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#92【最強のふたり】ep.2「対比のための明るい表現」

※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#92にあたる内容を再編集したものです。

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【最強のふたりについて】

 2011年公開(アメリカ版リメイクが2019年公開)
 監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
 音楽:ルドヴィコ・エイナウディ

登場人物

 ドリス:
 失業中の青年。フィリップの世話をすることになる。
 
 フィリップ:
 車椅子の富豪。首から下を動かすことができない。
 
 イヴォンヌ:
 フィリップの助手で厳しい性格。
 
 マガリー:
 フィリップの秘書。手紙の代筆をおこなう。
 
 エリザ:
 フィリップの養子。
 
 エレノア:
 フィリップの文通相手。

【前回の振り返り】

 前回はルドヴィコ・エイナウディさんの楽曲の使われていたシーンを見てきました。
 どこか悲哀を帯びた楽曲は、どこか悲哀の混じるシーンで使われていました。
 楽曲は「フライ(FLY)」や「ウナ マティーナ(UNA MATTINA)」「ルオリジン エスコート(L’ORIGINE NASCOLTA)」「ライティング ポエムス(WRITTING POEMS)」「カチャカチャ(CACHE CACHE)」などの楽曲が使われていました。
 一部ですが、このような楽曲でしたね。
 (演奏)
 映画には楽しげなシーンももちろんあるのですが、ルドヴィコ・エイナウディさんの楽曲は、どこか悲しげな表現として用いられていたわけですね。
 これもまさに対比で、いつも楽しげなドリスさんにそれにつられるフィリップさんのシーンでは楽しげな楽曲が使われていますが、それはすべて別のソースミュージックで、ルドヴィコ・エイナウディさんの楽曲ではないというのが今回のミソとなる部分ですね。

【ソースミュージックに登場した楽曲】

 ということで、今回はソースミュージックに登場した楽曲を見ていこうと思います。
 どのような理由でソースミュージックを選んだのでしょうか、それも見ていきたいと思います。

アース ウィンド&ファイア「セプテンバー」

 やはり映画冒頭に登場したこの楽曲が非常に印象的です。
 5:14
 警察にスピード違反で止められた際に、うまい言い訳をして、言い逃れたシーンです。
 ドリスさんが言い逃れたことを喜んで、ムードを変えてお祝いだと言って、カーステレオをかけます。
 この時に演奏されているのがアース ウィンド&ファイア 「セプテンバー」(Earth,Wind & Fire / September) という楽曲です。
 一部ですが、こういう楽曲です。
 (演奏)
 とても楽しげなディスコサウンドですよね。
 アース ウィンド&ファイアは、1970年代に結成されたアメリカの伝説的なファンク、R&Bのバンドです。
 壮大なホーンセクション、豊かなボーカルハーモニー、そして複雑なリズムを特徴とし、楽曲においてソウルフルでダンサブルなサウンドを築き上げました。
 彼らのヒット曲には、「September」「Shining Star」「Boogie Wonderland」などがあり、数々の賞を受賞しています。
 そのユニークな音楽スタイルとステージでの魅力的なパフォーマンスで、世界中のファンに愛され続けています。
 そんなアース ウィンド&ファイアのセプテンバーをチョイスするのは、楽しげな表現として非常にうまく機能しています。
 前回やったルドヴィコ・エイナウディさんの楽曲にはどこか悲哀を感じる表現を、今回のアース ウィンド&ファイアのセプテンバーには楽しさを感じる表現を与えることで、対比を成立させています。

アース ウィンド&ファイア「ブギー ワンダーランド」

 そしてアース ウィンド&ファイアの楽曲はもう1曲使われています。
 1:11:41
 フィリップさんの誕生日会が終わった後、皆が片付けをしている時に、ドリスさんのためにクラシックを聴かせてあげるフィリップさんに対して、ドリスさんはアース ウィンド&ファイアの「ブギー ワンダーランド」という楽曲を聴かせてあげるシーンです。
 一部ですが、このような楽曲です。
 (演奏)
 とてもダンサブルなディスコナンバーですね。
 これもクラシックが好きなフィリップさんとディスコサウンド、ダンスミュージックのすきなドリスさんの対比を感じますよね。
 楽しみ方はそれぞれですね。
 しかしフィリップさんも、とても楽しそうにしているとてもいいシーンです。

アントニオ・ヴィヴァルディ「夏」

 そしてそんなクラシックを好むフィリップさんが、ドリスさんのために聴かせてあげたシーンでは、数々の名曲が演奏されています。
 演奏数も多いので、いくつか挙げてみます。
 まずはアントニオ・ヴィヴァルディさんの四季より「夏」という楽曲ですね。
 「四季」(Le quattro stagioni)は、バロック音楽の代表的な傑作の一つで、1723年に発表されました。
 ヴィヴァルディさんの最も有名な作品の一つであり、四季それぞれを表現した四つのヴァイオリン協奏曲から成り立っています。
 「四季」は、春(La primavera)、夏(L'estate)、秋(L'autunno)、冬(L'inverno)のそれぞれの季節を描写していて、各協奏曲は三つの楽章から構成されています。
 ヴィヴァルディさんは、自然の景色や季節の気候を音楽的に表現し、鳥のさえずり、風のざわめき、雷の轟音など、様々な効果音を表現した生き生きとしたイメージを描き出しています。
 「四季」はその美しい旋律と技巧的な演奏によって、今でも広く愛されていて、バロック音楽の名品として高い評価を受けています。
 また、その情景描写と抒情性から、聴衆を音楽の世界に引き込み、想像力を刺激する力があります。
 とアントニオ・ヴィヴァルディさんの四季に関しての情報でしたが、このことから、フィリップさんの教養の高さが窺い知れます。
 教養があるから良い悪いではなく、フィリップさんとドリスさんとの、対比を描いたことになります。
 フィリップさんは夏を聴いている時にドリスさんに、なにか感じるものがあるだろう、といいますが、これに対しドリスさんは踊れない音楽は音楽じゃないと一掃します。
 これも非常に対比的な二人の関係性を描いていますね。

J.Sバッハ「チェロ組曲第1番の前奏曲」

 ここから怒涛のような演奏がスタートします。
 次に演奏されるのはヨハン・セバスティアン・バッハさん、J.S.バッハさんです。
 J.Sバッハさんの「チェロ組曲第1番の前奏曲」プレリュードですね。
 これに対してドリスさんはこの楽曲を知っている、CMの曲だ、コーヒーのと言ってフィリップさんを呆れさせます。

J.S.バッハ「バディヌリ 第2番」

 つぎもJ.S.バッハさんのバディヌリ、第2番ですね。
 これは僕が聴いたことある他の方が演奏したバディヌリとは少し違うニュアンスの演奏でした。
 勢いがあって、歯切れのいい演奏がとてもかっこよかったです。
 まあこれに対してドリスさんは、馬に乗った英雄のようにチョけていました。

J.S.バッハ「チェンバロ協奏曲第5番 第2楽章」

 次もJ.S.バッハさんのチェンバロ協奏曲第5番 第2楽章です。
 この楽曲に対しても、ドリスさんは怪しげな感じ、人が素っ裸で走ってると形容しているのに対し、笑いながらフィリップさんは、わかったもういいよと一掃します。
 ドリスさんもおもしろい表現ですよね。

アントニオ・ヴィヴァルディ「春」

 そして次にビバルディさんの四季より「春」が演奏されます。
 夏から始まって、J.S.バッハさんを挟み、また春が演奏されるわけです。
 夏は勢いもあって、ドリスさんが好きそうな感じもわかりますが、春は穏やかな楽曲ですし、ドリスさんの琴線に触れるかどうかですが、これに対してドリスさんは、職業安定所の電話案内で流れているとモノマネをします。
 これにはフィリップさんも笑っています。

ニコライ・リムスキー=コルサコフ「熊蜂の飛行」

 次に、ニコライ・リムスキー=コルサコフさんの「熊蜂の飛行」という楽曲です。
 この楽曲に対してドリスさんは「トムとジェリーでしょ」と言ってフィリップさんを笑わせます。
 ここでフィリップさんのクラシックのターンは終わって、先ほどのドリスさんが踊るシーンに繋がります。

フレデリック・ショパン「夜想曲 第1番 Op.9 No.1」

 この他にもクラシックが演奏されている機会はあります。
 例えば
 7:41
 ドリスさんがフィリップさんのもとに初めて面接にくるシーンです。
 楽曲はフレデリック・ショパンさんの「夜想曲 第1番 Op.9 No.1」です。
 ノクターンですね。
 ショパンさんの夜想曲の中でもとても有名な楽曲で、感傷的で美しい旋律が特徴で、静かで穏やかな雰囲気を持ちながらも、情熱的な表現が見られる楽曲です。
 こう考えると穏やかなフィリップさんと情熱的なドリスさん、と読むことができますが、これは深読みかもしれません。

「アヴェマリア」、「魔弾の射手」

 この他にも、ドリスさんがフィリップさんの家に住み込みで働くシーンで、アヴェマリアが、オペラのシーンでは「魔弾の射手」という作品の第1幕が上映されていました。
 クラシックやオペラが含まれた楽曲は、たくさん演奏されていましたね。
 ではクラシックでもなく、アース ウィンド&ファイアでもない楽曲はどうかというと、これも、いくつか演奏される機会があります。

ダニー・ハサウェイ「ザ ゲットー」

 まずは、ダニー・ハサウェイさんの「ザ ゲットー」The Ghetto / Donny E. Hathaway & Leroy Hutsonという楽曲です。
 27:09
 ドリスさんがフィリップさんの世話役を開始するシーンで演奏されています。
 この楽曲はダニー・ハサウェイさんとリロイ・ハイトンさんの共作で、歌詞には社会的なメッセージ、黒人コミュニティの現実的な洞察なんかがされた楽曲で、もしかしたらそのメッセージ性が、ドリスさんの働き出す時にハマったからの採用かもしれません。

テリー・キャリアー「ユア ゴーイン ミス ユア キャンディーマン」

 つぎにテリー・キャリアーさんの「ユア ゴーイン ミス ユア キャンディーマン」YOU’R GOIN MISS YOUR CANDYMAN / Terry Callierという楽曲です。
 テリー・キャリアーさんはアメリカのSSRで、この楽曲は1972年にリリースされたR&Bやソウルといったジャンルの楽曲ですね。

ニーナ・シモン「フィーリング グッド」

 次に
 1:22:56
 二人でグライダーをするシーンです。
 この時に演奏されている楽曲はニーナ・シモンさんの「フィーリング グッド」という楽曲ですね。
 緊張感のあるソロ歌唱からはじまる楽曲ですが、グライダーにビビっているドリスさんとのギャップがおもしろいですね。

ソースミュージックに登場した楽曲 まとめ

 ということで、この映画のソースミュージックは以上です。
 この映画は非常にソースミュージックの多い、というかソースミュージックで構成された映画でした。
 映画にみみったけの、ピックアップするタイトルは観直してから決めていないので、この結果は驚きではありました。
 でもおもしろいですね。
 実際他の映画と見比べても、音楽が演奏されている回数自体が非常に少ないタイプの映画でして、だいたい19回くらいですかね。
 フィリップさんがドリスさんにクラシックを聴かせる回をひとまとめにすればですけれども。
 しかしそのひとつひとつはとても効果的で、フィリップさんとドリスさんの対比という意味でも機能的でした。
 ちなみにクラシックの楽曲もクレジットが多く載っていたので、もしかしたら、クラシックを聴かせる回はもっと長かったかもしれませんね。

【エンディング】

 ということで2回にわたって映画「最強のふたり」をみてきました。
 映画自体本当に面白く、心温まる人間模様が、とても前向きな映画なので、仕事に疲れた土曜の午前中にでも観るといいかもしれませんね。
 とまあ適当なことを言っていましたが、サブスクリプションでは「最強のふたり」と「ノマドランド」をやろうと思います。
 
 サブスクリプションでは過去の特別エピソードも聴き放題で初月無料、月額300円で聴くことができます。
 それと番組のフォローとXのフォローも励みになりますので、よろしくお願いいたします。
 あと映画にみみったけでは、お便りも募集しています。
 info@eiganimimittake.comにてお便りお待ちしております。
 やってほしい映画とか、この回が好きだったなど、どしどしお待ちしております。
 noteのコメントもどしどしお待ちしています。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
 podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
 ではまた!

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