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絵本好きが高じて園の絵本コーナーをリニューアルさせてもらった話

今日は3年ほど前に、子どもの通う公立幼稚園で絵本のコーナーをリニューアルさせてもらった話をしたいと思います。
もちろん、何千冊もある蔵書はひとりでは到底さばけません。仲間(ボランティアの保護者)とともに取り組みました。
具体的にどんなことをしたのかご興味のある方は、ぜひお読みください!
(例によって長くなってしまいました)

園の本棚が気になるようになったきっかけ

上の子が入園したときに、園児に絵本の読み聞かせをするPTAのサークルに入部しました。
そこで目にしたのは、廊下にたくさんの絵本が収納された園の本棚(通称『絵本コーナー』)。多分4千冊前後くらいあると思います。

最初は「わー絵本がたくさんあるー♬」とテンションが上がり、本棚に対してはあまり何も考えていませんでした。
しかしコロナ禍が始まってからは、子どもが借りてくる絵本がマンネリ化していることに徐々に疑問を抱くようになりました。せっかくの機会なのに「借りたい物がないから知ってるやつでいいや」とやっつけで借りてくるようでした。

週に一回の絵本貸し出しで、子どもたちはひとり2冊選べます。もともとは『親子絵本貸し出し』という企画で、親子で選ぶスタイルでした。
保護者の選書などもあって、その頃はさまざまなジャンルの絵本が借りていかれていたように思います。

しかし、コロナによって状況は一変しました。
大勢の親子で絵本の本棚が並ぶコーナーに行ってしまうと、確実に「密」になります。そこで、子どもがひとりで選んで借りてくるようになりました。

すると、子どもたちが借りてくる絵本に極端な偏りが見られるようになりました。
お気に入りの絵本を何回も借りるのは微笑ましいものですが(私含め、親はうんざりしがちではあるものの笑)、みんなあまりに何度も同じものを借ります。

マンネリの原因

そこで子どもたちが選ぶ様子を観察させてもらい私なりに考えたところ、以下の点が分かりました。

  • 表紙の見える絵本棚がいくつかの人気シリーズの定位置になっており、年間を通してそれは変更されることがない。

  • 子どもはきちきちに詰まった本棚から、本をわざわざ引っ張り出さない

  • 背表紙ではどのような本か分かりづらいし、まだ文字の読めない子もいる

  • 「自然・科学」や「外国の絵本」、「児童書」などざっくりとしたジャンルでは棚が分けられていたが、その他の人気や有名なシリーズもの以外の物語は「おはなしの本」としてほぼ一緒くたにされていた。

原因は明確でした。子どもたちは、『表紙のみえる人気シリーズがある棚』からしかほぼ借りていなかったのです!

私からすれば園に昔からある絵本というものは定番のロングセラーはもとより、廃版の名作もたくさんあり、お宝的存在です。
また、比較的新しく図書館では予約待ちになっているような本が棚に埋れていたりといろいろと勿体無い状態でした。

先生方の負担

ここで園を批判するつもりは毛頭ありません。
ただでさえ忙しそうな園でのお仕事。
さらに、当時コロナ禍ということで、先生方はコロナ対応にも追われます。
アクリル板の設置やお弁当時の黙食など、イレギュラーな対応が続きます。

絵本についても例外では無く、子どもたちから返却された絵本は一冊ごとに消毒&乾燥ののちに先生方の手によって本棚に戻されていました(本来は返却は子どもの仕事)。気の遠くなる作業だと感じました。

表紙のみえるピックアップコーナーを入れ替えるなんて大仕事をする余裕は、まったく無かったのではないでしょうか。

そういった園の大変さは理解していたものの、私は日の目をみない絵本たちの存在がもどかしく感じ、だんだんと我慢ができなくなりました。

日焼けしてタイトルの読めない本たち


園長先生に申し出る

ある日、勇気を出して園長先生に提案しました。「私は一介の絵本好きですが、正直、埃のたまった誰にも手に取られない本棚があります。
ここに並んでいる絵本たちが子どもたちにまんべんなく読まれるように、本棚のレイアウトや棚の入れ替えなどさせてもらえませんか」と。

園長先生と一緒に、埃のかぶった「泣いた赤おに」や「エルマーのぼうけん」「地獄のそうべえ」などを確認しながら話しました。

結果、快諾していただき、読み聞かせサークルのメンバーやママ友に声をかけ約2週間にわたり、作業を行いました(もちろん強制ではありません)。

よく来てくれるサークル仲間もいたし、仕事が忙しい中時間を作って参加してくれた友人も何名かいました。たとえそれが一度の短時間であっても、めちゃくちゃ嬉しかったです。

リニューアルにあたって行なったこと

使ったもの・・・軍手、雑巾、水入りバケツ、カラービニールテープ、本補強テープ、油性マジック、はさみ、カラー画用紙、ラミネート、インテリアシートなど。

  1. まずは掃除から。すべての本棚から本を取り出し、雑巾で棚全体を拭きます。

  2. 本にも埃や汚れがついているので雑巾で拭きます。

  3. 傷みの激しい本は取り除いて、処分か修理にまわします。

  4. 修理係は補修テープで本の補修や修理をします。

  5. 新たにカテゴリを作ります。「ぼうけん」「かわいい」「おもしろ」「たべもの」「ようちえん」「せいかつ」「おばけ」「きょうりゅう」「のりもの」など。

  6. 作家や代表的な出版社のシリーズ単独でも、カテゴリを作ります。「林明子」「中川ひろたか」「かこさとし」「工藤ノリコ」「いもとようこ」「こどものとも」など。

  7. カテゴリは決められた色画用紙に見出し(カテゴリ名とイラスト)をつけて、ラミネートで丈夫にします。それを本棚の仕切りに使用します。

  8. 画用紙の色とリンクするビニールテープを一冊ずつ本の背表紙に貼っていきます(本に住所を作る)。

  9. 本棚にも、見出しと背表紙の色に一致するビニールテープを囲うように貼り、色を見てカテゴリごとに返却しやすいようにします。

  10. 背表紙が日焼けして文字が読めない本は、マジックでタイトルを上書きします。

  11. 本棚に本を入れていく際、詰めすぎないように気をつけます。空いたところにはブックスタンド(工作上手なメンバーの手作り)を設置し、表紙がみえるように当該カテゴリの本を飾ります。

  12. 園児が棚の一番上の本を取れるよう、踏み台を設置します(これもメンバーの手作り)。

  13. 一部の老朽化した本棚にはインテリアシートを貼って、見栄えを良くします。

ざっとこんな流れで作業を行いました。

この作業期間中に、自宅から不要な棚や絵本を寄贈してくれた保護者もいました。たいへんありがたかったです。

一番頭を悩ませたのはカテゴリ分け

掃除や修理は大変だけどやることは決まっています。各々得意分野があるので、自分のやりたいことを選び、保護者同士で談笑しながら楽しく取り組めました。

しかしながら導線やレイアウトを考えるのは頭を使います。特に、カテゴリ分けには悩みました。
通常、図書館の子供コーナーのおはなし本はあいうえお順に並んでいますよね。児童書は作家別になっていたりします。

目的の本がある場合はあいうえお順だと探しやすいのですが、園の子どもたちは「なにかおもしろい本ないかなー」という動機で絵本コーナーにやって来ます。表紙棚には限りがあります。
そんな子どもたちが選びやすいような本の並べ方・・・

たどり着いた結論は「テーマごとに分ける!」でした。そこで、こんな風にサークルのメンバーに聞いてみました。

「例えば、『かわいい』はどうかな?バレエやスイーツ、プリンセスなどが出てくる甘めテイストの絵本を集めたカテゴリを作って!」

「恐竜好きな子いるよね!恐竜だけのカテゴリがあっても良いよね」

結果、それでいくことになりました。しかし「かわいい」や「きょうりゅう」は分かりやすいのですが、おはなし絵本で一番多いのは動物が主人公で展開していくストーリー。
「どうぶつ」で分けてしまうと、そのカテゴリだけ膨大な量になってしまいます。
結局、そこは「いぬ」「くま」「ねこ」「きつね」「ぶた」「ぞう」など主役の属性で振り分けました。

本と本の間に見出しを入れていきました
人気シリーズは個別のカテゴリで


リニューアルした結果

そしてリニューアル後初めての絵本貸し出しの日。狙いどおり、子どもたちはさまざまな本棚へ分散されていきました!
表紙が並んだコーナーは選びやすいのでもちろん人気ですが、ある本棚の「おもしろ」と書かれたコーナーに子どもたちが集中しました。

それからしばらく数週間にわたって「おもしろ」にしか行かない子が少なからずいたので、一番人気の「おもしろ」を不人気だった「にほんのむかし話」のコーナーの側に移動させるなどたまにテコ入れを行いました。

表紙棚の特集コーナーは、時間があるときに入れ替えていました。季節で変えたり、作家をピックアップして並べてみたり・・・

その後

リニューアルを頑張ったことによって、園の方からどのような絵本が欲しいか毎年聞いてもらえるようになりました。本棚の中身をだいたい把握していたので、ボリュームが薄いカテゴリやサークルメンバーのオススメ本を都度お願いしていました。

最近知った話なのですが、業者さんが本などの納入に来られる際に、本棚を褒めて下さることがあるそうです。
私の自己満足が発端となり、多くの人を巻き込み、達成された本棚ですが、非常に嬉しかったです。言うまでもなく、たくさんの仲間たちの力と理解ある先生方あってのリニューアルでした。自分一人の功績にしようとはまったく思いません。

もちろん、子どもたちの絵本選びがより充実したものになったのであれば、それが一番の喜びです!

以上が、園の絵本コーナーをリニューアルさせていただいたお話です。
ここまでお付き合いくださり、誠にありがとうございました!!

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