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『見えないものを見る』

『見えないものを見る』。この言葉は、今から15年程前、私が研修会社在籍時に、講師として来て頂いた某テレビ局のプロデューサーの方が、講義の中で語った言葉です。

その研修は、幹部候補生研修で、講師の方は、自身が制作した番組を幾つか紹介しながら、共通のテーマとして、この『見えないものを見る』ことの大切さを訴えられたのでした。

その講義の中でも、私が特に印象に残っているのは、講義の序盤に紹介された、あるドキュメンタリー番組の冒頭のシーンです。

その番組の映像は、1970年に開催された大阪万博後の撤去シーンから始まります。

華やかに開催された大阪万博。私は当時4歳で、姉が会場で迷子になったことを微かな記憶として覚えています。

その施設が、そこで華々しく万博が開催されたことが嘘であったかのように、無残に撤去されていく映像に私は、ハンマーで後頭部を強打されたような衝撃を覚えました。

戦後の高度経済成長の象徴であった大阪万博も、用が済めば、壊されていく。。。そのはかなさというか、虚しさを強く感じました。

そして、講義の終盤に語られた『見えないものを見る』という言葉の持つ意味を、その映像を通して、講義後に理解したのでした。

更には、講義の中で、海洋漂流物で制作した、いわゆる『漂流物アート』を紹介する番組も出て来ました。

長い旅の果てに海岸に打ち寄せられる漂流物。そこには、現代社会が抱える『大量生産、大量消費』が生み出した歪みが表れています。

その漂流物で作ったアート作品を観ることを通して、私たちは、その作品の裏にある何かを感じ取る必要があるのではないか。。。まさに『見えないものを見る』大切さが、その映像には表現されていたのでした。

私たちは、とかく、世の中を表面的にしか見ず、それだけで全てを理解したような錯覚に陥りやすくなります。

マスコミが報道するニュースは、よくよく見聞きしてみると、ある方向に偏重していることもしばしばです。

世界的な感染症まん延、特定地域での紛争等が発生し、その情報が毎日流されている現況では、なおさら、その傾向は強いと言えます。

だからこそ、今、私たちに求められているのは、目の前に見えているものの裏にある『見えないものを見る』意識、換言すれば、批判的精神を常に持ち合わせることだと感じています。

「その裏には何があるのか。。。」このメッセージを常に自分自身に突き付けることが、今、私たちに求められているのです。

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