見出し画像

【平成29年】国際私法司法試験 第二問 模擬答案

第一 設問1

1 小問1

(1) まず、国際民事手続については「手続は法廷地法による」の原則の下、日本法が適用されることとなる。そのうえで、本件では条約が直接適用されるのか、それとも国内法の一部として条約が適用されるのかが問題となる。

(2) この点、一般に条約は国内法に優先する特別法的関係にあり、当該条約が適用される法について何らかの手当をしている場合、つまり当該条約が国内法の適用を待たずに直接適用される性質を有している場合にはこれに拘束され、直ちに適用されると解するべきである。具体的には、適用範囲の明文規定がある場合や、明文規定がなくとも、条約の趣旨・目的・内容等から同様の性質を有する場合がこれに当たる。

(3) 本件条約でこれを見るに、1条が条約の適用範囲を明示し、49条が特別の合意を排除していること等から、本件条約は趣旨・目的・内容等から、締約国の国内法の適用を待たない性質を有していると解される。よって、本件条約の適用範囲であれば、同条約が直接適用される。

(4) 本件訴えは本件荷物の毀損を原因とする損害賠償請求であるが、これは本件航空契約による輸送中に発生したものである。この契約によれば、当該輸送は本件条約締約国である日本から甲国になされるものであるから「国際運送」(本件条約1条2項)にあたる。そして、本件運送契約はAの購入した荷物を有償で運送するものだから、同条1項により同条約の適用を受ける。

同条約33条には損害賠償の訴えの管轄が規定されている。本件訴えはYによる航空輸送中に本件貨物が毀損にしたことを理由としており、同18条1項により、同33条の「損害賠償についての訴え」といえることから、同条の適用があることとなる。

具体的には、同条約の締約国のうち、33条既定のものから原告が選択する裁判所に国際裁判管轄権が認められる。

(5) もっとも、本件運送契約においては乙国裁判所を専属裁判所とする合意があった。これは同49条により無効とされるのか。

この点、これは「損害の発生前に行った特別な合意」にあたり、裁判管轄を33条の定めとは異なる乙国裁判所にのみ認めると「変更」しているが、この合意はもっぱら国際運送に無関係な地ではなく、XYのお互いが従たる営業所をもち中立な地でとして、乙国に紛争解決をもとめているのである。つまり、当事者の衡平を初期したと思われる33条の規則に反する意図を有していたとはいえず、49条の適用はないものといえる。

したがって、本件では乙国裁判所を専属管轄とする合意が有効であり、Yの主張は認められる。

2 小問2

(1) 本件では、本件条約18条に基づく損害賠償の訴えの前に、同倍賞債務の不存在確認の訴え(以下「本件前訴」)を別国の裁判所である甲国裁判所に提起していたというものである。

本件条約33条によれば、締約国であって、運送人Yの住所地であり主たる営業所のある甲国、および本件運送契約の締結場所であって本件貨物の到着地である日本国が国際裁判管轄権を有しうるところ、本件訴えでは原告Xが日本国を、本件前訴では原告Yが甲国をそれぞれ選択しているため、同条により国際裁判管轄権はそれぞれ認められていることとなる。

しかし、訴えの当事者はXYであり、対象となる債務はいずれも本件貨物毀損による同条約18条1項に基づく損賠賠償請求権である。このような、いわゆる国際訴訟競合が生じた場合、後訴にあたる裁判所はどのように処理するべきか。

(2) まず、本件条約が直接適用されるところ、同条約にはこのような競合が起きた場合の規定はなく、解釈による解決も図ることができない。このように、直接適用された条約に適用規定が存在しない場合、一般法的な関係から原則通り、法廷地法である日本法が適用されると解する。

では、これにつき民事訴訟法(以下「民訴」)142条の規定する重複起訴の禁止に反するとして不適法却下の処理をすべきか。

この点、同法の「裁判所」は同118条があえて「外国」と明記していることから、国内裁判所の身を言うと解すべきであり、外国裁判所は同条の言う「裁判所」にあたらないといえること、また、却下することで実質的に当事者に海外における応訴を強制することは酷であることから、国際訴訟競合は同142条による重複起訴禁止原則には反しないというべきである。

もっとも、前訴の進行程度等は「特別の事情」(民訴3条の9)の一事情として考慮されると考えられるため、同条により国際裁判管轄権が否定されることは考えられる。そして、最終的に国際裁判管轄権が認められても、執行の場面において、二重執行の回避等が図られねばならない。

(3) 本件において検討するに、(1)でみたように、本件訴えは本件条約33条により日本裁判所に国際裁判管轄権が認められる。そして、被告Yは甲国に所在するといえるが、従たる営業所が日本にあるため、応訴が苦とまでは言えないし、本件貨物の毀損は甲国でも日本国でもない航空中に生じたものであるから証拠が偏在しているとはいえない。また、前訴は1か月前に継続しており、まだ訴訟進行の程度が大きいとは言えない。よって、以上のことを考慮しても、民訴3条の9に該当するような「特別の事情」は認められないため、国際裁判管轄権が否定されることもない。したがって、本件日本裁判所は通常通り本件訴えの審理を進めてもよい。

第二 設問2

1 本件は、XZ間の本件保険契約に基づいて、Xに保険金を支払ったZが法律上の代位として、Yに対し本件条約18条1項に基づく損害賠償請求をしてものである。このような、いわゆる保険代位についてはどのように準拠法を決するべきか。

2 まず本件条約において保険代位の問題が規定されているかを検討するに、同条約は運送人、旅客等を当事者とする責任については規定されるが、保険代位のような法律上の権利移転については何ら規定されていない。そこで、国内の法の適用に関する通則法(以下「通則法」)によって、準拠法を決せられないか検討する。

3 単位法律関係は国際私法上の概念であって、その範囲の画定は国際私法独自になされるべきであるから、性質決定は国際私法独自の立場から解釈して行う。そうすると、本件のような法律上の代位はどのように性質決定すべきか。

4 確かに、保険代位のような法律上の代位は、債務の弁済としての機能を持つから、法律行為の効力の問題として通則法7条以下の移転原因の準拠法によるという考え方もある。

しかし、法律上の代位はその内容が債権譲渡と同様であり、原因が法律行為か法律上当然かの差にすぎないこと、そしてその差によって準拠法を異にする国際私法上の十分な根拠もないことから、債権譲渡類似の問題として性質決定し、通則法23条を類推適用して、当該債務準拠法によるべきである。このように考えれば、債務者が関知しない法が準拠法になるという不測の事態も避けられ債務者保護にもなるため、妥当である。

5 本件で検討するに、本件保険契約において、XからZに移転した債権は本件条約18条1項に基づく損害賠償請求権である。この債権については、上記第1の(3)の通り本件条約が直接適用されるため、当該債務の準拠法は本件条約となる。

以上

感想

条約苦手…
「直接適用=抵触法をすっ飛ばして実質法まで行っちゃう」
みたいな認識で固めた答案。
こまけぇこたぁ(略

管轄認定のまぁ雑なことよ。
だってしょうがないじゃない名文規定なんだもの(落ちるやつ特有の言い訳)。

法律上の代位の準拠法
これは、多数説が確か原因事実準拠法説なのよねぇ。でも自分の教授を信じているので債権代位の類推適用説です。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?