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No.305インタビュー ~「ポンバシスカム」とネットレーベルUGU/AUUについて~


 
「ポンバシスカム」を奏でるミュージシャンNo.305が2017年9月17日(日)、中野アニソンBar雷神にて東京公演を行う。それに際して、No.305に簡単ながらメールにてインタビューを行った。

 2000年代中ごろより活動を開始したNo.305には、2つの功績があると考えている。一つは、趣味であるアニメ・ゲームetc.のネタを積極的にスカムミュージックに取り入れ、フレッシュなエクストリーム音楽を聴かせてみせた点。もう一つは、ネットレーベルが流行した2000年代にスカムレーベル「UGU/AUU」を立ち上げ(現在は閉鎖)、国内海外問わず様々なオタク/過激派アーティストの音源を配信した点である(筆者も、当時隆盛していたMyspaceにてNo.305の音源を聴いて衝撃を受け、UGUにて「わたしのココ」や「Princess Army Wedding Combat」を聴いてまた衝撃を受けた訳である)。今回は、No.305の「ポンバシスカム」の成り立ちについて、また「UGU/AUU」運営当時の思い出について語って頂いた。


【「ポンバシスカム」について】

〇No.305さんの、スカムミュージックとの出会いを教えて頂けますか?

 十数年前、アルバムのレビューサイトを巡回するのが好きで、そこで『ほぶらきん』というバンドを知りました。
 試聴してみると、まるで小学生のような演奏に、パンクな叫び声、本当にどうでもいい歌詞、しかし頭にこびりつく曲に、頭に電流が走ったかのようでした。
 ほぶらきんはスカムという言葉がある時代のバンドではないのですが、現在はそちらへカテゴライズされることもありますので、これがスカムとの出会いとさせていただきます。


〇No.305さんの、アニメやゲームに対する出会いと、趣味の深まりについて教えて頂けますか?

 初めてハマったのはゲームです。叔父の家にファミコンが置いてあったのですが、かなり大人向けのソフトばかり揃っていて、「たけしの挑戦状」「松本亨の株式必勝学」「プレジデントの選択」「将軍」などのシミュレーションが性に合っていたようで、よく意味もわからずも楽しくプレイしていました。カルトな物好きは、すでにこの頃自然と植え付けられたかのように思います…。
 アニメ・漫画については最初らんま1/2がとても好きでした。ただ他のアニメに関しては、夕方にご飯を食べながら見るくらいで、そこまで没頭はしていませんでした。
 小6の時のぷよぷよ通との出会いから、アニメ・ゲームへの繋がりが深まりだしました。たくさんのキャラクターの中から「のみ」が大好きになってしまい、そのタイミングに大阪日本橋で出張ぷよまん本舗がやっていて、先述の叔父にねだり、ぷよまんを買ったり、コンパイルクラブを持って帰って読んでいくうちに、さらにその世界へとハマっていきました。オタクの自覚もこの頃からです。
 二次元の女性キャラに大ハマリしたのは、ときめきメモリアルが最初です。
 中学生の頃、同じぷよぷよファンのクラスメイトにときメモを紹介され、プレイすると二次元キャラの良さを初めて実感しました。
 そしてチルコポルト茶屋町店に「ときメモコーナー」があると知って、毎週通い、そこで交流した年上の仲間にオタクの教養をたくさん吸収しました。この経験が趣味の根っこにあります。


〇アニメでスカムをやる「ポンバシスカム」は、いつ頃、どのような経緯で思いつきましたか?

 最初にお伝えしたいのが、ポンバシスカムはNo.305のアニメネタの曲を指す意味ではなく、僕の作る曲全てがポンバシスカムである、ということを知っていただきたいです。
 アニメネタに限ると、元々ビートマニア経由でテクノも聴いていて、その中でもナードコア、特にSHARPNELをよく聴いていました。
 そこで音楽活動を始めるにあたり、作曲をしましたが、SHARPNELや、アニメを使う他のナードコアアーティストのおかげもあり、アニメをテーマにした楽曲もすんなりと作れました。
 初めてのライブでは、アニメネタも他の歌詞も歌うごちゃまぜのスタイルでしたが、活動初期に一番出たいと希望していたイベントの舞台に立った時、アニメの歌詞の評判が特によく、自分もアニメや萌えについて自信を持っていたので、そのような楽曲を中心に活動することになりました。
 現在はまた混ぜこぜになり、原点回帰のようなスタイルを取っています。
 結局思いついたというよりは、自然とそうなった、という具合です。


〇「ポンバシスカム」とは、No.305さんの実生活に基づいた魂の叫びに近いもの、という認識でよいのでしょうか?

 実生活に基づくと言うよりは、305の精神から自然と生まれた楽曲といえます。例えば普段全く関係のない意味不明のキーワードを歌うこともありますし、それこそ好きなキャラや音楽、小説から産まれたりもします。


〇「ポンバシスカム」の確立は、すぐに上手くいったのでしょうか?

 自分のやっていることには最初から自信を持っていたので、どうなろうとやめようとは思いませんでしたし、最初から確立していたとも言えるでしょう。
 しばらくアニメを見ない時期があり、そんなことでアニメネタをやってもいいのかみたいな葛藤もありまして、その時は揺らぎましたが。


〇「ポンバシスカム」をやることで、No.305さんに何か精神的な効用みたいなものはありますか?スカムをやることに、またアニメやゲームについて叫ぶ事に、特別な気持ちよさはあるでしょうか?

 まず舞台で叫んで暴れると、単純に血液の流れが良くなったり、運動になったり気持ちいいです。精神的な病を持っていますが、ライブ後はすっかり気分が良くなっていたりします。
 スカムの気持ちよさとなると、周りから「浮く」というのが、存在感を表せて快感だという感情があります。
 アニメゲームに関して言えば、わかるひとだけわかるネタと言った物が昔から好きでして、例えばオタクの雰囲気もないような現場で、一部の人が実は元ネタを知っていてウケてくれるというのはとても楽しいです。最近はオタクを隠す風潮も減ってきましたけどね。


【ネットレーベルUGU/AUUについて】

〇ネットレーベルUGU/AUUを立ち上げようと思ったのは、いつ頃、どのような理由ででしょうか?

 ネットレーベルが流行しだした頃から、ThinnerやMonotonic、sutemosのような場所の曲を聴いていました。その後Myspace上でもグラインドコア等のネットレーベルも出てきだして、じゃあスカムもやってみようじゃないか?と言うことで始めました。ネットレーベル以前からもMuzieやBesonic、Mp3.com などのサイトで無料音源を探すのが好きでしたので、無料でスカムが聴けたら最高じゃないか、といった考えもありました。


〇設立当時の、ネット上におけるアニメ/ゲーム×エクストリーム音楽のシーンがどのようなものだったか、No.305さんが感じていた範囲内で教えて頂けますか?

 あのような音楽はMyspaceでの活動が中心になっていたと思います。とりあえずアニメアイコンやアニメネタを使っているアーティストは全員フォローしちゃう空気が出来上がっていて、その中でもデジタルグラインド、ノイズ、ブレイクコア、J-COREの人達が多かったです。
 正統派J-COREの人が、他の激しいアーティストに影響を受けて、別ユニットでブレイクコアやノイズをリリースということもありました。
 あとグラインドやってた人が、急に305の真似のような歌を発表したり…。ボーダーレスで刺激しあってましたね。


〇海外のアーティスト(例えばprincess army wedding combat等)とはどのように知り合いましたか?

 それもMyspaceのおかげです。プリンセスアーミーさんはノイズを聴いている所でこちらが存在を知って、後にMyspaceで会話をはじめました。あとメッセンジャーで翻訳サイトを使いながら会話したり、住所を教えあってアルバムの交換もしました。


〇最終的に何作程度の音源をリリースしましたか?

 今見たらUGU006、UGUnet59まで出てました。AUUは35作です。


〇運営していった上での思い出などを教えて頂けないでしょうか?

 精神的な不安定が強い時期でもあったので作品解説を書くのが、調子いい時は書けるんですけれど、駄目な時がとてつもなくしんどいってのが、まず思い浮かびました…。
 あとはどうしてもリリースしたいアーティストさんの連絡先がわからなかったので、ブログのコメント欄に突貫したこともありました。若いですね!


〇他のアーティストとの交流において、何か思い出などありましたら教えて頂けないでしょうか?

 一番覚えているのが、UGU企画です。1~2週間前にやることが決まったはずで、客足はさっぱりでしたが、東京からもゲストを何人か呼んで今思い返すと凄く豪華なイベントでした。「橘芽衣子誕生日パーティー」で検索してもらえれば情報が残っています。


〇UGU/AUU作品で、名盤を5作選べと言われるとどれを選びますか?(5作じゃなくても構いません)

[UGUnet010] NELVOROTH/雑音体操
[UGUnet035] わたしのココ/わたしのココ
[UGUnet046] UFO County/徒花/酩宴/賞翫
[AUU001] 宇宙人/Demo
[AUU002] 無呼吸WowWow/教え
この5つに絞りました!


【現在のアニメ/ゲーム×エクストリーム音楽について】

〇UGU/AUUを閉鎖したのはいつ頃でしょうか?また理由は何でしょうか?(ざっくりとで構いません)

 閉鎖したのは2011年頃と思われます。まず、直リンク可能のアップローダーサイトを使っていたのですが、そこが死んでしまった事。前述の解説を書くのがしんどくなってしまった。同じく精神的に運営が辛くなってきた、という理由からです。


〇UGU/AUUが閉鎖してから幾年かが立ちましたが、当時と今で、アニメ/ゲーム×エクストリーム音楽のシーンに何か違いを感じることはありますか?

 なにか自分の中では感じてる部分あるんですけれど、どうも上手くまとまらないです。また考えます。


〇最近のポンバシスカム的アーティスト、もしくはアニメ/ゲーム×エクストリーム音楽のアーティストの中で、「この人はイケてる」と思った方を教えて頂けますか?

 キュア尿道院。アニメ世界とローファイロックの融合。次世代の二次元音楽家といえばこの人だと思っています。
 ヒミツの錯乱棒。抱き枕やエロマンガが飛び交い、ちんことアナルも拝めるハードコアバンドです。


〇No.305さんの今後の野望を教えてください。

 305の葬式の際、お世話になった人全員に出演してもらう企画をすることです。遺書にでも書いておきますので、お楽しみに!



《ロレックスレコーズpresents vol.4 ~アニメスーサイド~》
2017.9.17(日) 中野アニソンBAR雷神
Start 16:40  \2,000
出演:
No.305 / GRIND-d.c.p.s. / TxMxE / Scum of Prism / Eifonen / プリキュアおじさん / はるのおと / にしぞの


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