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紛れもない作家の映画。つまり芸術です!  『シン・仮面ライダー』

3月18日(土)公開(一部劇場で17日に先行公開) 全国ロードショー

■あらすじ

 仮面ライダー・本郷猛は改造人間である。彼を改造したショッカーは、世界制覇を企む悪の秘密結社である。仮面ライダーは人間の自由のために、ショッカーと闘うのだ!

 本郷猛は優秀な学生だったが、ショッカーの秘密研究員だった恩師・緑川博士の手で、昆虫の能力を持った怪人バッタオーグに改造される。ショッカーを裏切った緑川は娘ルリ子と本郷をショッカーの基地から脱出させるが、後を追ってきたクモオーグによって緑川は殺される。

 クモオーグを倒した本郷は、続くコウモリオーグとの戦いを通してショッカーと戦うことを決意。不本意に改造されたバッタオーグとして生きるのではなく、自ら「仮面ライダー」としての名乗って戦いの中に身を投じていく。

 だがそんな仮面ライダーの前に、強力な敵が待ち受けていた。それはハチオーグに洗脳された一般市民たちだ。仮面ライダーはショッカーの戦闘員は倒せても、一般人を巻き込むことはできなかった……。

■感想・レビュー

 1971年から放送された「仮面ライダー」のリブート作品。監督・脚本は庵野秀明で、映画は仮面ライダー1号の登場から、2号へのバトンタッチまでを描いている。

 ショッカーの目的を「世界制覇」や「世界征服」にしなかったのは、今この時代にライダーを作るにあたってのリアリズムの問題。オーグがうんたら、プラーナがかんたらという話は物語を成立させるための屁理屈だから、この部分についてあれこれ論じてもあまり意味がない。

 とはいえショッカーの目的が「人類の幸福のため」というのは今日的だろうし、ショッカーが人間のプラーナを奪って別空間に送り込むという設定は、何やら人類補完計画めいたニオイもするのだ。

 いろいろな点で、これは作り手の意図や狙いが前面に出た作家の映画だと思う。『シン・仮面ライダー』に似ている映画があるとすれば、それはゴダールの映画ではないだろうか。僕はそれほど熱心にゴダール作品を観ているわけではないが、ゴダールの映画と庵野秀明作品には、どこか相通じる感触があるように思う。

 映画前半は「悩める本郷猛」の映画だが、後半で「調子のいい一文字隼人」が出てきてからドラマがヒートアップしていく。前半は本郷が他人に引っ張られていく話なのだ。不本意に戦いに駆り出され、悩み苦しみ、迷いに迷いながら、彼は戦いを続けて行く。これがギアチェンジするのは一文字との戦いが終わり、ルリ子が退場してからだ。一文字を演じた柄本佑がいい。この映画以前に一体誰が、柄本佑が仮面ライダーに合うと考えただろう。この組み合わせの絶妙さ。

 柄本佑のはまりっぷりに比べると、池松壮亮の本郷にあまりしっくり来ていないと思う。池松本郷からは優しさは感じても、強さは感じられない。もっともこの映画は、身の丈に合わない、自分に似つかわしくない力を与えられてしまった男の苦悩を描いているわけだから、その点では池松壮亮でもいいのかもしれないが……。

丸の内TOEI(スクリーン1)にて 
配給:東映 
2023年|2時間1分|日本|カラー 
公式HP:https://www.shin-kamen-rider.jp
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt14379088/

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