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初めて買ったCDはFrank Zappaだった


本格的なCDの普及には少し早い1986年、とある渋谷のマンションの一室に店舗を構えた某ショップで入手したこの1枚こそ、自分が初めて買ったCDだ。

Apostrophe (') / Over-Nite Sensation 

Apostrophe (') / Over-Nite Sensation  Front
Apostrophe (') / Over-Nite Sensation  Rear
Apostrophe (') / Over-Nite Sensation  Disc

今回は作品の内容に触れない。ただ簡単に言うなら、2枚ともとっつき易い作品なので、初めてザッパを聴いてみたい方にはお勧めだ。
なお、当時はLPより長いCDの収録時間を利用して、こうした2 in 1形態のリリースが多かった。現行のCDは、ふたたび本来の2枚に分けて出されている。


後で買ったCDプレーヤー

実は当時まだCDプレーヤーを持っていなかった。それでも取り敢えず買ったのは、まだ目新しかったCDに興味があったのと、アナログ盤がことごとく廃盤だったから。ザッパを聴いてみようにも中古盤か、怪しげなレプリカに手を出すしかなかったのだ。

だが、さすがにこれは順序が逆だった。1ヶ月もしない内に「持っているだけ」に耐えられず、初のCDプレイヤーを購入した。今思い返すと、何事にも慎重になりがちな自分にしては、冒険したものだと思う。


再生に耐えるのか?36年前のディスク

このディスクは1986年の製造。36年前の骨董品ながら、今もちゃんと再生に耐える。ディスクの寿命は短い場合で10年、20年も経てば再生に支障が出ておかしく無いと言われていたが、そこはメイド・イン・ジャパンゆえの品質かも知れない。

なおCD普及初期の頃、海外ではCDの生産拠点がまだ少なかった。そのため、日本の工場にプレスを委託されるケースが少なくなかった。


早かった音楽メディアの交代

CDがLPを駆逐するのに、それから年数は掛からなかったと記憶している。

この時のスピード感と、日本でのサブスクリプション・サービス展開の遅さは全く対照的に思える。その間に日本の何が変わったのだろう?今回は言及しないが、いずれそのテーマでも書いてみたい。

この当時はアナログ・レコードが市場から姿を消す前に、めぼしいレコードを見つけては買っていた。その頃に入手したディスクには、The Nightfly / Donald Fagenなど、まだ一度も針を落とさず保存しているものもある。

現在アナログの再生環境は持っていないが、これらを聴くために必要な投資は今でもしたいと思っている。


CDとは何だったのか?

当時はLPレコードに取って代わるものと捉えていたが、これは勘違いだった。CDとは単なるデジタル・データの容器にすぎない。

MP3、WAV、AAC、WMA等々、中身のデジタル・データ形式に違いはあっても、CDは本質的にメモリー・カードと同じものだ。容れ物である以上、ネット・ワーク・インフラが発展し、配信サービスが普及するまでの繋ぎで必要とされた過度期のメディアだった、とは言い過ぎだろうか。

なお、圧縮データが音質を犠牲にしている側面から、現行サービスの多くはラジオか、カセット・テープの代替と捉えた方が、筆者にはしっくり来る。アート・ワークや、クレジット情報の大半が無視されている点も、問題と考えている。


アナログ・レコードの復権と、その理由

アナログ・レコードの売り上げが再度上昇している。
そう言われ始めて10年は経っているだろうか?昨今の世界情勢もあってアナログの生産が追いつかないとも報じられているが、その傾向自体が変わった話は聞かない。

では配信サービス主流の現代にあって、相対的に浮上したアナログ・レコードの魅力とは何だろう?よく言及されるのは、音質や、大きなジャケット・アートの魅力だ。だが、ここで筆者が指摘したいのは、マス・プロダクトでありながら、厳密には同じものがないアナログならではの二面性だ。

アナログ・レコードの製造工程で、音に影響を与える要素をざっと列挙してみる。

・マスター・テープの来歴
・マスタリング・エンジニアは誰か?
・マスタリング工程で使用された機材は何か?
(録音当時と同じヴィンテージ機材が良いとされる)
・カッティング・エンジニアは誰か?
・プレス工場はどこか?
・ディスク素材の品質
・同じスタンパーで何回目のプレスか?

細かく見て行けばもっとあると思う。アナログ・レコード復権の理由の一端には「同じものがない」アイテムを所有することの魅力もあるのではないか。

音楽の聴取手段が、配信サービスと、アナログ・レコードの2つに両極化して行く傾向は、自然な事のように思える。


CDの役割は終わったのか?

CDの製造工程にも、実は前述したアナログ・レコードと同じ要素がある。だが、数値化可能なデジタル・データの容れ物という本質は、そこはもう決定的に違う。

敢えて製造、流通のコストを掛けてCDを作るのであれば、買う側にとってサブスクリプションに無いメリットが必要になって来る。そこでパッケージングを含めたガジェット的な魅力を打ち出す方向性は、正しい。

Fin

#はじめて買ったCD #フランク・ザッパ #アナログ・レコード

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