コスモス畑で出会った天使たち。
休日に車でコスモス畑へ出かけた。
もちろん、写真を撮るのが目的だ。ネットで調べたら、ちょうど今が見頃とのこと。その日は朝から少し曇り空。雨にならなきゃいいけどと思っていたら雲間から小さな光が差し込んできた。よかった。どうやら写真日和になりそうだ。
コスモス畑に到着すると、すでにたくさんの人たちであふれていた。
「お!いるいる、一眼レフを持ってる人たちが!」
大きなカメラにズームレンズを抱えた人たちがたくさんいる!今日は恥ずかしい思いをしなくても、思いっ切りカメラを楽しめそうだ。
コスモスはとても美しくほぼ満開だった。でも、まだまだ素人の私にしてみれば、どう撮っていいのかわからない。どれもこれも撮りたくなって、主役がなかなか決まらなくなる。一見、撮りやすそうな美しい花畑こそ、私は難しいと思う。
何枚か撮り終えて、ふぅと近くのベンチで休んでいたら、足取りもおぼつかないような70代くらいのおじいちゃんが、隣によろよろと座って来た。手にはなんと、大きな一眼レフカメラを抱えていた。
”えっ!すっげー!”って驚いていたら、座ったままおもむろに、コスモス畑にレンズを向け、いきなりシャッターを切りだした。しかも4枚連写だ。
「カチャカチャカチャカチャ!」とシャッターの乾いた音が、晴れた青空へと吸い込まれてゆく。わぉ!「カッコイイ」とはこういうことを言うのだろう。私もこんなふうに年を取りたいものだと思った。
さてと、また、コスモス畑へと向かう。
たくさんの家族連れや若い人たち、それにポートレートを撮っている人たちもいた。あぁ、こんなときに、気軽に声を掛けられたならぁと思う。同じカメラ好き同士、今ならいくらでも会話が楽しめそうだ。
「どんな写真を撮っていらっしゃるのですか?」「インスタとか、ブログとかに投稿されているんですか?」とかいくらでも言えそう。それにもしかしたら「noteに投稿してるんです」って人が見つかるかもしれない。わぉ!それはなんて素敵なことだろう!
そんなことを思いつつ、また、コスモスの写真を撮っていたら、いきなり後ろから声を掛けられた。
「あのう、もしかしてカメラマンさんですか?ひょっとして、こうしてきれいな風景を撮りに全国をまわっていらっしゃるんですか?」
40代くらいのカメラを抱えた女性の人だった。
誰なんだ?この人は?
天使か?それともマリア様か?それともミスユニバースなのか?それとも・・・いや、もうそれくらいにしておこう。単純な私はただそれだけで、うれしくて舞い上がってしまったのだった。
「い、いぇ、えっとぉぉ・・・ただ、趣味で写真を撮ってるだけです」と、苦笑いで答えるのが精いっぱいだった。
「そうなんですか?なんだか撮影が本格的で私はてっきりカメラマンさんと思ったのですが・・・もしかして、ブログとかに写真を載せてるのですか?」とニコリと微笑んだ。
ぎゃ!さっき、私が思ってたことだっ!
「い、いえ、ただ、撮って楽しんでるだけです!それに全然本格的じゃないですよ!」なんてつい、ごまかしてしまった。あぁ、これだからなぁ私って。もちろん、お世辞も含まれた、ちょっとした大人の会話なのだろうけど、私は褒められるとうまく返せずに、全否定してしまうタイプなのだ。
それで私は「それじゃ」とそそくさと逃げてしまったのだった。その人もカメラを持っていた。あの口ぶりだと、ネットに写真を載せているのかもしれない。それにもしかしたら、同じnoteユーザーの可能性だってあったのになぁ。
ま、しょーがないか。こんな性格はなかなか直りはしない。そうして自分の性格を恨めしつつ、また、写真を撮っていたら、また、声を掛けられた。
「何の写真を撮っているんですかぁ?」
今度は30代くらいの女性だ。しかも美人さんだ。そのとき私はコスモスじゃなくて、その下に落ちていた花びらの写真を撮っていた。たぶん、不思議に思ったのだろう。
「この落ち葉を撮っていたんです。咲いているコスモスの花を前ボケさせて、あざやかなピンクの落ち葉にピントを合わせて撮るととてもきれいなんです」と説明をした。
その人もカメラが好きだったみたいで、「そうなんですか!」と明るい笑顔でとても感心していた。
「あ、でもこれ、自己流なんで、一般的にいいのかわかんないです!」とい言うとコロコロと笑っていた。
そしてまた、「それじゃ!」とそそくさと逃げてしまった。やっぱり知らない人との会話は苦手なんだよな。少し残念。
そうして撮っているうちに、カメラのバッテリーが切れてしまった。あぁ、まだ撮りたいのに!ミラーレスカメラの唯一の弱点だなぁ。でも、これのおかげであきらめがつく。
そうして帰りの車の中、運転しながら「今日はいろんな人に声を掛けられたなぁ」と思った。しかも、素敵な女性ばかり・・・
あれ?もしかして・・・
私って、モテ期、今ごろ到来???
(とんだ勘違いヤロウだ!)
最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一