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LE OTTO MONTAGNE / 帰れない山(2023年5月5日劇場公開)

映画の中の世界観が映画館に染み出してくるような感覚を覚えた作品。


原作があります。パオロ・コニェッティ作、関口英子さんの訳で『帰れない山』というタイトルです。読んだ知人に聞くととても良い原作ということです。その知人は映画も原作と同じくらい良かったと評価しています。

日本版ティーザーポスターは杉山 巧氏の描き下ろしを新潮社装幀室飯田紀子氏が装丁した原作本と同じデザインです。モンテ・ローザ山麓の暖かさが伝わります。

映画版は先日イタリアで発表されたダヴィデ・ディ・ドナテッロ賞(イタリアのアカデミー賞)で最優秀作品賞の他、撮影賞、脚色賞、音響賞の4部門を受賞しました。

147分と尺もたっぷりですが、世界観に浸るには必要な時間です。第75回カンヌ映画祭でも審査員賞を受賞しています。

基本的に山を舞台にしたピエトロ(ルカ・マリネッリ)とブルーノ(アレッサンドロ・ボルギ)の友情を描いていますが、人生に誰しも起こる出来事以外、劇的なことは一切起こりません。それでも目が離せなくなる不思議な魅力を持った映画。

その理由は、そこにありのままの山が映っているからとしか言いようがありません。画面もあえてスタンダードサイズであえて劇的に物語を描いていません。その演出方法が人生を見つめるという作品テーマにピッタリです。

原題の『八つの山』とは何かは劇中にピエトロによって語られます。そのことの意味を捉えて『帰れない山』という邦題にしたのは見事な選択でした。


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