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【平成30年】国際私法司法試験 第一問 模擬答案

第一 設問1について

1 遺産分割問題について

(1) 本問では、まず「DC間の親子関係の成立の検討が必要となるか」をみる。

(2) 性質決定については国際私法独自の立場からなされるべきであるところ(国際私法独自説)、Dを被相続人とする相続の成立については、「相続」の問題として性質決定され、法の適用に関する通則法(以下「通則法」)36条が適用される。

  ア 通則法36条は、相続における被相続人の人格の承継という点に配慮し、また相続財産が複数国に所在する場合における相続の一体性という観点から、もっぱら被相続人の本国法を連結点としたものである。

  イ 本件では、被相続人Dが甲国籍を有するため、準拠法は甲国民法ということになる。甲国民法⑥によれば、嫡出子及び配偶者は相続人となる。したがって、Cが相続人となるかどうかは、CがDの嫡出子であるかどうかによって決することとなる。

2 親子関係成立問題について

(1) 以上より、DC間の親子関係の成立は、Dを被相続人とする遺産分割においてCが相続人となるかという問題に対する先決問題となる。では、先決問題の準拠法はどのように決定されるべきか。

(2) この点、先決問題といえどもそれは別個の単位法律関係を形成するため、本問題の準拠法等ではなく、先決問題として別個の性質決定をしたうえで、通則法による準拠法決定を行うべきである。

(3) 本件は、CがDの嫡出子になるかが問題となっているところ、通則法等の日本国国際私法上には、前婚の嫡出子が後婚の嫡出子となるような単位法律関係はない。しかし、事後的に嫡出子となる点に着目すれば、非嫡出子が事後的に嫡出子となる「準正」と類似している。そこで、国際私法独自の立場より、本件問題を「準正」類似の問題として性質決定し、通則法30条を類推適用して準拠法を決定すべきである。

(4) 通則法30条1項によれば、その連結点は準正要件事実が完成した当時における父若しくは母又は子の本国法となるところ、本件の事実完成当時はADの婚姻当時というべきであるから、準拠法は日本法または甲国法となる。

    そのうち甲国民法⑤によれば、親が再婚した場合、前婚の子は後婚の嫡出子の立場を取得するところ、AB間の子Cは、AD間の再婚に伴い、ADの嫡出子としての法的地位を取得することとなる。

    したがって、DC間には嫡出子としての親子関係が成立する。

第二 設問2について

1 前述第一2(3)のとおり、先決問題であるDC間の親子関係の成立は「準正」類似の問題として、通則法30条が類推適用される。しかし、本件では日本法においてはCが嫡出子になる規定はない(民法参照)一方で、甲国法においても平成22年12月31日に甲国民法⑤が廃止され、それまで同法条により生じた親族関係は同日を以て消滅する、との法改正がなされた。

  このように、事後で準拠法が改正・廃止された場合に、具体的な準拠法はどのように決定されるか。

2 この点、どの時点の法が適用されるのかという時際法の問題は、地理的な法的抵触を解決する国際私法の問題ではなく、実質法上の問題として考えるべきであり、国際私法によって直接指定されるものではないと解する。つまり、国際私法が指定するのは「どの法域の法か」であり、「いつの法か」については当該準拠法の経過規定等によって決すると考えるべきである。

3 本件では、前述のとおり日本法では嫡出子と認めれらないため、甲国法を準拠法として検討するに、設問中記載のとおり、甲国民法⑤は廃止され、同法条によって成立した嫡出親子関係は消滅するとの規定が成立した。つまり、これを適用することとなり、結果としてDC間の嫡出親子関係は消滅する。

4 そして、本問題であるDを被相続人とする相続の成立については、第一1で検討したように通則法36条によって決定された甲国民法上、嫡出子及び配偶者が相続人となる。したがって、本件CはDの嫡出子ではないから、相続人ではない。

第三 設問3について

1 まず、本件不動産の帰属については、Dが死亡しているから「相続の効果」として性質決定し、通則法36を適用する。

そうすると、本件Dの本国法である甲国法が準拠法となる。

2 甲国民法⑤によれば、配偶者は第1順位の相続人であり、また設問よりCも相続人となる。しかし、甲国民法⑦によれば、遺産分割前の相続財産は共同相続人の合有としており、その序文については他の共同相続人全員の同意が必要とされているところ、本件Cは他の共同相続人の同意を得ずにEに自らの持分を売却した。このCE間の売買の効力については、どのようにして準拠法を決定するべきか。

3 この点、相続財産の状態についてや、処分権限については、「相続の効果」として性質決定し、通則法36条を適用した上で、その財産の処分自体の効力は「物権」の「移転」として通則法13条2項の適用を受ける、という説もある(判例同旨)。

しかし、相続に関する準拠法により不動産を共同相続した相続人が、分割前に他の共同相続人の承諾なく、当該不動産に対する自己の持分のみを有効に処分できるか否かは、共同相続人相互間の関係に関する問題であるとともに、不動産に関する物権の得喪を目的とする法律行為の効力問題の一環として判断されうる事柄である。そこでは、相続関係者の立場にとどまらず、取引の安全すなわち第三者の利益の保護が考慮されなければならず、相続問題にあたるとして、相続関係者の内部的法律関係を規律することを主眼とした通則法36条を適用することは、右要請に適切に応えうるものではないため、全体を「物権」の「移転」とし性質決定し、通則法13条2項のみを適用すべきであると解する。

4 通則法13条1項はその連結点を目的物の所在地法としている。その趣旨は、物権が目的物に対する排他的支配権であり、その目的物所在地の秩序や公益と直接関係することや、第三者との関係でも明確性を確保できることにある。そして、2項が連結点をそのうち「その原因となる事実が完成した当時」のものに特定している趣旨は、一旦所在地法によって完成した物権の得喪が後の目的物の所在地の変更によって影響を受けないようにすることにある(不変更主義)。

本件では、物権の取得の原因となる事実は被相続人Dの死亡であるところ、死亡時の本件不動産の所在地法は日本である。つまり、相続財産となった本件不動産は、共同相続人であるCらに共有され(民法898条)、その持分の処分は物権的原則として自由に行える。よって、共同相続人Cは他の共同相続人の合意なく、単独で本件不動産の持分(相続分)を処分できる。

したがって、本件CE間の本件不動産持分売買は有効であるため、Cの当該請求は認められない。

以上

感想

先決問題の書き出し方がよくわかんねー!とか言いつつ書いた答案。
最終的に「性質決定するのにあたって、まだ必要な単位法律関係がある」って感じで整理した。

時際法は実質法の内容だよな!そうだよな!?
経過規定がない本件では結局改正後のものが適用されるもんなぁ、不変更主義ならこうはならんのだが。

今回は判例を批判するという大胆な論証にしたのが設問3。
構造としては、相続36条で検討するのは「誰が相続人になるのか」という点までで、そのあとの「遺産が各人にどのように帰属するか」以降はぜーんぶ物権法による、というもの。

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