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#11【パイレーツ・オブ・カリビアン / デッドマンズ・チェスト】ep.1「かっこいいだけが、かっこいいではなさそうです」

※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#11にあたる内容を再編集したものです。

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【パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェストについて】

2006年公開
監督:ゴア・ヴァービンスキー
音楽:ハンス・ジマー

作曲家作品

レインマン
ライオン・キング
グラディエーター
ミッション:インポッシブル 2
ハンニバル
パール・ハーバー
ザ・リング
ラスト サムライ
バットマン ビギンズ(ジェームズ・ニュートン・ハワード)
ダ・ヴィンチ・コード
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
ザ・シンプソンズ MOVIE
ダークナイト(ジェームズ・ニュートン・ハワード)
コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2(ゲーム作品)
シャーロック・ホームズ
インセプション
パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉
ダークナイト ライジング
マン・オブ・スティール
アメイジング・スパイダーマン 2(The Magnificent Six と共同)
インターステラー
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(ジャンキーXL と共同)
ダンケルク
ブレードランナー 2049(ベンジャミン・ウォルフィッシュと共同)
X-MEN:ダーク・フェニックス
ライオン・キング(2019 年)
ワンダーウーマン 1984
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
DUNE/デューン 砂の惑星
トップガン マーヴェリック
他多数

登場人物

ジャック・スパロウ:
 伝説の海賊、ブラックパール号の船長。以前にデイヴィ・ジョーンズと契約を結んだ。

ウィル・ターナー:
 海賊ビル・ターナーの息子。前作でジャックを助けた。

エリザベス・スワン:
 ポート・ロイヤル総督の娘。ウィルの恋人。

ビル・ターナー:
 靴ひものビル。ウィルの父親。契約によってデイヴィ・ジョーンズの元で働く。

ジェームズ・ノリントン:
 元海軍提督。前作ではジャックらと対立したが、今作では落ちぶれている。

ジョシャミー・ギブス:
 ブラックパール号の船員。ジャックの右腕。

ティア・ダルマ:
 謎の多いブードゥーの女占い師。ジャック達に手を貸す。

デイヴィ・ジョーンズ:
 海賊、フライング・ダッチマン号の船長。タコのようなおぞましい姿で、超常的な力を持つ。

カトラー・ベケット:
 ベケット卿。東インド貿易会社の重役。デイヴィ・ジョーンズの心臓を狙う。

あらすじ

 前作「呪われた海賊たち」から 3 年後、結婚式を目前に控えたウィルさんとエリザベスさんでしたが、海賊ジャック・スパロウさん逃亡の手助けをした罪で逮捕されてしまいます。そして2 人を捕らえたベケット卿はウィルさんに対し、釈放の条件としてジャックさんのコンパスを奪い取ってくることを要求します。
 一方ジャックさんの元には、海賊デイヴィ・ジョーンズさんの使いであるビル・ターナーさんが訪れていました。かつてジャックさんはブラックパール号の船長になる見返りとして、100 年間デイヴィ・ジョーンズさんの元で働く契約を交わしていたのです。
 不死身のデイヴィ・ジョーンズさんから逃れるには、彼の心臓が入った箱を手に入れるしかありません。そしてベケット卿の真の狙いも、ジャックさんのコンパスを使ってその箱を手に入れることにありました。
「デッドマンズ・チェスト」とその鍵を巡って、海賊たちの戦いが始まります。

【パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ】

He’s a Pirate 彼こそが海賊

 アクション・アドベンチャーのメインテーマと呼んでも遜色のないこの楽曲は、この映画ではオリジナルとして演奏される機会はエンドロールのみです。映画以外でも耳にする機会も非常に多いです。
 パイレーツオブカリビアン1作目で登場したこの楽曲はクラウス・バデルトさん作ということになっていますが、どうやらハンスジマーさん作であるということがDVD特典映像で語られているとか、いないとか……
(演奏)
 メロディは5度から1度、4度などが非常に強調された作りになっていて、まさにアクション・アドベンチャーのメインテーマというにふさわしい作りになっています。
 そしてやはり特筆すべきはリズムです。パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマは12/8で書かれており、他のパイレーツオブカリビアンで使用される楽曲は3/4が多く使われています。
 カリブの海賊で使用されるヨーホーもそうかと思いましたが、思い出したらそんなことはありませんでした。
 この12/8というリズムは海賊らしさを与えるテンプレートを作ったと言っても過言ではないと考えます。この楽曲はスパイ映画でいうところの007のジェームズボンドのテーマやマカロニウエスタンの荒野のガンマンのような音楽の新しいテンプレートを作ったといっても差し支えないと思います。
(演奏)

パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ1

0:01:14
 映画冒頭、エリザベスさんが雨に打たれるシーンで演奏されます。ここではテーマの一部が抜粋され、エリザベスさんが処刑を宣告されたウィルさんと出会うと再び演奏されます。こちらでもテーマの一部のみの演奏です。
 バラード調に編曲されていて、テンポも楽器編成も異なります。
そしてエリザベスさんのシーンと海兵のシーンとが入れ替わりで演奏され、現状の深刻さを非常にうまく伝えています。

パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ2

0:43:25
 原住民から逃げ、船で脱出するシーンです。もともと楽曲に緊張感があるため、ギリギリの緊迫したシーンとの相性は抜群です。
 オリジナルに近い編曲ですが、船に乗ったジャック・スパロウさんが勝ち誇ったように原住民にセリフを言うところでは、また編曲が施されます。
 メロディを弦楽器と金管楽器から弦楽器のみに変更してセリフを聞きやすくし、ジャックさんが船に乗れたという安心感がかかっています。

パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ3

0:46:25
 ここでは少し趣向が変わり「一方その頃...」的な使われ方です。
 ジャックさん、ウィルさんのシーンからエリザベスさんのシーンに移り変わるシーンで使われます。ですのでここもかなり断片的な使われ方をしています。
 ここではスネアロールが追加され、絵面的に船出であることとの親和性が高くなっています。
 ちなみに 1:30:35 にも短いフレーズで使われます。ここはウィルターナーさんがDJから鍵を盗み出し船から逃げ出すシーンから、ブラックパール号へのシーンへ「一方その頃...」的な使われ方が一緒です。

パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ4

1:19:08
 ここではエリザベスさんはジャックさんと再会します。エリザベスさんにコンパスを渡して、今後の指針を見るシーンです。
 非常にバラードな編曲がされています。映画冒頭のシーン1のような変奏曲でエリザベスさんとウィルさんに関係の深いシーンでは使われることがわかります。
 その後、コンパスの針がウィルの居場所を指した時に、ジャック・スパロウさんの向かうべき方向を指した時に、ジャック・スパロウのテーマが演奏されます。

パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ5

1:50:00
 ここはジャック・スパロウさん、ウィルターナーさん、ジェームズ・ノリントンさんとが鍵を巡り決闘するシーンです。
 アクションシーンに合わせた変奏曲で、教会のような廃墟での立ち回りが非常にマッチしています。
 ここでは様々な思いが交錯します。その交錯が音楽にも如実に現れています。

パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ6

1:54:02
 転がる水車の上で三つ巴の決戦が行われるシーンで、かなりオリジナルに近い編曲がされています。
 このシーンもシーン5同様、鍵と箱を巡り様々な勢力が争います。その為非常に移り変わりの激しい構成になっています。
 ジャックさん達の三つ巴の抗争、箱を持って逃げるエリザベスさん、追っかけてくるブラックパールの元乗組員やデイヴィ・ジョーンズさんの船員などが、音楽に合わせて演奏されるこのシーンは圧巻です。

パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ7

2:09:20
 ここではクラーケンの襲撃を受けるブラックパール号で使われます。一回は逃げたジャックさんが再び戻り、火薬ダルに対して銃を放つシーンです。
オリジナルとはかなり離れた編曲がされています。緊張感のあるこのシーンにはうってつけの編曲です。

パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ まとめ

 このテーマは誰か特定のキャラクターや状況に応じてではなく、変奏曲で様々な状況で使えるようにしている点が素晴らしいです。
 ジャック・スパロウさん、ウィルターナーさん、エリザベス・スワンさんの3名に非常に親和性が高く、この3名の交わる先に変奏曲をもって演奏されていることが多いのが特徴でした。

【ジャック・スパロウのテーマ】

 主人公であるジャック・スパロウさんのライトモチーフです。
 勇敢で堂々としたメロディではなく、どこかひょうきんで怪しげな雰囲気を持つこの楽曲。ジャック・スパロウさんというキャラクターが二面性を持っていることを示唆しています。
(演奏)
 非常にかっこいいです。やはりどこか怪しげで、ひょうひょうとした印象が海賊っぽいです。特にジャック・スパロウさんがどこか怪しげで、ひょうひょうとした印象のキャラクターである点が大きいでしょう。
 楽曲は大きく2つに分かれています。ここでは第1主題と第2主題と呼ぶことにします。
 基本はソロVlnでメロディが演奏されます。
 ストリングスセクションでゆったりと始まるこの曲は、ブラスセクションが入り、展開を迎えてからテンポが上がります。
 ソロVlnで終始メロディを演奏していることがジャック・スパロウさんというキャラクターのどこか孤高の一匹狼感が強調されているかのようにも聴こえてきます。

ジャック・スパロウのテーマ1

0:06:57
 乗組員の待つブラックパール号に戻ってきた際に演奏されます。
 ここではどこかひょうきんで怪しげな雰囲気を持っています。キャラクターの持つ雰囲気を重要視したライトモチーフが使われていることが、この映画音楽の聴きどころでもあります。
 そしてその後、
0:09:08
に演奏が再開されます。
 ブラックパール号の乗組員にコンパスで行き先を伝える時に演奏されます。しかし指針は決まらずですが、適当に決めます。そのことに乗組員は気付いており、演奏はリタルダンドします。リタルダンドは演奏をどんどんゆっくりにすることです。
 この効果は場面を展開する予想を感じさせることと、乗組員の不安感を感じさせます。

ジャック・スパロウのテーマ2

0:12:40
 酔ったジャックさんは船内の貯蔵庫にラム酒を取りに行くシーンです。オリジナルの一部の演奏になります。
 ここでは面白い点が2つあります。
 揺れる船内思わせるライトモチーフに、映像がマッチしている点。
 もう一つは階段を降りる際にミッキーマウジングが使用されている点です。さすがディズニー映画で、この映画では度々ミッキーマウジングが使われています。
 そして暗く薄気味悪い貯蔵庫にたどり着いたと同時に音楽も止まります。

ジャック・スパロウのテーマ3

0:20:36
 ウィルターナーさんがジャック・スパロウさんの居場所を色々な人に聞き回っているシーンです。
 本人は出てこないけれども、ジャック・スパロウさんを探すということでライトモチーフが演奏されます。
 ここでも演奏はリタルダンドします。これは1シーン目と似た使われ方をしています。
 場面の展開と最後の「ブラックシールズ」というセリフを聞かせる効果を持っています。

ジャック・スパロウのテーマ4

0:34:16
 このシーンでは今にも生贄にされそうなジャックさんが脱走するシーンです。
 ライトモチーフの中でもVlnの軽快な音をうまく利用して、ずる賢いイメージと軽快に逃げるイメージを音楽から引っ張っています。
 そして音楽はストップ・ゴーを繰り返して、うまくいかず簡単ではないことを示唆します。

ジャック・スパロウのテーマ5

0:37:58
 ここではジャックさんに火が焚かれようとするシーンで演奏されます。その際編曲がされます。
 テンポは遅く、悲しく聴こえるように編曲します。
(演奏)
 その後の脱走劇は場面の展開に合わせライトモチーフが使われます。
 ジャックの脱走にはオリジナル、乗組員の脱走に変奏曲が使われます。

ジャック・スパロウのテーマ6

1:05:23
 デイヴィ・ジョーンズさんとの約束で3日で残り99人の魂を集めなければならなくなった時のシーンです。
 ここではメロディは断片的で、多少の変更が加えられています。
(演奏)
 カデンツのようにメロディを変更し、次の楽曲にうまく移行しているので、サウンドエフェクトのような使い方といえばそうかもしれません。

ジャック・スパロウのテーマ7

1:20:13
 ここではコンパスが行く先を指し、向かうべき道が示された時に演奏されます。
 この時はワクワクした印象を与えるように演奏されます。

ジャック・スパロウのテーマ8

1:40:31
 このシーンはエリザベスさんを口説こうとする時に演奏されます。
 音楽はここでもストップ・ゴーでおしゃべりの駆け引きが表されています。
 ここのライトモチーフはエリザベスさんにもかかっていておもしろいです。会話にも出て来る「似た者同士」というセリフもかかっていて、エリザベスさんもジャックさんのように相手を手玉に取ろうとします。そのため、このライトモチーフはジャックさんのために演奏されたり、エリザベスさんのために演奏されたりと非常に面白い構造になっています。

ジャック・スパロウのテーマ9

1:54:58
 ここでは鍵を手に入れて三つ巴の決闘から離脱した時に演奏されます。
 箱を持って逃げているデイヴィ・ジョーンズさんの手下に対し、ヤシの実?をぶつけるところで演奏は止まります。このヤシの実をぶつけるというひょうひょうとしたキャラクターの表現が、ライトモチーフと相まって非常に効果的です。

ジャック・スパロウのテーマ10

2:20:54
 映画のラストもラストに前作のヴィランだったキャプテンバルボッサさんが再登場します。
 その際なぜかジャック・スパロウのライトモチーフが演奏されます。理由としてはジャックさんを救いに行けるという期待と、今後のキャプテンの登場として演奏されます。
 ここは次回作を期待してしまう非常にかっこいいシーンです。

ジャック・スパロウのテーマ まとめ

 やはりジャック・スパロウさんという主人公は純粋な悪を叩くヒーローではなく、そのひょうひょうとした立ち振る舞いが魅力のキャラクターです。それがこのライトモチーフになっていることがわかると非常にかっこいいです。
 2つのテーマに分かれていたのは、主に場面による使い分けをする目的が大きかったです。第1主題と第2主題を合わせた演奏はほぼなく、第1主題を演奏するシーン。時に第2主題を演奏するシーン。といった使い分けになるでしょう。

【エンディング】

 今回は「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」から、作中を代表する2つのライトモチーフ、「パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ」「ジャック・スパロウのテーマ」を見てきました。
 次回も同作から、ヴィランズのライトモチーフである「デイヴィ・ジョーンズのテーマ」と「クラーケンのテーマ」を取り上げる予定です。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
 podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
 ではまた!

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