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#104【グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち】ep.2「とても会話が重要な映画です」

※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#104にあたる内容を再編集したものです。

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【グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちについて】

 1997年公開(1998年日本公開)
 監督:ガス・ヴァン・サント
 音楽:ダニー・エルフマン、ジェフリー・キンボール

登場人物

 ウィル・ハンティング:
 天才的な頭脳をもつ青年。
 
 ショーン・マグワイア:
 ウィルの更生のため協力する講師。
 
 ジェラルド・ランボー:
 MITの数学教授。
 
 スカイラー:
 ウィルの恋人。
 
 チャッキー・サリヴァン:
 ウィルの悪友。

【前回の振り返り】

 前回は、ウィルさんとスカイラーさんのシーンで登場した楽曲を紹介しました。
 4シーン中全てが、SSWであるエリオット・スミスさんの楽曲が演奏されていました。
 さらに、真ん中を避けるようにミックスされた楽曲が、セリフとの被りも避けられていたり、アコギの音も左右に振られることでこれまたセリフなどの映画内の音を避けるような仕掛けがされていました。
 そして最後もスカイラーさんのことを思うウィルさんが感じられる仕掛けになっていたのは、エリオット・スミスさんの楽曲ありきですよね。
 これが前回やった内容で、今回見ていこうと思うのは、「映画の持つ内容の比重」ということで、音楽からわかるこの映画の持つ方向性を見ていこうと思います。

【映画の持つ内容の比重】

 ということで、音楽からわかるこの映画の持つ方向性を見ていこうと思います。
 映画を観ればわかることなのですが、映画を観てわかるって実はすごいことですよね、というそんな当たり前なんだけどそれを当たり前にさせている仕掛けについて見ていこうじゃないかということです。
 例えば、魔法が出てくれば大体ファンタジー映画なのですが、ファンタジーという概要意外にも人間模様がメインで描かれたり、バトルがメインで描かれたりと、映画の舞台とは別でなにかしらのプロットが登場します。
 そのため、音楽はそのシーンの内容ごとに書き換えるわけですよね。
 ですので、音楽ジャンルの比重で、その映画がどのような内容に時間をかけていたか、またはどのような内容が描かれていたかが見えてきます。

音楽ジャンルの比重1 バラード

 ということで、グッドウィルハンティングではどのようなジャンルの音楽が多かったか、一番多く書かれていたジャンルはバラードです。
 だいたい29回演奏されるうち、今作でのバラードは15回演奏されています。
 ですので、だいたい半分はバラードということになりますね。
 しかしバラードというのは大きく分けて、明るいものと悲しいものの2種類があります。
 まあポジティブな内容には明るい、ネガティブな内容には悲しいということになります。
 このうちポジティブなバラードは9回演奏されています。
 ということはネガティブなバラードは6回演奏されているということになります。
 バラードが多いということは、人間ドラマが描かれていることが多いですね。
 まさにここまでは、予想通りというか思った通りですよね。

音楽ジャンルの比重2 ソースミュージック

 そしてグッドウィルハンティングではこの中にソースミュージック、ライブラリーミュージックが登場します。
 前回やった、エリオットスミスさんの楽曲が恋愛シーンでは演奏されているというのは、ここですね。
 この他にもソースミュージックは使われています。
 どのようなシーンで使われていたかというと、喧嘩のシーンです。
 ここで演奏されていたのは、ジェリー・ラファティさん(Garry Rafferty)のベイカーストリート(Baker Street)です。
 アクションっぽさとはかけ離れた、牧歌的な雰囲気のある楽曲でフォークロックのような雰囲気です。
 という感じで、ソースミュージックでは恋愛と喧嘩のシーンですね。
 実はソースミュージックは時代背景とか、歌詞の意味合いを求めることが多いので今回の内容の比重にはあまり関係ないんですけどね。
 前回触れていたので、一応触れてみました。

音楽ジャンルの比重3 ミステリー

 そして、バラードに次いで多いのがミステリーです。
 これはこの作品において意外と使いやすいだろうと思いました。
 バラードとかぶっているところも合わせると、10回演奏されています。
 理由としては、わかりやすいですね。
 この映画に登場するウィルさんは、数学において類を見ない才能を見せます。
 それを証明することになったのは、マサチューセッツ工科大の廊下に張り出された難問を解いたことで才能をあらわにします。
 この難問を解くときにこのミステリー音楽が使われるんですね。
 基本的に問題を解くときはミステリー音楽です。
 このミステリーというのは、謎めいていて先のわからないときに使う音楽ジャンルなので、問題を解く時はちょうどいいですね。
 ただそのミステリー感もネガティブなバラードと噛み合わせた楽曲が多く、あからさまなミステリー音楽として書いていないのが、ダニー・エルフマンさんの手腕といえます。
 当たり前なのですが、ここで分かりやすいミステリー音楽を演奏してしまうと、クイズ番組みたいになってしまいますよね。
 問題を解くのが一番見せたいところで、問題が解けるかどうかの緊張感が必要なのは、初めて問題を解くときだけなんです。
 それ以外は解けて当たり前と思って観たいでしょうし、解けて当たり前ですもんね。
 それとミステリー音楽とネガティブなバラードの作り方が似ているのも、噛み合わせとして優れている点ともいえます。
 ですので、ダニー・エルフマンさんはここでの音楽をミステリー音楽に寄せすぎずに作曲したということがわかるわけです。
 そしてミステリー音楽の使い所として面白かったところは、彼女と別れるシーンでもミステリー音楽が使われているところです。
 ウィルさんは数学は得意ですが、それ以外はからっきしです。
 ですので、彼女との関係性であったり、からかって怒らせてしまったセラピストとのやりとりのような、人間関係の構築は彼にとって難問であることがわかります。
 そんな難問とぶつかったときにミステリー音楽の要素が入ってくる仕掛けになっていたわけですね。
 ということで、内容は常にさまざまな難問を解こうとする青年ウィルさんを中心に描かれていることが音楽からわかりました。

【音楽のない会話シーン】

 続いては本当にサクッとした話なのですが、この映画の重要な要素としては「会話」というものがあると思います。
 もちろん最近の映画では会話のない映画はほとんどないと思います。
 会話がない、というコンセプトでも持っていない限りは会話が登場します。
 そして重要な会話が行われているシーンでは、会話を邪魔しないように音楽が作曲されます。
 しかしこの映画では、多くの会話のシーンでは音楽が使われていません。
 例えば、映画の重要な要素として登場する、主人公のウィルさんとセラピストのショーンさんのセラピーの時間が多く描かれます。
 そのときに音楽はほとんど演奏されず、画面の切り替わりのタイミングでもない限りは演奏がありません。
 他にも地元友達とお店で料理を食べながら会話をするシーンだったり、みなで野球を見ているシーンでも演奏はないんです。
 もちろん、初めはうまくいかなかったセラピストたちとの会話のシーン自体には演奏がなく、ウィルさんの裁判のシーンでも演奏はないわけです。
 このようにこの映画は会話が多く、会話の際には演奏が少ないんです。
 しかし前回話したのは、会話のある彼女とのシーンでエリオット・スミスさんの楽曲が使われているというものでした。
 一見矛盾しているように見えますが、ここがこの映画のすごいところというか見どころだったりするんですよね。
 前回の会話を避けるようなミックスもあるのですが、そうではなく、会話のシーンで演奏が極端に少ないからこそ、デートシーンでソースミュージックが演奏されることでシーンが浮き彫りになります。
 ということはデートシーンが目立つわけです。
 目立った上で、会話のシーンよりも思い出感が強くなります。
 会話のシーンで音楽がないということは、リアリティがあるということになります。
 今その場で話していて、その話に耳を傾けるのが視聴者側の心理になります。
 しかし会話もあり歌もあるシーンが配置されるのは、この映画の構造上、異質なシーンとも言い換えられます。
 ですので、彼女との会話シーンで音楽のないシーンも登場します。
 これだけ頑なに会話シーンで音楽を使わず、デートシーンでソースミュージックが使われていたのがとても新鮮に映る訳ですね。
 おそらく計算でやっていると考えると、とても効果的ですよね。
 それこそどこかエモい感じがしてきます。
 会話が重要ではなくて、そこに二人がいるということが重要な訳ですね。
 少し感覚的な内容を言語化しようとしたので、うまく伝わっているかわからないのですが、観た方はなんとなくでも感じ取ってもらえると思います。
 思い出の曲を聴くとその当時のことを思い出すような、そんな感じがしたら話したいことはうまくいったということですね。
 まあその会話における重要度と二人でいることの重要度の差がとても美しく描かれているシーンだなという話でした。

【エンディング】

 ということで2回に渡って、グッドウィルハンティングをやってきましたが、とてもいい映画ですね。
 みんながそれぞれ悩みを抱えているなんて当たり前なのに、隣の芝生が青く見えそうになったら、みるのにちょうどいい映画かもしれません。
 ということで、前回はエリオットスミスさんの楽曲を、今回は音楽が持つ映画の内容の比重と会話のシーンとデートのシーンの対比についてみてきました。
 サブスクリプションでもグッドウィルハンティングをやっているので、好きな映画だったら聴いてみてください。
 それと映画ビッグフィッシュからも1曲に絞って解説をしているので、気になった方は聴いてみてください。
 
 そんなサブスクリプションでは、過去の特別エピソードが聴き放題で初月無料、月額300円で聴くことができます。
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 あと映画にみみったけでは、お便りも募集しています。
 info@eiganimimittake.comにてお便りお待ちしております。
 やってほしい映画とか、この回が好きだったなど、どしどしお待ちしております。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
 podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
 ではまた!

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