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映画と本と展示のメモ(B5方眼)

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自分のnoteの中から、映画や本、漫画、美術館や博物館の展示の感想はここに。
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切手代40ルーブリの謎

河出文庫「ロシア怪談集」を読んだ。 この中にドストエフスキーの「ボボーク」という短編が入っていて、その中に気になる記述があったので今日はその話。 40通の手紙で40ルーブリの切手代がかかったらしい。 最初はそのまま読み飛ばしたけど、なんとなく引っかかった。1通で1ルーブリの計算だ。ずいぶん高くないだろうか。巻末の「原著者、原題、制作発表年一覧」によれば「ボボーク」の発表年は1873年だ。 同じドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」はおそらく1860年代が舞台で、物語の冒

「カラマーゾフの兄弟」に登場する食べ物について

去年「カラマーゾフの兄弟」を読んだ時に印象に残ったフレーズがいくつかあって、たとえばこれはイヴァンとアリョーシャが食堂で会話しているシーンのイヴァンの台詞。 イヴァンとアリョーシャ、この兄弟の会話はとにかくおもしろい。少々意地悪で冷淡でひねくれたイヴァンと真っ直ぐなアリョーシャ。私はこの2人の会話ゆえに「カラマーゾフの兄弟」が日本でアニメ化したらいいのに、と思っている。 けど今日の主題はそれじゃなくて【魚汁】の部分だ。魚汁がどんな料理なのか分からないけれど、この異国情緒のあ

東博国宝展で見られる切手の題材

この note は東博の特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」で展示される作品のうち、日本の切手の題材となったことがあるものを個人的なメモも兼ねてリスト化したものです。 東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」 2022年10月18日(火)〜12月11日(日) https://tohaku150th.jp ※事前予約制の展示です。 ※全期展示ではないものもあるので詳細は公式サイトでご確認ください。 ※切手・シリーズ名/額面/発行年 2022

ペンフィールド情調オルガンがほしい

ペンフィールド情調オルガン。 ルビ機能実装、と聞いて最初に「入力してみたいな」と思ったのが「ペンフィールド情調オルガン」。ルビ機能初めて使うんですけど、ちゃんと情調にムードってルビが振られていますか? 大丈夫ですか? うん、大丈夫みたいですね。 ペンフィールド情調オルガンとはフィリップ・K・ディックのSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に登場する、人工脳刺激によって自分の気分を好きなように調整できる機械です。 ダイヤルを回して数値を合わせると、楽しい気分になったり

三菱の至宝展と、それから中野美代子「耀変」

私みたいによく分かっていない者にも問答無用で「ああ、これは宝だ」と思わせる美しさがあり、そしてそれは実際に広く認定された「宝」である、という宝の中の宝というかそういうものが世の中にはあって、稲葉天目はまさにそれだった。 先月、三菱一号館美術館の「三菱の至宝展」へ。 主な目的は稲葉天目を見ること。3つだか4つだか(ここは意見が分かれているらしい)現存する曜変天目茶碗の1つ。国宝。 その青く輝く不思議な茶碗は今年の6月に発売された切手「国宝シリーズ第2集」にも採用されている。

ドローイング文通展へ行ってきました

※このイベントは終了しました。 はがきに描いた絵(ドローイング)で文通をする「ドローイング文通」という企画を SNS で偶然知り、主催のお2人に「私も参加させてください」とメッセージを送ったのが今年の1月頃。 主催の赤澤玉奈さん、高野実紅さんを通して今までやりとりされた150枚以上のはがきを展示する「ドローイング文通展」が東京・千駄木駅近くのさんさき坂カフェにて9月29日まで開催中です。 送っていただいたDM! かわいい! これは実際私がやりとりしたはがきで、左上が赤

覆い隠し隠される|エドガー・アラン・ポーの短編から

エドガー・アラン・ポー「黒猫」をモチーフに制作したポストカード(2019年) 黒猫善良で動物が好きだった主人公が飲酒によって粗暴になっていく。そしてそういう自分自身の態度によって追いつめられ、だんだんとおかしくなって、ついには大きな罪を犯し、それを隠蔽する。 ポーの「黒猫」を読んで私が一番強く感じるのは「露見することの恐怖」だ。 「黒猫」についての解説をいくつか読み、主人公の天邪鬼な態度やこの物語における黒猫が象徴するものは何か、なんて話も読んだのだけど、いまいちピン

漫画ゴールデンカムイのすすめ

2021年9月17日まで全話無料公開中ゴールデンカムイ、ご存知ですか? 私の Twitter から引用しますね。 上記の2つは主に郵便好き視点で書いてるツイートですけど、もうこれがね、いろんな方向に面白い内容で、歴史とか民俗に興味ある人なんかには特に勧めたいです。 野生の動物がいろいろ出てきますがこれらのほとんどは「食べる」対象で、小さくて見た目が可愛らしい動物なんかもアシリパさん(アイヌの女の子)によって次から次に捌かれて行くんですけど、その一貫した描き方がとても好きです

東博特別企画展に見るアラビア文字の美しさ

※ヘッダーの画像は ミフラーブ・パネル/中央アジアまたはイラン(ティムール朝)14〜15世紀 東京国立博物館にて開催中のマレーシア・イスラーム美術館精選特別企画「イスラーム王朝とムスリムの世界」を観てきました。 展示室2つ分の比較的小規模な展示ですが「特定の国家や地域によらない、世界規模のイスラーム美術」(公式サイトより)を比べて見られるのが大きな特徴です。 その中から「文字」に焦点を当て、私が個人的に「アラビア文字!なんて美しい文字!」と思ったものをメモ代わりにまとめたい

泉鏡花「外科室」を読んで

note で募集中のお題に #夏の読書感想文 というのがあり、子供の時「読書感想文」というものがあまり好きではなかったことを思い出した。自由なテーマで作文を書くのは好きでたまに先生に褒めてもらえたりすることもあったけど、読書感想文は本当にダメだった。面白く思った本でも感想文は書けなかった。 夏といえば読書感想文だ。いつまでも埋まらない400字詰め原稿用紙5枚分の何と憎らしいことか。素麺の麺つゆに1枚1枚浸したのち、36度の炎天下に晒してやりたい。 1年ほど前、青空文庫をぼん