さらば、カラカラ

夜、テレビでジェンツー・ペンギンを扱う番組を見た。彼の鳥は、海から営巣地まで数キロの道のりを走って帰る。何故そんなに急ぐのか。当地にはフォークランド・カラカラなる隼の仲間がいて、ときに彼らの子供たちを襲ってしまうというのだ。

妻としきりに、人間は良いね、と話し合う。仕事を一生懸命がんばって、さあ夕ご飯だと家に帰ったら、大切な家族が鳥に食べられてしまっていた――ということはないのだから。

 児 を 襲 ふ 隼 も な き 長 閑 さ よ

子供たちを風呂に入れて、自身も入り、歯磨きを済ませてようやっと蒲団にもぐる。電気を消して、子供たちに「今日も一日元気に過ごせて、よかったね。神様にありがとうって言おうね」というと、案に相違して、二人とも「かーみーさーま、ありがと」と言った。分からないなりに分かってくれたのだ。分かっているつもりで、分からないことだらけの私たちとは違う。

夜更けに歳時記を開けば、折しも安居(あんご)に入る時分であった。

 吾 子 二 人 御 名 を 唱 へ る 結 夏 か な

 子 の 幸 よ 安 居 の 僧 も 祈 り た ま へ

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