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羊が1匹、羊が2匹 ・・・

眠れない子どものお話が続いたので、今度はすぐに寝落ちする大人のお話を。

ミジ・ケリー文、ラッセル・エイト絵
『サムさんと10ぴきのひつじ』前沢明枝訳
(朔北社、2008年)

寒い嵐の夜、サムさんは羊たちを家に連れて帰ってきます。【以下ネタバレあり】

サムさんの ひつじは ぜんぶで 10ぴき。
かぜで とばされた ひつじは いなかったか、
たしかめなくては なりません。
さむくて じめじめした くさはらには、
おそろしい オオカミが すんでいるのです。

サムさんは眠れないから羊を数えるのではなくて、安否確認のために羊を数えようとします。ところが、すぐにいびきをかいて寝入ってしまうのです。ここはぜひとも全員の無事を知りたいところ。にもかかわらず、羊を数えると眠れるという伝承のとおりに寝落ちしてしまうサムさんに、羊たちは困ってしまいます。

そこへもう1匹の羊(に見せかけたオオカミ)がやって来たので、さあ大変!
サムさんは咄嗟に自分の羊だと思い込んでドアを開けて中へ入れようとしますが、羊たちはなんとかサムさんに自分たちの数を数えてもらおうと奮闘します。

この絵本の面白さは、そんなストーリー展開はもとより、羊はみんな同じ顔をしているから飽きてしまって眠くなると正直に話すサムさんと、羊とのやりとりにもあります。

「えー、それって ひどいよー!」
「しつれいじゃないですか!」
「そんなこと いうなんて、あんまりだ……」

加えて、とてもユーモラスな絵がみんな同じでつまらないはずの羊にサムさんブランドの羊とでもいうべき個性を与えています。サムさんの羊は確かにみんな同じ顔なのですが、サムさんと一緒にベッドで眠る特権を持ち合わせています。その羊毛の温もりに守られるようにしてすぐに寝落ちするサムさんと、そのサムさんに守られて眠る羊の絆の深さに心温まるユーモア絵本です。

『サムさんと10ぴきのひつじ』裏表紙より

【蛇足】この絵本を読んでいる最中に、『おおかみと7匹のこやぎ』のお話を思い出しましたが、読み終えてからは「メリーさんの羊」の替え歌で「サームさんの羊、羊、羊。サームさんの羊、かわいいな♫」のフレーズが浮かびました。
暖かくなってきたので、そろそろ羊毛毛布しまわないと……🐑