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“映人仲間”第八回『瀧井新三郎役 ジャン・裕一さん』

映画『初めての女』の原作『俳人仲間』(新潮社)になぞらえて、本作の監督・小平哲兵が撮影当時のキャスト陣とスタッフ陣を振り返ります。



父と言っても過言ではない

8回目の今回は、中田さん(ジャン・裕一さんのこと)について振り返っていきたいと思います。

私と中田さんの関係は俳優の中では、一番長く濃い、私の初作品からの付き合いだ。

企画を考えてる時も脚本の執筆中も、日常のふとした瞬間でも演技に関連する事を考えてる時に、頭に浮かぶ俳優の一人が中田裕一で、私の作品づくりの基礎の一つだ。

そして、映画をやっていく上での小平哲兵にとって、父と言っても過言ではない。

もちろん、二人の関係は常に晴れてるわけではなく、曇天もあれば、雨の日だって……時には嵐もある。


やっぱり家族だから

でも、いや……だから父なのかもしれない。
今回の「初めての女」でも、そんな中田さんに父・新三郎を演じて貰った。

実際の瀧井孝作は、父・新三郎と仲が宜しくなかったらしい。

だから、作品ではラストのどうしようもなくなった孝作に対し、
救いになるのは父・新三郎にしたかった。

理由を並べれば様々あるが、一つだけだ。

「やっぱり家族だから」だ。

それが私の孝作へのわがままな願いだ。
そして、それを中田さんが演じきることで叶えてくれた。

最後に孝作を救うのは
父の新三郎


エスパー……?

ところで、中田さんはエスパー的でもある。

それは、なかなか上手くいかないシーンの撮影中。
場面は、襖の向こう側にいる中田さん(彼の出番でないシーン)
現場を全く見聞き出来ない状態である。

私が心の中で“あ、OKが近いぞ”と思い、襖の向こう側に行くと……

中田さん「哲兵、そろそろ(OK)か?」
と、ニヤリ
私「え……何でわかったんすか?」
中田「襖から感じた」

なんてことが多々ある。


心の感度をググっと上げてる人

私が思うに中田裕一という人は、理屈よりも心の感度をググっと上げてる人だ。

だから、此方も負けじとググっとして話すべき人だ。
心で話すことが出来る人だからか、彼との時間は瞬く間に過ぎていってしまう。

少し切ない気もするけど素敵な時間だ。
9歳で父親を亡くした私にとっては、
映画での父親・中田裕一は、ろくでもないと思う時もあるし、

理解不能な時も、疲れる事もあるけど……
それも「やっぱり家族だから」だ。

ありがとう。



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#瀧井孝作 #俳人仲間

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