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往復書簡・映画館の話をしよう「旅先の映画館②」(山口雅)

「旅先の映画館」、素敵な思い出のお話、ありがとうございます!
大浦さんが初めて一人で遠出して目指した映画館は伊勢進富座だったんですね。いつか私も行ってみたいです。

旅先の映画館の話は私もたくさんあるのですが、さて、どの話を書こうか…。あれもこれも話したいですが、今回はあんまり人が行ってない映画館のことを書いてみようかと。
ウラジオストクにある映画館のことをお話しますね。笑

ウラジオストク、ご存じですか。ロシアの端っこにある街です。
一人旅で訪れたのはコロナ直前、2020年2月。たった4年前だとは信じられないほどいろんなことが起き、簡単に行ける場所ではなくなってしまいました。せめて雰囲気だけでも伝わるよう、今回は写真多めでいってみます。

小さな港町、ウラジオストク
丘の上にあるオケアン映画館
『ハーレイ・クイン』がイチオシ。下左は『パラサイト』

海に面した丘の上にある、ウラジオストク最大のシネコン。IMAXもあるらしい。日本では公開前だった『ハーレイ・クイン』が大看板でした。
いずれも全編ロシア語吹き替え、全く分かりません。すでに観ていた『パラサイト』なら分かるかなと思いましたが、遅い時間に着いたので都合が合わず、中には入ったものの結局映画は観てません。
時間スケジュールもロシア語表記のみです。ポスターにあるタイトルと照合して識別するしかない。
ロシアの映画チラシはすべて可愛い手のひらサイズです。

チラシが全部小っちゃい! 裏面は白
劇場前には世界の映画人の手形。桃井かおりを発見

映画鑑賞は、別の映画館でチャレンジしました。
街なかの小さな映画館を見つけて入り、「すぐ始まる映画を観たい」と身振り手振りでスタッフさんに伝えると、英語ができる支配人っぽい人が出てきて対応してくれました。私は英語もできないのですが、コメディ、恋愛、何がいい?とポスターをひとつずつ指しながら聞いてくれました。
時間を優先して選んでもらったのは『ソニック』。ジム・キャリーが極悪科学者のやつね。

どうみても映画館なので入ります
『ソニック』もまだ日本では公開前でした

よかった、チケットが買えた。と安堵したのもつかの間、いざ入場という頃になって突然ジリリリリリと非常ベルが館内に鳴り響き、全員が外へ出されました。何が起きてるのか分からないまま、私も外へ。このまま映画を見られないのか?…と心配しましたが、その後再びゾロゾロと並んで中に入り、無事に着席。ロシア人は誰も騒がず文句も言わず、よく分かりませんが誤作動だったようです。

右が映画チケット
フードコーナー。ポップコーンとコーラは定番

立派なデラックスシートが50席ほど。ちなみに入場料は500円もしません。
私の前の席には子どもとおじいちゃんが座り、ポップコーンを食べてます。上映前になんと日本映画特集の予告編が。『こんな夜更けにバナナかよ』『ダンスウィズミー』なんかが流れました。思わぬ再会です。外国の小さな映画館で日本映画がかかるという光景になんだか胸が熱くなりました。大泉洋はこの事実を知っているだろうか。
『ソニック』はやはりロシア語吹き替えでしたが、ストーリーも難しくなく、おじいちゃんと子どもは大声でおしゃべりしながらゲラゲラ笑っていたのも印象的。スマホをスクリーンに向けるおじさんも普通にいました。

駅前のレーニン銅像
ウラジオストク駅

現在のロシア情勢はご承知のとおり。ウラジオストクにも渡航できません。
小さな映画館はどうなっただろう。支配人はどうしてるだろう。彼らは今、何を考え、何を思って、時を過ごしてるだろうか。
現在のロシアのことを考える時、自分が出会った一人一人のロシアの人たちを浮かべることができ、行っておいてよかったなと改めて思います。
旅先の映画館は、出会った人も含めて映画のよう。
思い出すと楽しくも、悲しくもあります。

映画館にいたチャップリン


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