの油だらけだ

僕たちはハシビロコウの全力を知らないままで倒れてしまう

12個のみかんがあります。全部ひとりで食べるので問題にはなりません。

綱渡り 左に落ちるのと右に落ちるのとでは仕組みが違う

炭酸水すこし光っているような朝に 朝には朝の輝き

人生をどれほど上手く演じても獲得できぬ賞だってある

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