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世紀の歴史メロドラマと四半世紀ぶりの再会 『タイタニック ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』

2月10日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 1996年の北大西洋。そこには80年以上前に沈没した豪華客船タイタニック号の船内を探索する、現代のトレジャーハンターたちがいた。

 彼らが探し求めているのは、「碧洋のハート」の異名を持つ巨大なブルーダイヤモンド。だが引き上げられた金庫にダイヤはなく、入っていたのはダイヤを身につけた若い女のヌードスケッチだけだった。

 このニュースを見たのが、101歳の老婆ローズ・カルバート。彼女は自分こそが絵のモデルだと名乗り、孫娘を連れて探索船に乗り込んでくる。彼女はそこで、84年前の自分の身に起きたタイタニック号遭難事故の真実について語り始める。

 1912年、イギリスのサウサンプトン港を出発したタイタニック号に、17歳のローズ・ブケイターの姿があった。彼女の出身は上流階級だが、家は没落し、家名と生活を守るために意に沿わぬ結婚を強いられている。ニューヨーク行きの豪華客船は、彼女にとって奴隷船も同然だった。

■感想・レビュー

 1997年に公開されたジェームズ・キャメロン監督・脚本作。僕はこの年に「映画批評家」と名乗って仕事をスタートさせたので、自分に取って人生の節目に観た映画として記憶に残っている。

 僕はこの映画を、初公開時に試写で観て、その後、劇場公開時にも再見している。当時は船体破壊のスペクタクルや阿鼻叫喚に啞然とし、悲恋メロドラマに涙しながら、物語自体にはあまり感心していなかったようだ。「映画瓦版」の古い記事を読み返すと、確かにそう書いてある。

 でも今回改めて25年ぶりに映画を観直して、印象はだいぶ変わった。この映画は、いろいろとよくできているのだ。むしろよくできすぎていて、それが古めかしい印象さえ与える。

 物語のテーマになっているのは、新しさと古さの対立であり、新しさが象徴する自由と古くさい規律の対立だ。ローズは映画の中で、二人の男から愛される。一人は新しさと自由を体現しているジャックであり、もう一人は古い家父長制的な規範のもとで生きるキャルだ。

 キャルも決して悪い男ではない。彼は彼なりの方法でローズを愛そうとしているし、事実愛していたのだろう。それは彼女の裏切りを知りながら、沈没しようとするタイタニックから命がけで彼女を救出しようとしたことからもわかる。

 それはローズやジャックの視点で見れば、諦めの悪い未練たらたらの執着心かもしれない。映画の終盤ではそれがダイヤに対する執着にすり替えられてしまうのだが、生と死が交錯する地獄のような世界で、彼が我が身の安全を二の次にしてローズのことを救い出そうとしたのは事実だ。

 こうしたキャルの誠実さや勇気は、タイタニック沈没後に「遭難者を助けに行こう」と呼びかけたモーリー・ブラウンに対して、人々が沈黙で答えたことと対比されているかもしれない。間一髪で難を逃れた人たちは、冷たい海の上で自分の家族を見殺しにする。善と悪、誠実と酷薄は、紙一重の場所にある。

(原題:Titanic)

TOHOシネマズ 日本橋にて 
配給:ディズニー 
2023年|3時間15分|アメリカ|カラー|シネマスコープ 
公式HP: https://www.20thcenturystudios.jp/movies/titanic-25th
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0120338/

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