言語の持つ意味

今年の初め頃、私は渋谷に位置する、あるパブで、スウェーデン人と話す機会があった。
彼とは初めて会ったのだが、パブに滞在した3時間ほどの時間で、ほとんどノンストップで話をしてくれた。
彼の名前はエリック。スウェーデンから、とある世界的なミュージシャンのテック(楽器の音を調節したりする人)として日本に来ており、「明日は武道館で仕事があるよ」と教えてくれた。

スウェーデンの人は、もちろんスウェーデン語以外に英語がとてもよく話せる。彼のスマホの言語設定はスウェーデン語になっていたから、難なく英語でコミュニケーションをでき、私自身は酒が入ったらとても饒舌に英語が話せるようになり、エリックが日本人は英語が苦手であるということを知っていたのならば、おそらくお互いの英語のうまさに驚いていたかもしれない。

大学の友人と共にパブに入り、席に案内され、私から隣の席で一人でビールを飲んでいたエリックに話しかけたのだが、本当に気さくな人だった。そもそも彼は40歳、私は20歳で、世代がまるで違う。そして生まれた国も、母国語も、身長も(エリックは185cmくらいあった。エリックの友人たちは190とか200の人がかなりいるらしい)、何もかも違う。音楽をやっていること、人間である、男であること以外には特に共通点はなかった。

私は失礼ながら、エリックがスウェーデン出身と聞いて、「サウナの?」と言ってしまった。「それはフィンランドだよ」と優しく彼は教えてくれた。スウェーデンについて、今はかなり知識が増えた。ボルボを作っている国であること、国民性が日本人と似ていること、スウェーデンは右側通行であることなど。
彼と話している時、スウェーデンについて知りたくなり、ネットでスウェーデンの国民性や、産業などについて検索をした。
私がふと、彼に自分の調べた日本語のWebサイトを見せると、彼は「日本語だから何が書いてあるか全くわからないよ」と言った。
この時、確かに彼が日本語がわからないということは当たり前なのだが、「私にとっては完全に意味を持って現れているこの一つ一つの文字たちを見ても、エリックは何も意味を得ることができないという事実」に対して驚いた。
私はスウェーデン語を何も知らない。しかしアルファベットで構成されているから、何もわからないということはない。写真を意味するスウェーデン語はfotoであり、photoに限りなく似ており、ヨーロッパの言語である限り、そういった点でも、英語がわかれば、完全にわからないということは、ない。

何を書いているのかだんだんわからなくなってきたが、本来意思疎通が難しいはずである、遠い国から来た人と、一つの言語がハブになって通じ合うことができたことが嬉しかった。
エリック、いつか僕がスウェーデンに行ったらまたパブに行こう。

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