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オオカミ神話を覆す物語

那須田淳 『ペーターという名のオオカミ』(小峰書店、2003年)

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すごい本に出会ってしまった。随分前に出版されていたのに、今まで読まなかったのが悔やまれる。もう社会人になってしまった息子たちの若き日に、ぜひとも読んでもらいたかった。

『赤ずきんちゃん』はじめ「ピーターと狼」でも悪者のイメージが強い狼だが、これはペーター(ピーター=人間)とオオカミ(動物、自然)を本来あるべき位置に取り戻す物語だ。それはベルリンの壁によって阻まれた人々の苦悩や軋轢を修復する伏線とともに進行していく。

狩猟文化と捕獲による経済利益の追求に相対して、期せずして自然保護に関わっていく少年たち。ドイツを舞台に森あり湖あり、音楽あり絵画芸術あり、まるで総合舞台芸術でも観ているような深い感動に包まれる。

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第51回産経児童出版文化賞、第20回坪田譲治文学賞受賞作。超お薦めです。