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怒りの感情が抑えられないという人に読んでほしい絵本 |『ムカムカ ドッカーン!』を紹介します。

絵本紹介士のkokoroです。幼い頃から読書が好きで、大学は児童文学科で学びました。同時に、心のこと、スピリチュアルなことにも、とても関心を持っています。このnoteでは、そういう観点から心惹かれる絵本を選び、お話の中の気付きやメッセージを読み解いています。


その絵本を紹介することで、どういうところが心がラクになるのかなどを伝え、そして実際に読んでもらって、落ち込んでいる人や辛い気持ちにいる人が、心がラクになったり、元気や勇気を出してもらえることを目指しています。


1・絵本のテーマ・アンガーマネージメントとは

このお話は「アンガーマネジメント」をテーマにしています。
このことについては、絵本の巻末で説明されています。

アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれた怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。今では世界的に老若男女問わずに取り組まれています

『ムカムカ  ドッカーン!』(作:ミレイユ・ダランセ 訳者:ふしみ みさを パイ インターナショナル より引用)

つまり、「怒り」がテーマの絵本なのです。

2・この絵本をおすすめする訳

この絵本はその「怒り」が大きな赤い怪物となって視覚化されているということ。こんなに恐ろしい姿なんだと子どもにまで一目でわかることです。

なんでもない、誰にでもある日常の中にふっと自分の中の「怒り」に火が点いてしまう。
それがこの絵本の上に上手く表されているところが共感を呼ぶところではないでしょうか。

可愛い男の子、ロベール君の中にもその火種はある。それに火が点いてしまったら、抑えがきかない、その様子が克明にそして可愛い絵本の上に描かれていることが誰にでも理解できておすすめできる点です。

3・絵本のストーリー

このお話はロベール君という男の子が不機嫌なままで(不機嫌にさせる出来事があったように推測される)学校から家に帰ってきたところからはじまります。

そして夕ご飯が(多分苦手な)ほうれんそうのソテーだったため、ロベール君の心の「怒り」の導火線に火が点いてしまいました。

自分の部屋に入ったロベール君はお腹の中のかたまりが大きくなっていくのを感じました。
そしてそのかたまりは口から飛び出したのです。

その赤い大きな怪物みたいなものはベッドのふとんやテーブルや本棚をめちゃくちゃにしました。

とうとう、ロベール君の大切なおもちゃ箱もひっくり返してしまう。

ロベール君は必死に止め、その怪物にはあっちへ行けと言いました。

そして、ぐちゃぐちゃになった部屋のものを片付ける。

そうしているうちにその怪物はとても小さくなり、ロベール君はその小さくなった怪物を箱の中に入れました。

ロベール君の怒りは消え、機嫌が直りました。

4・この絵本が伝えたいメッセージ

この絵本は「怒り」を視覚化し、それが大きくなるとどういうことを引き起こすかを見せることをしています。

「怒り」をそのまま行動に表せば、物を壊したりしてしまう。

その前に、その「怒り」を少しでも客観的に見ることができたら、感情のままにふるまうことはなくなるだろう。後で本人が後悔するようなことにはならない、といったことを伝えています。

このことは大人でもとても難しいこと。この絵本では、それを子供でも大人でも誰でも読めて、易しく表されている。だからこそ、ストレートに伝わるのです。

5・この絵本から惹かれたこと~自分の経験から~

私は小さい頃から自分の思いをあまりストレートに人に言わないようにしていました。
自分の気持ちよりも「こうすべき」ということに従ってものを言ったり、行動していたように思います。

カッとなる怒りの気持ちが沸いてきてもできるだけ、抑えるようにしていた。なかったことに。

大人になり、子供ができて、その感情を心のままに表す姿を見るにつけ(当たり前ですよね、子供なのだから)「なぜ、こどもは好きなことを言ったり、したりできるの?」という驚き、そして少しの嫉妬が沸いてきました。

そして、仕事、育児、家事など色んなことをいっぺんにしなくてはいけない状態で、完璧主義でもあり、また「私のことなんて誰もわかってくれない」という被害者意識や、抑圧されていた気持ちもあり、それが「怒り」に向かってしまいました。
ちょっとしたことで、大きな声で子供に怒ってしまったり、夫にもイライラの感情がストレートに伝わっていました。


自分でもよくないと思い、そのことに関する本を読んだりしていましたが、なかなか抑えられず、自分では抑えていたつもりでも、家族からは「また怒っていたよ」と言われることもよくありました。

この絵本のロベール君の場合と私の場合は、少し違いますが、その「怒り」の感情へのとらえ方はすごく共感できて、絵本を見ていると身につまされるところがありました。

私の場合、あの時どうしたらよかったか。
今思うと、カウンセリングに行ったり、自分の生活の中で無理をしているところは辞めたり、心を穏やかにできることが、何かもっとあったように思います。

家族には申し訳ないことをしました。

今はほとんど怒ることはありません。怒りを感じても、それをストレートに表すこともありません。(いや、そうとも言い切れないかも(笑)たま~にそれが少し出てくることがまだあります)
まあ、でも以前のことを思うと、各段に少なくなりました。それは長い時間をかけて、心のことを勉強し、カウンセリングを受け、色んな経験をしてきた結果だと思います。
言いたいことは言葉にし、伝える必要があるときはそれができるようになってきました。

怒りがついつい沸いてきて、抑えられないという原因は人それぞれだと思います。私のように被害者意識をもっていたり、抑圧されていると思い込んでいたり。
ロベール君のように、まだ子供なら、自分の気持ちをまだまだコントロールできないでしょう。(大人でもできない人はたくさんいると思いますが。かつての私のように)

この絵本ではその原因まで探っていません。
そして、怒りを目の前にし、ものを壊すことを見たことで、ロベール君の怒りは収まります。

ここのところ、急になぜ収まるのか。ちょっと拍子抜けする人もいるかもしれません。
私も正直、ちょっとびっくりしました。

でもこの絵本の中では、「怒り」というものを可視化し、それがどういう状態を引き起こすかということを目の前でみることだけでも「怒り」は収まる。

まずその一歩として見せてくれているのだと理解しました。

大人の「怒り」はもっと根深いかもしれない。子どもの頃からの思考、抑圧、そういうものがあるのかもしれない。

でも、「怒り」を自分から離して見ることで、そんなに「怒る」必要があるのか、自問自答できる。

どうして「怒って」しまうのか、自分の心をじっと見つめてみる。

そういう次の段階に行けます。

一人ひとりなぜ怒りを覚えるのか、抑えられないのか、その背景・原因は違います。それを自分で考えることが大切だと思います。もし、見つめるのがひとりでは怖い・わからないと感じるようだったら、専門のカウンセリングを受けることをお薦めします。

そして、その怒りをどうしたら緩和できるのか、どうしたら抑えられるのか、その方法を考えてみてください。その時、大切なことは決して、自分を責めないこと。自分を責めると考えることすら嫌になります。

怒ってしまう行為自体は褒められたことではないが、そうなってしまう裏側にきっと理由はあるはず。そこを丁寧に見てほしい。

絵本の最後の方でロベール君が小さくなった「怒り」を箱にしまう箇所があります。

完全に消滅するのではなく、小さくなってそこにいる、それを箱にしまう。
それを自分の感情をなかったことにするのではなく、自分の「怒り」も大切な自分の感情として扱うところになんだか、心がやすらぎました。

そういうところも注目して読んでもらいたいです。

5・まとめ

今でも何かわからないけど「怒り」が沸いてくる、抑えられないという人はこの絵本を読んでみてください。きっと、怒りの裏にある感情に気づくことができるはず。
そして、この絵本をそのきっかけにしてみてほしいです。

この絵本はフランスの小学校では必ず置かれている本だそうです。
私はそれを聞いて、子どものころから、「怒り」という感情に対して学ぶ、考えてみるという教育はすばらしいと感じました。子どもの頃から、自分の感情について注意したり、考えたり、丁寧に扱えるようになると、生きていくのがずいぶんラクになりますね。

この絵本、ぜひ、読んでみてください。おすすめです。

<作者について>

ミレイユ・ダランセ・・・フランス出身。教職も経験し、現在は絵本を創作している。三人の子供や読者を大切に、自分の絵本の読み聞かせなどもしている。



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