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70人裏垢不倫夫と離婚バトルに突入する話 ① 〜弁護士めぐりの旅〜

(1番最初の話:発覚の経緯から読まれる方はこちらからどうぞ!)

弁護士探し、スタート!

不倫発覚から約半月後の4月初旬、弁護士事務所を訪ねることになった。
弁護士を探す方法は、法テラスを利用する方法もあるが、私の場合はアナログに友人の紹介である。
ご家族に法律家の方がいたり、なんらかトラブルのトラブルから生還していたりと心当たりがありそうな友人たちに事情を説明すると「えっ!?そのクソ野郎は世の中から消した方がいいよね!?」という強火の憤りとともに「この先生のところへ行け」とレコメンドをもらったのだった。

おすすめしてもらった先生や事務所をネット検索すると、大抵の場合はホームページに相談の案内がある。お問い合わせフォームやメールで「○○さんにご紹介いただきました」と連絡を取って日程調整を行い、3つの弁護士事務所に伺うことになった。


いざ相談へ

1件目の事務所は30分の無料相談だった。
インターホンを押し名前とアポイントを取った旨を伝えると、小さな会議室に通され受付のお姉さんが温かいお茶を運んできてくれた。
ご記入をお願いします、と渡されたアンケートの用紙には自分の名前だけでなく相手方の名前を書く欄があった。これは、万一すでに夫が同じ事務所に相談や依頼をしていれば私は相談することができないためである。逆に私が今日相談することで夫はこの事務所にはもう相談することはできないのだ。
しばらく待つと先生が2人入ってきたので慌てて立ち上がる。

1人目はこの事務所の所長、いわゆる「ボス弁」だ。
見た目はギラギラした高橋克実、話し方は完全に松岡修造である。なんか炎タイプのジムリーダー感がある。もう一人はニコニコ優しそうなメガネの若い男性の先生だった。(以下、「ボス」「若先生」とします)

ボス「こんにちは!ご連絡ありがとうございました!本当に大変だったねえ、まず状況を聞かせてもらえますか!」(クソデカボイス)
私「資料をまとめてきたので、少し見ていただけますか」

分厚い2穴ファイル2冊分の資料と概要の資料を渡す。家で魔王の大野智になりながら十分頑張ったとはいえあくまで私は素人で、プロに事件の資料を見せるのは緊張の一瞬だった。
ボスはしばらく無言で概要の資料を1枚しっかり見た後、パラパラとファイルをめくった。そして顔を上げると、笑顔で口を開いた。

ボス「これはね、懲らしめなければいけないね!!!」 


離婚ってどうやってするの?

私「こういうケースは結構あるんですかね?」
若先生「いや、ないですよねここまでヒドいのは」
ボス「僕ももう長いけど、ここまでのは初めて見た」
私「それは人数的に…?」
ボス「人数もだけど手口もとんでもないよね」
若先生「ちょっと言いづらいですけどクソですよ!」

先生方、めちゃめちゃ悪口を言ってくれる。これにほっとしてなぜかちょっと嬉しいとともに、やはりやばい事件なんだなと実感した。

私「今ちょっと覚悟が決まっていないんですけど、もし私が離婚したいと思ったらどんな流れで進めていくんですか?」
ボス「まず、今回は夫さんが離婚の原因をつくった側『有責配偶者』になります。不貞行為が原因の離婚において、調停や裁判で有責配偶者からの離婚請求が認められることは原則ありません。やらかしておいて離婚したいって、そんな都合の良いこと認められるかって話だね。
それに対してegoさんは離婚したいと思った場合は基本的に認められます。もちろん慰謝料も請求できます
私「つまり、離婚するかどうかは私に主導権があるということですか?」
ボス「その通りです。夫さんは離婚したいと思ったら、なんとかしてegoさんに同意してもらうしかないという状況だね」

どう考えても夫は離婚したいと思っている。だったらもはや同意したくないくらいである。

私「具体的にはどんな流れになるんですか?」
ボス「離婚するとしたら、決めないといけないことが色々出てくる。だから『離婚の条件を決める』というのが具体的なやることだね。例えば、慰謝料や、持っている財産をどう分けるか。あと今回はきっと夫さんがこの事件について他の人に喋って欲しくないでしょう。そういう条件も付けて欲しいって言ってくると思う」
若先生「絶対に言うでしょうね」
私「それは腹が立ちますね」
若先生「こんなのバレたら懲戒解雇になってもおかしくないですよ」
ボス「夫さんの職場は…おお~△△か、あるでしょうね」(にっこり)

(※今冷静に考えると、動画を載せていたことは公序良俗に反する的な文言の就業規則にはほぼ引っ掛かり、ほとんどの企業でヤバ判定だと思います。万一社員であることを特定されたら著しく企業の名誉を下げるし、置いておく方がリスク。裏垢のみなさまは本当に解雇されてください。)

ボス「で、話さないでくださいを飲んでやるかどうかも含め、離婚するかどうかとその条件を決めるために3段階のステージがあります。
まず協議、話し合いです。それがまとまらなければ、次に調停。家庭裁判所で第三者をはさんでお互いの意見をまとめてもらうイメージ。
調停がまとまらなければ裁判です」
私「普通はどのステップまで行くんですか?」
若先生「9割方協議で離婚になるんですけど、調停まで行くのが10%、裁判は少なくて2%くらいですね」

確かに参考にしているサレ妻系アカウントでも、裁判まで行っている人はなかなかいないな…と思いながらメモを続ける。

私「そうするとほとんど協議で決まるんですね」
ボス「そうだね。理由としては、裁判まで行くとすごく時間がかかってしまうからです。裁判をするためにはまず調停をしないといけないのだけど、まず調停に半年くらいかかる。そしてその後に裁判で判決が出るまで1~2年かかるので、結構な時間が経ってしまうことになる」
私「ああ~、確かに普通は早く離婚したいって思いますよね」

調停で決まらなかった条件を裁判所が決める「審判」になることもありますが、異議申し立てができるので、審判で離婚が成立することはほとんどないそうです。


慰謝料と財産分与

ボス「裁判まで行かないのにはもうひとつ理由があって、それは慰謝料なんです。調停や裁判だと、これまでの判例で相場感が決まってきてしまう、これがそんなに高くないんだよね
私「調べたんですけど100万円とかのケースも多いですよね」
若先生「程度にもよるので、今回は悪質だし裁判でも判例の中の高い方の額になるとは思います」

ここに来るまでに不貞を原因とした離婚裁判の判例も何件か読んでいた。
悔しいことに、何人と不倫しようが裁判では私でもまあ頑張れば払えるな、みたいな慰謝料しか出ないのだ。

ボス「相場は実際に持っている資産とは何の関連もない訳だから、相手によっては別になんてことない金額ということもあるんだよね
私「夫にとっては特に金額的には痛くも痒くもないと思います」
ボス「それが納得できなければ、協議で慰謝料を増額できるように交渉した方が良いという考え方もあります。例えば、早く離婚に応じる代わりに増額するように交渉するとかね。そうしたらどちらにもメリットがある。」
私「なるほど」

ボス「相手の女性の中で、夫さんが既婚者だと知っていた人はいますか?」
私「基本的には夫が既婚者だとSNSでは明言していないので、知らない可能性が高いと思われます」
ボス「既婚者だと分かった上で不貞行為をしているのであれば、相手方にも慰謝料を請求できるんだけど
私「正直浮気相手への請求は諦めていました。知っているかどうか分からない、というこの状況であれば、訴えること自体はできる、でも慰謝料が取れるか分からない、という解釈でよいでしょうか?」
ボス「そうです。ただ夫さんとしてはegoさんが相手を訴える状況は、事件がどんどん大きくなるから嫌がると思いますよ!浮気相手の中には知らないことを立証するために夫さんに連絡を取ろうとする人もいるかもしれないし。そう考えると、相手に慰謝料を請求しない、という事も交渉材料になりますね」

ほうほうとメモを取りつつ、相手方を訴えるとしたらどの人にしようかなと頭の中でうっすらイメージする。できれば懲らしめたい相手とすると、悪質性・再犯性・自己顕示欲・嫌悪感…何人か思い当たる人がいた。もうSare Projectできる。

ボス「お金の話で言うと、このほかに財産分与もあります。婚姻期間中に形成した財産を分ける、というものです」
私「財産分与は特に有責とか関係なくて、円満離婚の場合もやりますよね。結婚している間にそれぞれが増やした分を足して2で割るという考え方であってますか?」
ボス「基本的にはそうです。芸能人とかで慰謝料がすごい金額になったりしているのは財産分与込みの額を言っていることが多い。だから財産分与の方が金額としては大きいケースも多いんですよ」
私「夫、結構貯めてると思うんですよね。無趣味で倹約家なので。でも夫婦別会計なので自由に使えるお金は流れを追えていないし、口座もすべては分からないです。夫が口座を隠す可能性とかありますか?
若先生「ないとは言い切れないですけど、向こうにも代理人が就けばめちゃくちゃなことは言わないと思います。一応、取引銀行名と支店名に見当がつけば、弁護士会照会制度を使って問い合わせることができます
私「いやーーー本当にケチなので、いい先生が付けばいいんですけど、やりかねない気がします。家に銀行の書類がないかは帰ったら確認してみます」


婚姻費用とは

ボス「慰謝料も財産分与も離婚成立後の話になるので、今の時点でやることとしてはまず婚姻費用を請求します。夫婦には互いに協力して扶養し合う義務があるので婚姻を継続している間は、別居していても収入の多い方が少ない方に対して生活費を支払う必要があります
私「養育費とはまた違うんですか?」
若先生「養育費は子供がいる夫婦の離婚後に発生するもので、婚姻費用とはまた少し違います。婚姻費用は婚姻関係がある期間は子供の有無に関わらず支払うものなので、egoさんの方が収入が低ければ相手に請求することができます。逆だったら払うことになるんだけど…」
私「一応私の方が低いです。両方の2019年の源泉徴収票を持ってきました」
若先生「話が早い!婚姻費用の金額は目安があって、家庭裁判所のページに載っています。照らし合わせてみてみましょうか」

若先生が取りだしたのは「婚姻費用算定表」という書式である。
縦軸が義務者(支払う方)の年収、横軸が権利者(受け取る方)年収になっていて、交差する部分が婚姻費用の目安となる。
(詳細は裁判所HPに記載されていますので、こちらからご参考にどうぞ)

裁判所HPからダウンロードできる表がこんな感じ。子供いる方はグラフの数字が変わります。

ボス「表を見るとegoさんは月2~4万円の範囲内だね。」
私「2万と4万だと結構幅がありますね。」
ボス「もっと詳細な計算式もあるので細かい計算もできるけれど、例えばegoさんの場合は精神科への通院費用等を考えると枠の上限の4万円はもらってもおかしくないし、もう少し高い金額を請求してもいいと思う。」
私「必ずしもこの通りではないんですね」
若先生「万が一向こうが申し訳ない気持ちが強すぎてたくさん払いたいなら、いくら払ってもらってもいい訳ですから」
私「おお~これっていつから請求できるんですか?」
ボス「請求月からの支払いを求めることができるので、婚姻費用についてはとりあえず急いでいいと思う。離婚についてはすぐ動き出す必要はないので、まずは別居中の生活費をしっかり確保する。その上で離婚について考えたらいいと思います」


プロから見て、夫はどう出るか?

ボス「もし僕たちに依頼してもらったとしたら、やることとしては、まず婚姻費用を請求します。これは調停でやるのがいいと思います。それから離婚条件を考えて行きましょう。」
私「流れがよく分かりました。あと先生方から見て、夫はどうでしょうか。交渉したとして、応じるでしょうか?」
ボス「うーんそれは蓋を開けて見ないと何とも言えないけど、まずこの義父はちょっとおかしいよね!egoさんはもう直接関わらない方がいいでしょう!」
若先生「そういう対応こそ僕たちの仕事ですから」

代理人をつけると直接のやり取りがなくなる訳なので、その面ではストレスが減ると言えそうだ。そう考えるとここまでに本人から必要な供述をとっておいたのは良かったと言える。

ボス「あと素直に応じるかどうかは、向こうも代理人を付ける可能性もあるので、代理人次第のところもあるかな」
私「こんな案件でも弁護士に受けてもらえるんですか?」
若先生「僕たちでも依頼が来たら、うわあと思っても受けはしますね」
ボス「ただこれだけ証拠を残してしまっていて、支払能力もあるとすれば、できるだけ早く離婚してもらうようにというのは相手も最優先で考えるはずだとは思う。弁護士側から、早く離婚してもらうためにはこうしないと厳しいですよ、とアドバイスしていく感じかな」
私「なるほど…」 

正義感に燃えて弁護士になってこの案件を受けないといけないとしたら、すごくストレスだろうな…とまだ見ぬ敵の姿をかわいそうに思った。
その後、委任契約書や、着手金など条件面について説明していただいた。

私「依頼するかどうか、少し考えて連絡させてもらってもいいですか?」
ボス「ゆっくり決めてもらえたらいいですよ!それにしても辛い中よくここまで頑張ったね!資料もこれだけあれば十分戦えます。ご両親に伝えるのは確かに心苦しいと思うけれど、もう弁護士に相談してあるといえば、安心なさると思いますよ!ここから両親が弁護士を探したり法律を調べたり、バタバタしないといけないことはない訳だから。」
私「ああ確かに!それはそうですね。」

なんとなくこれからやることが腑に落ちて事務所を出た。友人たち(アベンジャーズ)に今日の状況を報告したところ、一歩前進と大変喜んでくれた。どうにかなりそうだぞ、と半月ぶりに明るい気持ちになり、ユニクロで春物の服を買ってその日は帰ったのだった。


まあ、そんな簡単にどうにかなってないんですけどね、、、!!!
(2023年10月現在、まだ離婚できてねえ!続き書きました!こちらからどうぞ!)



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