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無法歌会のすすめ

歌会っていいですよね。

どの層までにこの記事をアピールしたいかを決めきれてないので、こんな書き出しになりました。歌会っていいですよね。楽しいので。

色々な歌会に出させていただいて緊張も解けてきて自信も付いて経験も増えて、こんな歌会があったらいいなっていうアイデアをせっかくだし僕が開いてみようと半ば軽い感じで始めたのが無法歌会です。
今回はそんな無法歌会の紹介記事となります。
普通の歌会とはかなり趣向が異なっていると思うので、こういう進め方をするよってのを説明しつつ、こんな感じで楽しんでもらえるといいのかなという方法を過去の例をもとにしながらお伝えしたいと思います。

無法歌会とは

無法歌会は、discordというコミュニケーションアプリを利用したオンラインでの歌会です。
その目立った特徴はというと、
①短歌の詠題を参加者が用意すること
②参加者それぞれに別の詠題が当たること
③無茶題で歌会をすること
この3つが挙げられます。
歌会の流れを辿りながら説明したいと思います。

無法歌会の流れ

【参加者募集・詠題提出】
参加者の募集はtwiplaという、twitterを通した日程確認・出欠登録のサービスを使って行います。
開催時は僕のtwitterに登録フォームを流しています。

参加締め切りは歌会の1週間前のことが多いですが、このときまでに参加者は詠題をひとつ司会に提出します。
全員が提出したら、詠題が参加人数の数だけ集まることになります。
この人数分の詠題をランダムに振り分け直して、参加者それぞれが別の題で短歌を作るというのが歌会の趣旨となります。

また特徴でも挙げた通りですが、この詠題に関しては無茶題であることを推奨しています。
理由は無茶題を与えられた方が面白いと思うからです。異論は認めますがこれに関しては僕の趣味としか言いようがありません。
是非とも他の参加者が困り果てる姿を想像しながら詠題を送ってください。

【詠題決定・詠草提出】
全ての詠題が揃ったら抽選が行われ、参加者に自分の詠題が知らされます。
このとき、他の人に当たった詠題自分の詠題が誰に当たったか知らされません。
自分の詠題に集中して、詠題に沿った短歌を期日までに提出してもらいます。

【歌会】
詠草が揃ったらあとは普通の選ありの歌会を進めていきます。
ただし、選評をする段階でも詠題一覧は公表しません。
作者と詠題の提出者以外は、その歌がどのような詠題で詠まれたのかが分からない状態で評を進めていきます。

全ての歌の評を終えた後、作者・詠題・詠題の提出者を全体に発表します。

なお、無法歌会は非公開の歌会ですので、作者の許可なしに作品を公表することを禁止しています。しかし、詠題については基本的に他人が考えたものであってもSNS等で言及可としています。


過去の詠題例

実際にこれまでに提出された詠題の例を挙げさせていただきます。
なお、以下の例はこんな風な詠題を考えてほしいと規定するものではありません。
過去の雰囲気を感じてもらうのに使っていただければと思います。(それにしてはハードめなお題ばかり選択してしまったかもしれません…)

○ホールデン・コールフィールド
○趙匡胤(詠み込み必須)
○腕時計ブランド名詠み込み必須
○「アナ」ではじまり「エルサ」で終わる歌(表記は自由)
○助詞「の」以外使用禁止
○緯度31°経度31°の場所から一首
○音速が地球よりもずっと遅い世界で一首
○おほつごもらない


無法歌会の楽しみ方

そんなわけで、無法歌会は他の歌会に比べてカロリーを多く消費する内容になっていますが、その分おいしいところもたくさんある歌会なのではないかと自負しています。
そんな無法歌会の楽しみ方の例を10個ほどご紹介します。
無法歌会の詳しいイメージを持つのに役立ててもらうのはもちろん、自分ならこの感覚が合っているかもなと想像しながら見ていただければと思います。

詠題提出まで

①とっておきの無茶題を考える

詠題提出期間を長くとっているため、とっておきの無茶題をじっくり考えてみましょう。
自分の趣味を全開にした題、ただひたすらに意地悪な題、自分が考えたことはあったけど出来なかった題、歌が発表されたときに詠題が参加者にばれなさそうな題……といったように詠題を決める価値基準も様々あると思います。
上にいくつかの詠題例を挙げましたが、ぜひ自由な発想で考えてもらいたいです。

②自分の無茶題で短歌を作ってみる

詠題の抽選では、自分が出した詠題に自分が当たることがないように調整をします。(どんな題が来るのかを待つのも楽しみだと考えるからです)
なのでその題で歌を作る必要はないですが、もしも自分だったらどう作るかを考えてみるのもよいと思います。
自分にとってこの題は作りやすいか作りづらいか、この題に自分ならどのようなアプローチをするのか。
そういったことを考えておくと、他の人が詠んだ自分の詠題の歌に対する見方も深まるかもしれません。

詠草提出まで

③無茶題に向き合う

詠題が届いたらそのお題に向き合いましょう。
無茶題で詠むことは日常的な作歌とは違う感覚を楽しむことができると思います。
基本的にはあなたを困らせるために作られた詠題なので、全然イメージが湧かなくても落ち込むことはありません。
詠題が届いたらそのお題は歌を作る人のものなので、どういう歌を作ってほしくてこの題を出したかを考えるのではなく、ぜひ自分の解釈で歌を作ってもらえればと思います。
詠草が揃った段階で詠題の投稿者にはどれが「自分の提出した詠題で詠まれた歌」かは大抵わかってしまいますが、もしかするとすぐにはそれと分からないような歌になっていることもあるかもしれません。

④無茶題バレしないように作歌する

歌会が始まって作品を鑑賞するときに、この歌はどのような無茶題なのかを意識しながら読まれることが多いです。
なので、その題ができるだけみんなに分からないような歌を作るというのもひとつの方向性になるでしょう。
解題を終えた後の「この歌はそんな詠題だったんだ」という反応は結構気持ちいいものだったりしますよ。

⑤オリジナル無茶題を追加する

参加者によって提出した詠題の”無茶度”や当たった詠題との相性は違うと思います。
そのため場合によっては、「このお題は無茶ではないのでは?」ということが起こるかもしれません。
そういう場合はオリジナルの無茶題やルールを追加して歌を作るのもいいかと思います。
そのように作った詠草は、さらにほかの参加者からの無茶題バレがしづらくなることでしょう。

歌会中

⑥選の基準を考える

詠草が集まると選をすることになりますが、選の基準が人によって変わりやすいということも無法歌会の性質だと思っています。
まず、参加者は普段よりも難しい題で歌を作っているため、普段よりも考えて提出された力作が提出されることが多いように感じます。
なのでシンプルに歌の出来で選を決めるというのも一つの考え方です。
また、無茶題の中身を感じさせないような上手くこなした歌を選ぶのもいいでしょう。
さらに無茶題に突っ込んで考えて、「この歌はこういうような題を出されて作った歌だろうからそれでこの歌に仕上がったのはすごい」というところまであらかじめ自分で判断するのもいいかもしれません。
自分の基準をぜひ選んだ歌の評の時間で話してもらえたらと思います。

⑦無茶題の中身を推理する

やはり各歌の無茶題はなんだったのかは気になるものです。
これかなというのがわかりやすい歌もありますが、案外わかりづらい歌もあるのです。
そのような歌でも、工夫されていると感じる点や引っ掛かりを感じる点などから、無茶題の内容を推測してみましょう。

⑧自由詠の歌会として参加してみる

歌会に参加する時点では詠題を考えるのと難しい詠題で作歌するという非常に頭を使う作業を通過してきている訳ですが、歌会当日に使用する草稿は一般的な自由詠の歌会の草稿とほとんど変わらないものになっていることに気付きます。
なので、それぞれの詠題のことは考えずに自由詠の歌会として参加してみるのもよいかもしれません。
特に2回目以降の参加の場合は、当日は普通の歌会として参加するという変わった方法を取ってみるのも面白いと思います。

解題後

⑨詠題を踏まえて歌を見直してみる

解題の際に作者だけでなく詠題の発表も同時に行いますが、詠題の発表時間は無法歌会で最も盛り上がる瞬間のひとつです。
事前に詠題を予想していたなら、その予想があっていたか外れていたかをひとつひとつ噛みしめるのもいいでしょう。
詠題自体が変なものだったなら、よくその詠題でその歌にまとめたと作者に賛辞が飛び交うこともあります。
また、選評を行っていた時には難解だった歌でも、詠題を見直してみると納得感があってよい歌だと感じることも多々あり面白いです。

⑩自分や他人の詠題についての感想を話す

解題の後は、詠題に関する感想を話し合う場面も多くみられます。
詠題の提出者はどのくらいの無茶度のつもりで出したのか、自分の中で詠題一覧のうち一番難しいと感じる題はどれなのか。
それらの認識は参加者の間でばらけることも多く、その違いを話し合うのも面白いです。
その時の他の参加者の反応を見て、次回に参加するときにはもう少しこうしようというイメージも浮かんでくるかもしれません。


おわりに

無法歌会は僕がアイデアを考えて実際に形にし、何度か実施したものです。
しかしもともとは『歌人のふんどし』という、誰かが考えた連作のタイトルをランダムに受け取って6首連作を作るというインターネットの企画があり、それをパクったものであることはお伝えしておきたいと思います。
ちなみに主催者の田中ましろさんがツイッターに乗せていたタイトルの抽選方法もパクって使わせてもらった気がします。

もしこの記事を読んで無法歌会に興味を持っていただいた方は、僕のtwitterまで連絡をいただければと思います。
専用のdiscordチャンネルをお知らせします。
無法歌会のdiscordチャンネルに参加すると、次回の開催予定をいち早く知ることができるほか、日時をいつにするかのアンケートに答えると参加できる可能性が高まると思います。
※2023年11月現在、第5回無法歌会の参加申込みを実施しています。

これまでの参加者の方に協力いただき、おかげさまで続けることができており、主催者冥利に尽きるというか本当にありがたく思っています。
これからも続けて開催していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

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