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ため池の管理組織の概要

みなさまこんばんは。ため池のある暮らしの未来をつくる研究者,柴崎浩平(主なフィールド:兵庫県東播磨)です。

今回は,ため池の管理組織について紹介していきます。ため池は,農業用水の確保を主な目的として作られたので,基本的には農家が管理しています。が,一言で農家といっても,様々な組織が存在します。

1. 管理組織について

まず,ため池の管理といった場合,誰の持ち物(所有)か,によって管理組織も異なります。

ため池の所有・管理といった場合,大きく分けて「水の所有」と「土地(底地や堤体)の所有」に分けられます(下図)。

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この,水と土地の所有・管理者は,一致しているケースもあれば,異なるケースもあります(東播磨の場合,異なるケースの方が多い)。

東播磨でみられる,それぞれの代表的なケースは以下の通りです。

① 水と土地の所有が,一致していないケースの代表例

水の所有     =水利組合,農家
土地の所有 =財産区,農家

水利組合とは?

水利組合は,明治時代に農業用の灌漑や水害防止等の事業を行う目的で、全国各地に設立された組合です(主に集落単位)。

が,その母体は,もっと古くから存在し,14世紀ごろには,水系単位で農民の地縁的な集団が形成されていたといいます(日本史上初めて登場した自治的な農民組織と言われている)。

財産区とは?

財産区は,地域の財産の守るために設置された組織です(集落単位で設置)。法律的には特別地方公共団体と位置付けられ、市や県と同じ地方公共団体になります。

なぜこのような組織が作られたかというと,端的に述べると,集落の財産を守る・横取りされないようにするためです。

明治や昭和において,多くの市町村が合併しました。合併に伴い,集落の財産が新市町村の財産として位置づけられないよう,旧来のまま残すことを目的として作られました。

財産区が所有する財産はため池の他にも,山や墓地,土地,などがあります。

水利組合と財産区のメンバーと管理作業

水利組合も財産区も,主には集落単位で設置されているため,メンバーが重なっているケースも多くみられます。

なお,ため池の管理作業としては,財産区が主要する堤体などの管理を財産区メンバーがおこなっているかというと,必ずしもそうではありません。

財産区はあくまでも,財産の売却や賃借などの意思決定(お金の出し入れを決定する)をする機関であり,日常的な管理作業(例えば堤体の草刈り)は,水利組合として実施している,という認識の方が多いように思います。

② 水と土地の所有・管理者が,一致しているケースの代表例

水の所有               =土地改良区,農家
土地の所有           =土地改良区,農家

土地改良区とは?

土地改良区は,土地改良事業(圃場整備やパイプライン化,農道整備など)を契機に設立された組織のことです。

戦後,多くの土地改良事業が実施され,比較的規模の大きい事業については,事業終了後の施設の保全管理と償還事務をおこなう組織として,設立されました。

土地改良区が設置された地域は,ごく限られており,その多くは複数の集落をカバーする形で設置されています。

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以上,代表的なケースについてみてきましたが,その他にも,集落や個人農家,町内会が水・土地の所有・管理者になっている事例もあります。

2. 管理組織とため池の数

下の表は,東播磨地域における農業集落,管理組織,ため池の数を整理したものになります。

なお,ここでいう管理組織とは,水の管理組織である,水利組合や土地改良区がメインとなっています。

東播磨全域では,農業集落が293,管理組織が161(その多くは水利組合。土地改良区はそのうち22を占める),ため池の数が641となります。1組織あたり平均4.0個のため池を管理していることになります。

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なお,財産区に関しては,加古川市では106,明石市では34の財産区があり,そのうちの多くの財産区はため池を所有しているそうです。財産区の実態については後日紹介させていただければと思います。

3. まとめ

以上にみてきたように,ため池の管理組織といっても,多様であることが垣間見れたのではないかと思います。

ポイントとしては,水と土地を分けて捉える必要があり,それらの所有・管理者が異なるケースもある,ということかと思います。

具体的な組織の特徴については,追って投稿していければと思います。

本日はここまで。最後までありがとうございました。

文責:柴崎浩平


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