これが怪獣映画の原点だ 『ゴジラ(1954年)』
■あらすじ
昭和29年(1954年)夏。小笠原諸島近海を航行していた2隻の貨物船が突然沈没。たまたま近くを通りかかった漁船が漂流していた数人の乗組員を救出するが、この船も港に戻る前に姿を消してしまう。
母港である大戸島にたどり着いた漁師の生き残りは、船が巨大な生き物に襲われたとつぶやいて意識を失った。その夜、島を襲った大嵐の中で何件かの民家が圧し潰されるが、生き残った少年は暴風雨の中に巨大な生物の姿を見た。
島を訪れた古生物学者の山根博士を含む調査団の一行は、壊滅状態になった集落に巨大な生物の足跡のようなくぼみを発見。その周囲は放射能の濃度が高く、足跡の中には生きた三葉虫も見つかった。
やはりこれは太古の巨大生物なのか。そんな中、火の見櫓の半鐘がけたたましく鳴りひびき、山の尾根を越えて多くの人々が避難してくる。巨大な生物が現れたのだ。それは村の古老が「ゴジラ」と呼んで恐れる、伝説の怪獣なのだろうか?
■感想・レビュー
あまりにも有名なので、ちゃんと観ていないのにすっかり観たつもりになってしまっている映画というものがある。映画のストーリーは全部知っているし、有名な場面も観ている。しかし映画全編を通しでしっかり観ているかというと、これがかなり怪しい……。
僕にとって1954年の映画『ゴジラ』はそんな作品だ。映画瓦版の過去記事を検索してもタイトルが出てこないから、少なくともここ30年ぐらいは観たことがないのだが、その前になるとちょっとわからない。香山滋の原作小説(香山の原案を映画脚本にしたあと、改めてそれをノベライズしたらしい)は大昔に読んでいるので、映画を観ないまま細部を小説版で補完しているのかもしれない。
というわけで映画はほぼ初見のつもりで観ているのだが、かなり面白く観ることができた。例えば映画序盤でゴジラによる被害を次々に見せながら、ゴジラ本体をなかなか登場させない演出は、その後モンスター映画で何度も繰り返される定番の演出になっている。
この演出を忠実になぞっているのが、スピルバーグの『ジョーズ』(1975)だ。日本版ゴジラの最新作『ゴジラ-1.0』(2023)は『ジョーズ』からの影響が指摘されているが、その『ジョーズ』のルーツは初代の『ゴジラ』だった。こういうことは過去に多くの人が指摘していることなのだろうが、それを改めて映画を観て確認できるのは楽しい。
この映画を観ていて強く感じるのは、作り手たちの「誰も観たことがない新しい映画を作るのだ!」という熱意。この映画が大ヒットしたことで日本ではその後山ほど「怪獣映画」が作られるのだが、それは作れば作るほどパターン化し、一定のフォーマットに収まっていく。しかし1作目の『ゴジラ』にはそれがない。
この映画の中には、その後の怪獣映画が取りこぼしてしまった無数の可能性の種がある。これは最初のオリジナルとして、唯一の輝きを放っている映画なのだ。
TOHOシネマズ日比谷(スクリーン10)にて
配給:東宝
1954年|1時間37分|日本|カラー
公式HP:
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt0047034/