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島アンソロジー「貝楼諸島より」 参加作品です。 シテとシテツレの島 「驚いた。椿事もあったものだな。この島に自ら上陸してくるものがあるとは」 壊れかけの桟橋で足を踏み外して海へ落下しかけた私に手を差し伸べながらその男ーー顔の四半分を能面の小面で隠したーーは言った。 「こ、この島の方ですか」 聞くと、男は「そうだが」と首を傾げて何か面白いとでも言うようにわずかに口角を上げた。同じ男性という分類に属するものではあるが自分とは違う生き物のように感じられた。 「私は旅の