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やなせたかしの絵本は現代に無い背景から作られた!アンパンマン以外の作品を紹介します【コテンラジオ 】

感動すると大評判だったコテンラジオのやなせたかし回。私も楽しみにしていて、先日まとめて聴きました。
やなせさんの前知識としては、アンパンマンがヒットしたのは彼がだいぶおじいちゃんになってから、ということくらいしか知らなかったので、新鮮な気持ちで彼の人生を知ることができました。

そのお話の中で印象的だったことがたくさんありました。

例えば、やなせさんが幼いころに両親とそれぞれ離ればなれになる事情があり、弟とおじさんの家に暮らしていたことや、高校生のころは銀ブラ(※銀座をぶらぶら)して当時の最先端カルチャーを吸収しまくっていたこと。

他にも、戦争に召集されたのちに中国に配属されプロパガンダの絵を描かされていたことや、飢えを体験したからこそアンパンマンが生まれたということ…。

放送を聴いて感化され、さっそくやなせたかしさんの絵本をいろいろ読んでみました。

図書館でたくさん借りてきました


やなせさんの作品は原作のアンパンマンシリーズだけはいっとき読んでいました。少し暗い雰囲気でアニメとは違う面白さがあるなぁと思っていたのですが、今回ヤンヤンさんがいくつか紹介して下さっていたので他の作品も早速読んでみました。


チリンのすず

生まれたばかりの子羊、チリン。ある日狼のウォーが牧場を襲い、母羊が死んでしまいます。チリンは強くなるために狼のウォーに弟子入りすることに。成長しけだものとなったチリンは、ついに復讐を果たしますが…。

出版社による説明

普段選ぶような絵本では味わえないような読後感でした。「羊の皮を被った劇画」といった印象です。

この作品では、ちいさな子羊チリンの復讐劇が描かれています。狼ウォーと長い年月を過ごし、やがて復讐を果たしても、チリンに残った感情が物悲しいのです。
感受性豊かな6歳次女は泣いていました。

そもそも今どきの絵本は昔話などのジャンルか、戦争や老衰・病気による死別など特別なテーマがない限り「死」が描かれることはほとんどありません。

私が思うに、「戦禍に巻き込まれては無い」という意味では平和を享受している日本の平成から令和においては、絵本の中で登場人物を死なせることは「取り扱い注意」なのです。
このチリンの鈴を読んで、戦争を体験したやなせさんだからこそ描けるリアルな死の話だと感じました。

ちなみに、呪術廻戦や鬼滅の刃などで死の描写に免疫のあるアニメ好きの小4長女は「おもしろかったー!」とあっけらかんとしていました。それはそれでどうよと思うので、今回のことを機会に小学生向きに「死に向き合う」というテーマで深掘りしてみたくなりました。

やさしいライオン

みなしごライオンのブルブルと、お母さんがわりの犬のムクムク。 優しい子守歌を聞き、ブルブルはどんどん大きくなります。 そしてついにお別れの時がやってきますが…。 絵本作家活動の原点ともいえる、読み継がれる代表作です。

出版社による説明

やなせさんの絵本作家への足がかりとなった作品です。当時はアニメ化もされたそうです。
こちらも次女は泣きましたね。

ブルブルが大きくなってからサーカスで活躍する描写があるのですが、いまは動物を調教することを嫌う人が増え、動物の出演するサーカスはだいぶ減りましたね。
本編とはあまり関係のないところではありますが、もしかしたらやなせさんもサーカスに動物を出させることには懐疑的だったのかもしれません。

タコラのピアノ

ある日、海に沈んできたグランドピアノ。音楽の好きなタコのタコラは、それをじょうずに8本の腕で奏でます。ついには陸に上がり、より多くの人の前で演奏するピアニストになりますが…。

コミカルに描かれてはいますが、こちらもなかなか悲しいお話です。
最初は好きが原点だったピアノ。なまじっか才能があったためにスターになってから転落してしまう悲劇は、人類総インフルエンサー時代への警鐘にもなり得るお話かもしれません。

いねむりおじさん

毛布にくるまれてゆりいすに座る、おじさんとぼく

廃版なので、ご興味があれば図書館でお借りください。
のんきそうな人物が描かれた表紙からは想像できない「ぼくとおじさんのハラハラドキドキ冒険譚」でした。
先住民族(表記は土人)に料理されたり、怪物に食べられそうになったりします。

児童書ですが字が大きいので「怪傑ゾロリ」や「ルルとララ」シリーズくらいの分量を読まれるお子さんなら最後まで聞いてくれると思います。

キラキラ

キラキラという化け物が住むという山、ふもとの村の勇敢な兄弟の弟は、キラキラを退治しに山へと向かう。帰ってこない弟を追い山に入った兄、山頂で兄が見たのは…。

出版社による説明

こちらもなんとも言えない切ないお話です。
「見た目で判断してしまう人間という生き物は愚かなのか?」という問いが生まれます。大人にもぜひ読んでもらいたい作品です。
今は廃版となっており、中古の復刻版かKindle版なら手に入るようです。もしくは図書館でお借りください。

やなせさんはあとがきでこう書かれています。

絵本の世界でも、ぼくは容赦せず、主題に悲劇をえらびます。おさないからといってすぐに直面する問題をさけてとおらない方がいいと考えています。

あとがきより

おっしゃる通りですね…。
普段、子どもが泣くような悲しいお話はフォローが大変なのであまり選ばないのですが、これからはちゃんと悲劇も読み聞かせようと思います(ただし、良質なものに限る)。

さよならジャンボ

南の国からやって来た、象のジャンボと象使いのバルー。 小さな国で、みんな楽しく暮らしていましたが、 ある日東と西の国の戦争に巻き込まれてしまいます。 国民の命を守るため、王様はジャンボを殺そうとするのですが…。 平和の尊さと命の重さについて問う、時を超えたメッセージ。

出版社による説明

これまで読んだ本を踏まえて、一読めは象のジャンボが無事でいられるかどうかだけが気になっていました。やなせさんの社会的メッセージを含んだ作品群によって、晩年の手塚作品を読んでいるような気持ちでした。今回は、一応ハッピーエンドな終わり方だったのでホッとしました。

二度目からはジャンボの可愛さがじわじわと私の中で浸透し、すっかりジャンボのことが好きになってしまいました。二足歩行だし人間っぽい愛嬌があるんですよね。ということで、ご興味ある方はぜひ読んでみてください!


アンパンマンのクリスマス

つらいお話が多くて気持ちが沈みがちだったで、最後は王道ハッピーエンドストーリーで気持ちを盛り上げたいと思います!

こちらは原作版アンパンマンの中でも読みやすさ上位に入る作品です。
アンパンマンがサンタさんのお手伝いをします。アニメ版アンパンマンがお好きなお子さんにおすすめです。
食パンマンやカレーパンマンも出てきますよ!

終わりに

絵に昭和感があるので、お子さんは最初に戸惑うかもしれません。
それでも読みすすめてみると、続きが気になるストーリー展開に、強いメッセージ。どのお話も、お子さんの心にじんわりと残る「何か」があると感じました。

あと、昔あるあるなのか「あとがき」があるものが多く、やなせさんの「なぜこのお話を描いたのか」といったコメントが見られるのが面白かったです。

他にもやなせさんの本を読んでみようと思うので、記事はどこかのタイミングで更新するかもしれません。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました!

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