三田三郎『鬼と踊る』歌集評②~「人生」から「人生(Part2)」までを読む(文・クサナギ)
泥酔と日常の反復横跳び文: クサナギ
「鬼と踊る」を通読して、目を引かれるのはやはり飲酒をテーマとした連作群だろう。私も酒飲みだと自負しているのだが、それにしても「酒」というテーマ詠でここまで歌をつくれるものかと感嘆してしまった。
例えばこの歌は、一首単体で読むとお酒の歌とはわからない。上の句を贅沢に使って口の中の感覚に焦点を当てていて、官能的な感じさえ受ける歌だ。だがその前の歌と合わせて読むと、お酒にのめり込んで咀嚼すらめんどくさくなったような主体の姿が浮かび上がってく