#107【ユージュアル・サスペクツ】ep.1「時代を感じるも普遍的な良さも」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#107にあたる内容を再編集したものです。
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【ユージュアル・サスペクツについて】
1995年公開(日本1996年公開)
監督:ブライアン・シンガー
音楽:ジョン・オットマン
作曲家紹介
ジョン・オットマンさんは、アメリカの音楽家で、映像の編集も手がける映像作家としても知られています。
そして今回取り上げるユージュアルサスペクツの監督でもある、ブライアン・シンガー監督とのコラボレーションが有名です。
ほんの一部ですが、パブリック・アクセスやX-MENシリーズ、ファンタスティック・フォーシリーズもそうですね、他にもスーパーマン リターンズやジャックと天空の巨人、サブスクリプションで取り上げる予定のボヘミアン・ラプソディも担当されています。
その中でもボヘミアン・ラプソディではアカデミー編集賞を受賞されています。
南カリフォルニア大学映画芸術学部を卒業されていて、この学校は多くの映画音楽家を輩出しています。
ジェリー・ゴールドスミスさんやジェームズ・ホーナーさん、マルコ・ベルトラミさんも同学校の卒業生です。
ちなみにジョージ・ルーカス監督やロバート・ゼメキス監督も同学校の卒業生だそうです。
そんなジョン・オットマンさんの音楽に今回は迫っていきたいと思います。
作曲家作品
ゴールデンボーイ
ゴシカ
セルラー
ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]、:銀河の危機
ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ
エスター
ATOM
ルーザーズ
フライト・ゲーム
スタートレック: ディスカバリー
(ブライアン・シンガー監督とのコンビ作)
パブリック・アクセス
ユージュアル・サスペクツ
ゴールデンボーイ
X-MEN2、X-MEN:フューチャー&パスト、X-MEN:アポカリプス
スーパーマン リターンズ
ワルキューレ
ジャックと天空の巨人
ボヘミアン・ラプソディ(撮影終盤はデクスター・フレッチャー監督)
登場人物
ディーン・キートン:
元刑事。銃器強奪事件の容疑者。
マイケル・マクマナス:
銃器強奪事件の容疑者。忍び込みが専門。
フレッド・フェンスター:
銃器強奪事件の容疑者。マクマナスの相棒。
トッド・ホックニー:
銃器強奪事件の容疑者。爆薬の扱いに長ける。
ヴァーバル・キント:
詐欺師。左側の手足が不自由。
デイヴ・クイヤン:
関税局の捜査官。キントを尋問する。
ジャック・ベア:
FBIの捜査官。港の事件を捜査する。
カイザー・ソゼ:
伝説的ギャング。謎が多い。
コバヤシ:
弁護士。カイザー・ソゼの代理人。
レッドフット:
故買屋。宝石強奪の話を持ちかける。
イーディ・フィネラン:
キートンの恋人。
あらすじ
カリフォルニアのサンペドロ港で船が爆発し、多数の死者が出る事件が発生しました。
捜査官のクイヤンさんはこの事件の捜査をするべく、関係者のキントさんを尋問します。
キントさんによると、事の発端は6週間前。
とある銃器強奪事件の容疑者として、キントさんを含む前科のある5人が集められたところから始まります。
結局この事件では罪を立証できず5人とも釈放されるのですが、この時に容疑者の一人であるマクマナスさんは皆に宝石強盗の仕事を持ちかけます。
メンバーの一人であるキートンさんはすでに足を洗っており、この計画に参加するのに乗り気ではないのですが、それでも結局最後には5人で宝石を強奪することに成功しました。
そして奪った宝石を換金するためディーラーの元を訪れた5人でしたが、そこで新たな仕事の依頼を受けます。
再び宝石の強奪をおこなう5人。
ですが犯行の最中に相手を射殺してしまい、さらには奪ったスーツケースに入っていたのは宝石ではなく麻薬でした。
ハメられたといきどおる5人ですが、彼らの前に今回の依頼主が現れます。
コバヤシと名乗るその弁護士は、正体不明の伝説的なギャング「カイザー・ソゼ」の使いで来たと語り、5人に新たな指示を出します。
5人の身辺を調べ上げ、家族や友人を脅迫の材料に使うカイザー・ソゼ。
こうして彼らは、一切の正体が謎につつまれたソゼの思惑にはまっていくことになります。
【はじめに】
とてもかっこいい映画ですよね。
悪者というか、事件を起こした犯人がかっこいい映画で、最近の映画ではあまりみない構図ですよね。
レオンなんかもそうですが、90年代の映画では犯人がかっこいいという構図が多かった気がします。
これも時代ってやつですかね。
アメコミではヴィランが主人公の作品もあったりしますが、こういったクライムサスペンスやヒューマンドラマでは減った気がしませんか。
気のせいかもしれませんが。
それとジュラシックパークの次回作であるロストワールドやインセプションにも出演していた、ピート・ポスルウェイトさんが日本人役で出ていたのも時代だなと感じました。
彼は確かイギリス人でしたよね。
日本人役に中国の方が出てたりした時期もありましたが、イギリス人の起用は珍しいですよね。
まあ偽名的なことなのかもしれませんが。
それにしても、時系列が一瞬わからなくなりそうでした。
ちょっと眠い時に観たりしたら、もうわからないですね、普通に観ていればそんなことないと思うんですけれども。
なんか僕は一瞬今いつ?ってなってしまいましたが、なんとか追いつきました。
後、やっぱりカイザーソゼっていい名前ですよね。
ついつい言いたくなる名前です。
事件を追っていくと、そのカイザーソゼとは一体誰なんだというのが、今作のメインとなるところですね。
そして主犯の唯一の生存者と言われているキントさんから話を聞いていくと、事件の真相が明らかになっていくという上質なサスペンス映画なわけですが、音楽はどうだったかというと、映画を通して強く統一感を持たせています。
ほとんどがサスペンス音楽かホラー音楽、それとネガティブな印象を強く与える構造になっています。
映画自体は暗いわけではないのですが、どこか謎めいた雰囲気があるのは、音楽の影響も大きいと思います。
その中でも、これは時代を感じるなと思った手法を今回は話そうと思います。
【短い音楽の仕掛け】
それは、短い音楽の仕掛けについてです。
この映画の音楽は基本的にセリフが多いシーンでは演奏が控えられていて、セリフが優先されています。
それはそうなんですよね。
サスペンス映画は、重要なセリフを聞き逃すと面白さが半減してしまうというか、重要なセリフが多く登場します。
その中で、器用に音楽の効果を取り入れつつ、セリフの邪魔もしない方法として、短い音楽が仕掛けとして使われているというわけです。
主に場面の切り替え前や、セリフがなければ音楽を入れたそうな場面で登場していたのですが、とても巧みに音楽を入れています。
この入れ方を大きく分けるとナレーションと場面の切り替わりに分けることができます。
短い音楽の仕掛け キントさんのナレーション1
初めに使われたのは、
8:06
キントさんのナレーションで5人の容疑者が集められるシーンです。
映画でしか観たことのない壁に横線が書いてある部屋に着いた時に音楽が止まる仕掛けになっています。
ここでは、皆が同じセリフを言う記憶に残るシーンですね。
この前のシーンでは、キートンさんが打ち合わせ中に警察に同行するシーンがあるので、やはり場面としては、切り替わりのタイミングです。
この時の音楽は24秒前後で、雰囲気や観客の感情に同調する音楽としては短く、マウジングのような効果音のような音楽にしては長いわけです。
そして重要なのはナレーションが入っていることです。
もう一つシーンを見てみます。
短い音楽の仕掛け キントさんのナレーション2
16:26
ひとしきり5人の取り調べをした後に、キートンさんに宝石強盗を持ちかけられるもそれを拒み、誘ったマクマナスさんが冷めた態度をとるシーンの後、キントさんのナレーションが入るシーンです。
ここでも短い楽曲が使われています。
そして、ここでは先ほどの5人の容疑者が集められるシーンと同じ楽曲が演奏されています。
この楽曲自体は重要じゃないので、気になる方はアップルミュージック The Usual Suspects STftMP 8曲目に収録されている「Verbal Kint」という楽曲で聴くことができます。
概要欄にアップルミュージックのURLを貼っておきます。
この楽曲が演奏されていて、キントさんのナレーションが入る。
この一連が、2つの関連したシーンで演奏されています。
短い音楽の仕掛け キントさんのナレーション3
次にキントさんのナレーションが入る時は違う楽曲が演奏されます。
それは、
28:07
5人は容疑が認められず、釈放されて、キートンさんは恋人のイーディさんと共に帰るシーンです。
ここでもキントさんのナレーションが入ります。
そうなんです。
この映画は基本、キントさんの6週間前からの振り返りで、そこで起こった出来事を捜査官に話しているという体で話が進んでいくんですよね。
これで僕は時系列がわけわかんなくなっちゃったんですよ。
サンペドロ港での船爆破事件の前に5人は集められていて、宝石強盗を持ちかけるのも船爆破の前なんですよね。
しかし宝石強盗を持ちかけられたシーンのすぐ後に、船が爆破された事件現場のシーンになるので、ここで混乱したんですよね。
だからナレーションが入っているシーンは過去、事件現場にいた刑事的な人と捜査官、キントさんが出てくれば現在、ということですよね。
すみません、脱線しましたがスッキリしました。
それを踏まえて後でまたみようと思います。
短い音楽の仕掛け その他のシーン1
話を戻して、キートンさんとイーディさんが帰るシーンでは、別の楽曲が演奏されていたということで、他のシーンもいくつかみてみると、どれも別々の楽曲が使われています。
というのも、この短い楽曲はナレーション以外で使われる時は、ずっと演奏するわけではなく、端的にその状況に合わせた楽曲が演奏されていると言うことになります。
例えば、
17:27
FBIが船爆破事件の現場にきて、生存者である足の悪い男(キントさん)を検事が連れて行ったというセリフに大きく反応を見せたシーンです。
ここでは、ミステリー音楽が使われていて、シーンの切り替わりには演奏が終わってしまうほどに短い楽曲です。
短い音楽の仕掛け その他のシーン2
もう一つ例を出すと、
1:04:24
カイザーソゼは捕まらないという話と、もう一人の生存者である、火傷を負った男性から話を聞くシーンに渡って演奏されています。
ここも短い楽曲なんですね。
次のシーンのやけどを負った男性のシーンがメインで演奏されているんですが、セリフもなく音楽だけなんです。
このシーンは楽曲然り、音楽の入れ方然り、映像の切り替わり方然りで、カイザーソゼがいかに怖いかをとても感じるシーンです。
キントさんからカイザーソゼは捕まらないという話を聞かされてすぐ、ひどい火傷を負った男性の手がアップで映ります。
もちろん、船爆破事件の生存者ですからカイザーソゼの仕業ですね。
しかも男性はカイザーソゼにひどく怯えています。
このシーンでの短い音楽の使われ方がとてもストレートで、非常に助かりますね。
短い音楽の仕掛け まとめ
このように、この映画ではよく短い音楽が登場していて、場面の転換だったり、ナレーションのタイミングだったり、そこまで多く音楽が使われていないため、端的かつ効果的に機能しているんですよね。
多く音を入れない代わりに、入れる時は観客の感情をより高めるよう、繊細に構築していたわけですね。
なんだかとても良くできた建築のような音楽構造でした。
【違和感のある日本のイメージ】
それとこれは短い話なんですが、
43:12
宝石強盗の話でレッドフッドという男にあった時のシーンです。
ここでは、日本っぽい雰囲気の場所で待ち合わせしています。
それはコバヤシさんの話が出てくるからですね。
この前のシーンで、キントさんから「弁護士がいた。コバヤシだ」という話を聞いた後のシーンだからですね。
特に日本人からすると、コバヤシと聞けばすぐに苗字だとわかるので、次のシーンで日本っぽい雰囲気な理由がわかりますよね。
さらに音楽も日本っぽいものが演奏されています。
これは、日本人だからのやつですね。
どう聞いても中国なんですよね。
キートンさん含む5人が待ち合わせに選んだ場所も、中国っぽいんですよ。
この違和感のある日本を最近の映画で観ることもめっきり減った気がするので、これがまた逆に新鮮でよかったですね。
音楽は結構日本っぽい感じはするんですが、若干邦楽っぽい楽器の音色なんです。
木の実の殻を繋げて鳴らす楽器の音色やウッドブロックのような音色が選択されているところまで、日本風といえど選択される理由がわかります。
すべて日本の楽曲を使用する必要はないですしね。
しかし大きく違ったのが、メインとなる弦楽器の音色です。
どこか三味線や三線のような音色ではあるのですが、音がキラキラしているんですよ。
日本の民族楽器の音色、特に弦楽器はもちろんキラキラした音は鳴るんですが、海外の楽器ほど角の立ったような音が鳴らないんですね。
いわゆるブライトと言われる音の明るさですね。
日本の楽器はほんの少し角の丸い音がします。
これは僕がバークリーという音楽大学で、民族的な音とオーケストラを合わせる授業があった時に、お琴の音と三味線の音を使ったんです。
そしたらクラスメイトが「なぜそんなにこもった音を使うの?」みたいなフィードバックをくれたんですよ。
それで日本の楽器は少しこもった感じの音が多いんだよ、って説明したらなるほど!確かにそうだ!って感じになったんです。
その授業では高評価をもらったんですが、よく考えたら、こんな感じで日本人の話がイメージのまま伝言ゲームみたいに伝わっていって、海外から見た、少し違和感のある日本のイメージが完成するのかなって思ったんですよね。
僕は日本を知って欲しくて言ったんですが、逆にそれはそれでこもった音のイメージが先行してしまわないか?とも思ったと言う、そんな話でした。
【エンディング】
ということで、ユージュアル・サスペクツから短い音楽の話と少しだけ違和感のある日本のイメージの話でした。
やはりジョン・オットマンさんが、映像作家でもあることが音の付け方に影響しているように感じましたね。
というか、言ってしまうととても個性的なんですよね。
場面場面に登場する短い音楽やスッと入ってきてスッと消えたり、逆にわざとなくらい目立たせたり、タイトルだけで言うと100作以上取り上げてきたこのポッドキャストの中でも、とても個性的です。
でもそこまで大きな違和感があるわけではないですし、言ったらとてもアカデミックな作曲技法を使ったりもしているので、ぶっ飛んでるというよりはクセが強い感じですね。
それがユージュアル・サスペクツとの相性が良かったためか、不朽の名作と言われているのも頷けます。
それでは来週もユージュアル・サスペクツとサブスクリプションでは、ボヘミアン・ラプソディをやろうと思います。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
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