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#97【ダンジョンズ&ドラゴンズ / アウトローたちの誇り】ep.1「ファンタジーの世界を表現するテクニック」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#97にあたる内容を再編集したものです。
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【ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇りについて】
2023年公開
監督:ジョナサン・ゴールドスタイン、ジョン・フランシス・デイリー
音楽:ロアン・バルフェ
作曲家紹介
ロアン・バルフェさんはスコットランドの音楽家で、映画音楽やゲーム音楽などを多く手がけています。
アクションやアドベンチャー作品が多く、ヒーロー作品やNetflixオリジナル作品「Life on Our Planet」などを多く手がけています。
2011年以降はゲーム音楽も手掛けていて、映画のような壮大な作品をよく担当されています。
音楽性は感動的なオーケストラから、感情を切り取るような電子楽器を入れた楽曲を得意としています。
近い作家性のハンスジマーさんとの共同制作も多くされています。
作曲家作品
ターミネーター:新起動/ジェニシス
レゴバットマン ザ・ムービー
ゴースト・イン・ザ・シェル
パシフィック・リム: アップライジング
ミッション:インポッシブル/フォールアウト、デッドレコニング PART ONE
バッドボーイズ フォー・ライフ
ブラック・ウィドウ
トップガン マーヴェリック
ブラックアダム
ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り
グランツーリスモ
(ゲーム)
コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2
Crysis 2
スカイランダース・ジャイアンツ
BEYOND: Two Souls
アサシン クリード リベレーション
アサシン クリード III
アサシンクリード アイデンティティ
登場人物
エドガン・ダーヴィス:
盗賊の男。よみがえりの石版を探している。
ホルガ・キルゴア:
エドガンの相棒のバーバリアン。
サイモン・アウマー:
ハーフエルフの魔法使い。魔法が苦手。
ドリック:
ティーフリングのドルイド。フォージに抵抗する。
ゼンク・エンダー:
生真面目な聖騎士。
キーラ・ダーヴィス:
エドガンの娘。
フォージ・フィッツウィリアム:
かつてエドガンの仲間だった詐欺師。
ソフィーナ:
レッド・ウィザードの一人。かつてエドガンたちを裏切った。
あらすじ
妻を亡くした吟遊詩人のエドガンさんは、幼い娘のキーラさんを育てながらすさんだ生活を送っていました。
やがて生活のため盗賊となったエドガンさんは、相棒のホルガさんらとともに金持ち相手に、盗みを働くようになっていました。
ある時彼は魔女ソフィーナさんから、コリン砦にある「よみがえりの石板」を使えば、妻のジアさんを生き返らせることができると知らされます。
こうしてエドガンさんとホルガさんは、仲間たちとともに砦に忍び込みます。
しかし石版を盗むことに成功した矢先、裏切ったソフィーナさんの魔法によりエドガンさんとホルガさんは逃げ遅れてしまいます。
そしてエドガンさんは、仲間のフォージさんに石版と娘のキーラさんを託し、ホルガさんとともに捕まってしまいます。
2年後。牢獄にとらわれていた二人は脱獄し、娘のキーラさんを迎えにフォージさんの元へと向かいます。
しかしキーラさんはフォージさんから「父はお前を捨てた」と吹き込まれており、帰ろうとしません。
さらにフォージさんはよみがえりの石版を渡そうとせず、ソフィーナさんと手を組んでエドガンさんらを始末しにかかります。
なんとかその場から逃れた二人ですが、フォージさんに対抗するには戦力が足りません。
こうしてエドガンさんは、よみがえりの石版を取り戻すため、かつての仲間である魔法使いサイモンさんや、ドルイドのドリックさん、聖騎士のゼンクさんらに協力を求めることとなりました。
【はじめに】
元はテーブルトークRPGというボードゲームが発祥のダンジョン&ドラゴンズの映画化ですね。
RPGとは参加者が各自割り当てられたキャラクターを操作して、協力して冒険、探索、戦闘、難題などを解決し、目的の達成を目指すゲームのことです。
テーブルトークRPGとは、コンピュータを使わずに紙や鉛筆、サイコロなどを用いて、会話とルールブックに沿って遊ぶ、対話型のRPGのことです。
僕も、ダンジョン&ドラゴンズではないのですが、テーブルトークRPGはやったことがあって、非常に面白かったですね。
その時は近未来のSFがテーマのお話で、テーブルトークRPGは世界観をどのように構築してもいいそうなので、いくらでも展開できて楽しいですね。
映画に話を戻すと、この作品でもキャラクターそれぞれが役職を割り当てられていて、主人公のエドガン・ダーヴィスさんは盗賊で吟遊詩人、エドガンさんの相棒のホルガ・キルゴアさんはバーバリアン(戦士)、ハーフエルフで魔法使いのサイモン・アウマーさんは魔法使い、ティーフリングのドリックさんはドルイドなど、各々の役割が噛み合っていて、非常にRPGらしい構成になっていましたね。
このダンジョン&ドラゴンズは1974年にアメリカで制作された、世界最古のRPGと言われています。
今作では、中世ヨーロッパのような世界観でしたが、テーブルゲームの方では、他にもアラビアン・ナイト風の世界観だったり、幻想的な東洋世界のオリエンタルな世界観だったり宇宙を冒険する世界観だったりと、様々あるようです。
今となってはテレビゲームなどで、当たり前のように展開されているRPGの元祖と言えるダンジョン&ドラゴンズの映画に迫っていきたいと思います。
話は妻を失い失意の底にあった親子に仲間ができ、盗賊をやっていたら裏切られて投獄。
脱獄をして娘さんとかつての仲間に会いにいくと、かつての仲間に裏切られて、その裏切り者から娘さんを取り戻すのが、目的ということで奮闘する、ざっくり言うとこのような作品です。
世界観はファンタジーで中世ヨーロッパのような世界観でしたね。
だいたい映画の世界観は衣食住をみればわかるようになっています。
革製の靴や麻のシャツ、金属製の鎧や煉瓦造りの家だったり、息を呑むほど美しい洋式のお城、バーのようなところで果実酒を飲んでいたり、肉を食べていたりと、衣食住で世界観や年代をだいたい理解しているものです。
この中で、音楽の存在はその世界観を助長することで、さらに世界観に浸れるわけですね。
世界観の助長についてはこのポッドキャストでもよく話していて、S1#10アトランティスの回でもガムラン音楽を使うことで、アトランティスにオリエンタルな印象を与えているなんて話をしましたね。
ではこのダンジョン&ドラゴンズではどのようにファンタジーで中世ヨーロッパのような音楽を作っているのか、これを見ていこうと思います。
【どのようにファンタジーで中世ヨーロッパのような音楽を作っているのか】
そもそもファンタジーを感じる音楽ってなんなんだろう、という話ですよね。
中世ヨーロッパはオーケストラであったり、西洋音楽、西洋楽器だけでも十分に感じることができます。
その中で、バグパイプやハープが演奏されれば、イギリスを感じますし、バンドネオンはドイツ、アコーディオンはフランスなど、その国にまつわる楽器もたくさんあります。
しかし、魔法やモンスターがいる現世ではない異世界ファンタジーを音楽で表現するには、いくつかのテクニックがあったりします。
例えば、ターシェリープログレッションと呼ばれる手法です。
ターシェリープログレッション
これは、壮大で人智を超えるような超自然的な表現で使われます。
今回のダンジョン&ドラゴンズでも使われていますね。
ターシェリープログレッションとは、3度で進行していくハーモニーですね。
例えばこのような感じです。
(演奏)
とても神秘感というか、畏敬の念のようなものを感じます。
この進行は映画音楽では非常によく使われる手法で、ミステリーやサスペンス音楽でもよく使われますね。
映画で建物や大自然に圧倒されるようなシーンってよくあるじゃないですか。
たとえば、何千年も前から存在する遺跡を発見した時とか、どうやって建築したかも想像がつかないほど美しいお城を見た時とか、そんな超自然であったり、人間の想像に遠く及ばない存在に圧倒されるシーンでよく使われます。
なので、動物に密着するようなナショナルジオグラフィックやブループラネット的な、映像作品でもよく使われるハーモニーですね。
意外音
メロディにもこのようなテクニックが存在します。
意外音と僕が勝手に呼んでいますが、特に名前がついている手法ではないので、本当に勝手に呼んでるだけです。
この意外音も映画音楽では結構よく登場しています。
有名なものだとハリーポッターのヘドウィグのテーマだったり、スターウォーズファントム・メナスのアナキンのテーマなど、他にもメインテーマに用いられていたり、結構よく登場しています。
昔に僕が書いた楽曲に意外音を使ったものがあったので、それを少しだけ流してみます。
(演奏)
メロディに、少し違和感を覚える音があったと思います。
上がりきらないというか、どうも煮えきらない音が、この意外音です。
意外音には作り方があるのですが、サブスクリプションのS1のSP1アナキンのテーマとSP9ヘドウィグのテーマでやっていますので、初月無料ですので、興味がございましたら聴いてみてください。
この意外音はファンタジー映画の音楽でまたよく機能するんですよね。
少し暗い印象を与えだけではなく、どこか謎めいた印象がファンタジー作品との相性がいいです。
コーラス
この他に、楽器にもファンタジーを感じるものがあります。
例えばコーラスですね。
このポッドキャストでもほんとよく登場しますが、女性コーラスには神秘的な印象を与える効果があるので、例えば、妖精やエルフといった想像上の存在であったりとか、樹上で生活している民族や神秘的に植物などが発光する夜のように、儚くも美しいシーンに合いますよね。
男性コーラスには、力強さや緊張感を与える効果があるので、例えば、火山地帯であったりとか、ドラゴンやゴーレムのような大きなモンスターなど、力強いシーンに合います。
この他にも様々なテクニックを用いて、音楽でファンタジーの世界観を表現しているわけですね。
【ロアンバルフェさんの作家性】
つぎにロアンバルフェさんの作家性について見ていこうと思います。
彼の経歴の中で、ハンスジマーさんと多く共同制作しています。
ハンスジマーさんといえば、やはり電子楽器とオーケストラですよね。
その意思を着実に受け継いでいるのがこのロアンバルフェさんです。
というのも、この映画で意外な音がよく登場しています。
それは、電子楽器の音です。
電子楽器の音を採用するのは、映画の世界観だけでみたら意外な楽器の選択なのですが、この映画はコメディのような側面も持っているので、この意外な音の選択が可能になっています。
電子楽器の登場するシーン1 Thayan Flashback
ではどのようなシーンにこの電子楽器を用いているかをみていくと、初めて演奏されるのは
59:40
聖騎士であるゼンクさんから、サーイの昔話を聴くシーンです。
ここでは、緊張感のあるシンセベースが演奏されています。
アップルミュージック ダンジョン&ドラゴン オーナー アモング シーブス OMPST 23曲目に収録されている「サヤン フラッシュバック(thayan Flashback)」という楽曲で聴くことができます。
こちらアップルミュージックのURLを概要欄に記載しておくので、聴ける方はチェックしてみてください。
それでゼンクさんから悪の組織の話聞きます。
ここではヴィラン音楽とアクション音楽の間を担う音楽が演奏されています。
ここでのテンポの速いシンセベースが、 うまく緊張感を与えていますね。
電子楽器の登場するシーン2 The Ruckus
次も非常に近い使われ方です。
1:04:12
兜をとりにゼンクさんに連れられて、アンダーダークへ行く時にアンデットの暗殺者につけられていることがわかるシーンです。
ここでもシンセサイザーが使われていて、
1:09:51
アンダーダークに兜を取りに行った時に、アンデットの暗殺者に襲われるシーンでも演奏されています。
27曲目に収録されている「ザ ラッカス(The Ruckus)」という楽曲が演奏されています。
ここはアクションシーンなのですが、やはり緊張感を感じさせるシンセサイザーがいいですね。
このゼンクさんに関連するシーンで演奏されていたシンセサイザーには、すべてゼンクさんへの脅威の存在があります。
ゼンクさんの過去と、ゼンクさんに降りかかる脅威といったことが関連づけられてシンセサイザーが演奏されています。
電子楽器の登場するシーン3 The Heist
次に演奏されるのは、
1:23:02
目的である娘さんの救出の新しい作戦を開始するシーンです。
35曲目に収録されている「ザ ヘイスト(The Heist)」という楽曲で聴くことができます。
ここでは、スニークの要素とアクションの要素、そして準備シーンの音楽という軽度のアクション要素が加わった音楽のため、シンセサイザーはリズムの意味合いが強く感じられる使われ方がされています。
電子楽器の登場するシーン4 Into The Castle
次に
1:33:45
なんとか城内に潜入するも、兵隊に追いかけられて、戦士のホルガさんが戦闘をするシーンです。
37曲目に収録されている「Into The Castle」という楽曲で聴くことができます。
ここでは先ほどまでとは打って変わって、ダンスミュージックのような要素を持っていて、アクションシーンと非常に噛み合いがいいですね。
電子楽器の登場するシーン5 Entering The Arena
次に
1:40:26
フォージさんの悪事に気づくも、ハイサンゲームという悪趣味なゲームへの参加が決まってしまって、閉じ込められているシーンです。
そのままお金持ちがお金をかけているシーンでもシンセサイザーが演奏されています。
40曲目に収録されている「Entering The Arena」という楽曲で聴くことができます。
ここでのシンセサイザーは緊張感が強くサスペンスのような使われ方と、心音のような使われ方がされています。
この一連では、裏切り者のフォージさんの元へ、娘さんを取り戻しに行く過程で使われています。
準備から城への侵入、バトル・ロワイアルゲーム、ハイサンゲームへの参加とフォージさんに強く結びついています。
このように、シーンごとでシンセサイザーの使われ方が違いました。
初めはゼンクさんに関連していて、次は主人公たちとフォージさんに関連してシンセサイザーが使われているという、バランスでしたね。
やはりシンセサイザーの使い方をみても、とても上手な、ロアンバルフェさんらしい使われ方でした。
【エンディング】
ということで今回は、ファンタジー音楽のテクニックとロアンバルフェさんの作家性についてみてきました。
ファンタジー音楽と一口に言っても、どうすればファンタジー音楽になるのか、どのような音楽をファンタジー音楽というのか、これを言語化するのって意外と楽しいですね。
それとロアンバルフェさんの作家性を感じる、シンセサイザーについてみてきました。
主に緊張感としてのシンセサイザーが多く採用されていましたね。
ヴィラン音楽に使われていたり、アクションで使われていたり、サスペンスフルに使われていたりと、柔軟にシンセサイザーの音をうまく織り交ぜていました。
ということで、次回はダンジョン&ドラゴンズの続きと、サブスクリプションでは「グランツーリスモ」という映画をやろうと思います。
それと冒頭でも話しましたが、100回記念にゲストを招いて楽しくおしゃべりをしようと思います。
映画に詳しい友人から音楽に詳しい友人などから、様々な映画や音楽の話を聞こうと思います。
サブスクリプションでは過去の特別エピソードも聴き放題で初月無料、月額300円で聴くことができます。
それと番組のフォローとXのフォローも励みになりますので、よろしくお願いいたします。
あと映画にみみったけでは、お便りも募集しています。
info@eiganimimittake.comにてお便りお待ちしております。
やってほしい映画とか、この回が好きだったなど、どしどしお待ちしております。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
ではまた!
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