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#84【ジュラシック・ワールド】ep.2「アクション、パニック、アドベンチャーだけじゃないジュラシックワールド」

※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#84にあたる内容を再編集したものです。

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【ジュラシック・ワールドについて】

 2015年公開
 監督:コリン・トレヴォロウ
 音楽:マイケル・ジアッチーノ

登場人物

 オーウェン・グレイディ:
 パークの監視員。クレアの元恋人。
 
 クレア・ディアリング:
 パークの管理責任者。
 
 グレイ・ミッチェル:
 クレアの甥。ザックの弟。
 
 ザック・ミッチェル:
 クレアの甥。グレイの兄。
 
 サイモン・マスラニ。
 ジュラシックワールドのオーナー。
 
 ヴィック・ホスキンス:
 インジェン社の警備部門長。恐竜を兵器として使うことを目論む。

【前回の振り返り】

 ナンバリング作品の音楽家が違うという話と映画ジュラシックパークで演奏されていた楽曲がジュラシックワールドではどのように使われていたかをみてきました。
 過去作があるタイトルの音楽を担当することの多いマイケルジアッチーノさんが今作のジュラシックワールドの音楽を担当されることは至って素直な起用ですよね。
 たくさんのナンバリング作品の後続作を手掛けている、マイケルジアッチーノさんが担当するというのはとても安心・安全なんて話をしました。
 そして、ジュラシックパークのオマージュにも近いシーンで過去作の音楽が登場したり、ジュラシック感といいますか、あのテーマパークを象徴するようなシーンでジュラシックパークの楽曲は使われていました。
 ジュラシックパークで主に使われていた楽曲はこの2曲でした。
 一部ですがこうでしたね。
 (演奏)
 この楽曲はジュラシックパークでは恐竜の登場に合わせて演奏されていました。
 そして次はこの楽曲
 (演奏)
 この楽曲はジュラシックパークではいわゆるアクションアドベンチャーのメインテーマといった使われ方がされていました。
 この2曲がジュラシックワールドでは、さらにアレンジが加えられて演奏されていました。

【兄弟のテーマ】

 ということで、今回は兄弟のテーマについて少し掘り下げてみようと思います。
 その前置きとして、今回の主人公のおさらいと、兄弟の関係性をみていこうと思います。
 この映画は2つの主人公の視点から描かれています。
 1つはラプトルの調教師のオーウェンさんです。
 そしてもう1つはグレイくんとザックくんの兄弟ですね。
 この2組はクレアさんを中心に描かれますね。
 オーウェンさんはクレアさんと元々は恋仲であったような話も出てきますし共に行動します。
 そしてグレイくんとザックくんはクレアさんの甥ということで、クレアさんは映画の大半で行方不明になったこの2人を探しています。
 このグレイくんとザックくんは仲悪いわけではないのですが、少し見えている風景が違うようにみえます。
 グレイくんは弟でザックくんが兄なんですけれども、弟のグレイくんが恐竜大好きの恐竜オタクなんですね。
 それに対して兄のザックくんはナンパしてみたり、スマホいじったりとそこまで興味はなさそうで、どちらかというとグレイくんのお守りみたいな立ち位置で今回のジュラシックワールドに参加しているんですね。
 しかし弟思いの一面も見せたり、両親の離婚の問題でへこんでいるグレイくんを励ましたりとするわけです。
 ジュラシックパークでもハモンドさんの孫の弟ティモシーことティムくんと、姉アレクシスことレックスさんに少し立ち位置が似ていますよね。
 話を戻すと、ザックくんとグレイくんは映画冒頭から少しだけ近いような遠いような距離感で映画は進行していきます。
 そんなこの兄弟に対しての音楽というのが存在します。
 いくつかシーンを抜粋してみて、この音楽がどのようなシーンで使われているか、どのようなライトモチーフかをみていこうと思います。
 アップルミュージック ジュラシックワールド オリジナル モーションピクチャーサウンドトラック 2曲目に収録されている「ザ ファミリー ザット ストレイズ トゥギャザー」という楽曲でそのメロディが使われています。
 一部ですがこのようなメロディが演奏されています。
 (演奏)
 このメロディがさまざまなアレンジで演奏されています。

兄弟のテーマ シーン1

 まずはこの「ザ ファミリー ザット ストレイズ トゥギャザー」が演奏されている
 2:03
 ジュラシックワールドへと向かう前の家でのやりとりのシーンです。
 このシーンでは、まさにグレイくんとザックくんが初めて登場するシーンですね。
 この時点で、グレイくんの恐竜の模型や恐竜のスライドなどのおもちゃがたくさんある部屋が登場していて、ザックくんは彼女さんと別れの挨拶をしています。
 二人の性格や置かれている状況を表すシーンですね。

兄弟のテーマ シーン2

 次は少し飛んで、
 1:00:55
 インドミナスレックスから逃げる際に、滝から飛び降りてなんとか逃げ切るシーンです。
 逃げるには滝に飛び込むしかない状況なのですが、弟のグレイくんが怖がってなかなか飛び込めないんですね。
 しかしのっぴきならない状況になって結果飛び込んで助かったと安堵する時に演奏されます。

兄弟のテーマ シーン3

 次に
 1:12:08
 兄弟で壊れた車を直すシーンです。
 ザックくんは兄として優しく弟のグレイくんに接して、二人の見ている風景がどんどん近づいていきます。
 このようにして、性格の違う二人の兄弟の絆が深まっていく様子が、この楽曲が演奏されている時には描かれているんですね。
 決して仲が悪いわけではないのですが、どことなく距離を感じる冒頭の二人のやりとりから、インドミナスレックスに追いかけられることで、面倒見のいい兄と夢中になれる弟が互いに理解しあって、肩の凝りがほぐれていくような、そんなような人間模様が見えてきました。
 この映画はSFパニックアクションアドベンチャーといった作風ですが、非常に慎重な人間模様が至る所で垣間見ることができる作品でもあるということがわかりました。

【映画の見せどころ アクション味のあるミステリー】

 とはいったものの、実際映画の大半はアクション音楽が占めています。
 やはりチェイス、アクションがこの映画の醍醐味でもあります。
 しかし、そのチェイス・アクションと並ぶくらい演奏されているジャンルがあります。
 それはミステリーです。
 ここでのミステリーは謎解きのようなミステリーではなく、若干のアクション要素を含んだミステリーになります。
 ということで映画の見せどころ、アクション味のあるミステリーについてみていこうと思います。
 この映画でミステリアスな要素ってなんだったかなといった感じですが、それは恐竜を閉じ込めるための檻と敵組織の暗躍、少年たちの失踪で主に演奏されています。
 もうジュラシックシリーズでの檻はほとんど無意味ですもんね。
 破られるか、出し抜かれるか、なんか間違って入っちゃうか、なんかしら理由をつけて人間と恐竜が対峙するような状況にすぐ陥ります。
 この時に観客が感じるのは、危険を感じる恐怖ですよね。
 それと同時に、そんなまさかというどちらかわからない謎を残します。
 おおっぴらに目の前で恐竜が檻から飛び出すシーンは、頭を使って出てきたインドミナスレックスとヘリが墜落して出てきたプテラノドンとディモルフォドンの翼竜のドームだけですよね。
 ラプトルをインドミナスレックスの討伐に使った時は、連れ出していたので檻を破ったわけではないのですが、これらにはある共通点があります。
 インドミナスレックスは壁に傷があったので、逃げ出したと勘違いさせていたことから、檻が破られたのか、逃げ出したのかがはっきりしない状況を描いています。
 ラプトルは共闘してくれるのかがわからないように描かれています。
 しかし翼竜に関してのシーンは完全にアクション音楽なんですけどね。
 これはもう単純に大事故なので。
 このように、恐竜の考えが基本的にはなにをするかわからないのがこの映画のキモになっていて、その結果襲われたり、たまたま助けてくれたりするわけです。
 これがアクション要素のあるミステリーが演奏される一つの要因になっています。

アクション味のあるミステリー シーン1

 たとえば
 23:55
 事故で飼育員がラプトルの檻に落ちてしまった時、オーウェンさんが助けに入るシーンです。
 この時はアクションの要素がもちろん含まれます。
 それとラプトルがオーウェンさんのことなら攻撃しないかもしれないという謎も同時に起こります。
 これはオーウェンさんとラプトルには仲間意識が少しですが芽生えているという認識があって、もしかしたら攻撃してこないかもという緊張感と謎がミステリーの要素を含んでいます。
 まあ結果多少いうことを聞いてくれた感じはあるのですが、最終的にはめちゃくちゃ襲ってこようとするのですけどね。
 このようになにをしてくるかわからないのは、観客に恐怖を与えます。
 人間はわからないことに対して恐怖を覚える事をうまく利用した演出だからこそ、ミステリーの要素、もしくは少しホラーの要素を感じる音楽で、観客に更なる恐怖の演出として聴かせているわけですね。

アクション味のあるミステリー シーン2

 次にもう少しミステリーの要素が強いシーンです。
 50:18
 インドミナスレックスの開発をしたヘンリー・ウーさんとオーナーであるマスラニさんがインドミナスレックスについての話をするシーンです。
 この時にインドミナスレックスの特性について二人は話し合います。
 擬態性能はコウイカの遺伝子だったり、赤外線探知から逃れるのはアマガエルの遺伝子だったりが配合されていることにマスラニさんが驚きます。
 この時にマスラニさんはヘンリー・ウーさんにマッドな一面を垣間見るわけですね。
 なんでそんなとんでもない遺伝子操作をしたのかというと、マスラニさんからあっと驚く恐竜を作ってくれと言われたとヘンリー・ウーさんは主張します。
 ここはインドミナスレックスの特性の秘密が、遺伝子操作によるものだったことがミステリーの要素につながっていますね。

アクション味のあるミステリー シーン3

 そしてもうひとつが
 1:05:10
 子供達が乗っていたボールのような乗り物の残骸を見つけたシーンです。
 携帯電話から子供達が乗っていた事を推測します。
 クレアさんからすると、大切な親族が行方不明ということで気が気じゃないですね。
 そこにオーウェンさんが子供達の足跡を発見して、状況は進展します。
 ここは少し推理のような要素というか、観客目線では子供たちが助かったことは知っているのですが、オーウェンさんクレアさん目線では子供たちの現状がわからないので、心配とオーウェンさんの頼りになる感が伝わってきます。
 なので、観客と一緒に推理するわけではなく、オーウェンさんとクレアさんの関係や状況を示すためのミステリーとなっているので、ストレートなシーンではなく、状況を説明するためのミステリーとなるわけです。
 なのでヒーロー音楽やヴィラン音楽に少し似たような作りなのが、割と珍しいシーンですよね。

アクション味のあるミステリー シーン4

 最後に
 1:41:59
 オーウェンさんクレアさんザックくんグレイくんでラボに逃げ込んだ後のシーンです。
 なぜかみんなで悠長に生き物の入ったケースを眺め出すんですが、その時に特殊部隊的な人たちがなにやら胚というかDNA的な大切そうなものを回収していきます。
 それをみてなにしてるとなるのですが、そこにヴィックさんが登場します。
 誰だっけとなるので少し紹介すると、ラプトルを使ってインドミナスレックスを討伐しようとしていた、オーウェンさんとラプトルのやりとりをやたら真剣にみていた人ですね。
 この人がまあ裏でごちゃごちゃやっていたということもあって、ここではミステリーが演奏されています。
 この黒幕登場前のような演出でミステリーが演奏されることは多いのですが、ここも先ほどのオーウェンさんの推理のシーンに似ていて、このシーンの前にヘンリー・ウーさんとヴィックさんが副業だのなんだののやり取りのシーンが出てきます。
 なので、観客はこの状況を理解した上でのこのシーンになるわけです。

映画の見せどころ アクション味のあるミステリー まとめ

 ここまでを整理すると、ミステリーの要素はやはりそこまで重要視されているわけではないんですね。
 ですので、アクション要素を含んだミステリーという方向性が目立つ作りになっていたというわけです。
 映画としてもやはり見どころはアクションやチェイスがメインで、そこに状況の説明が絡むミステリーの要素というのが関わっていたというわけでした。

【エンディング】

 ということで今回は兄弟のテーマとミステリーの要素についてみていきました。
 兄弟のテーマもミステリーの要素もジュラシックパークにあった要素で、ある意味でオマージュのような構造になっていましたね。
 これはやはりリブート?作品一発目ということもあるんですかね。
 もとあった要素と今できる技術革新の両端を同時に見せることで、新しさともとあった良さを映画に閉じ込めたようなそんな作品でした。
 サブスクリプションでは「スーパーエイト」という作品から1曲、ジュラシックワールドからはジュラシックパークで使われていた楽曲がどのようなアレンジがされていたかをやろうと思います。
 次回は「スーパーマリオムービー」をやろうと思います。
 音楽はブライアンタイラーさんですね。
 このポッドキャストでは、共同制作ですがアベンジャーズ/エイジオブウルトロンがそうでしたね。
 かなりの話題作だったので、どうなるか楽しみですね。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
 podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
 ではまた!

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