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テレビ番組で監禁されてぶっ壊れた俺が今思うこと①

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なすびさんの電波少年についての記事を何本か読んだ。

もう14年も前になるけど俺も3ヶ月間『だけ』ではあるがテレビで地獄の監禁生活をやった。

当時「なすびを見習え!」という言葉は耳にタコができるくらい言われた。なすびさんが記事で話したように俺もなすびさんを恨んだ。もう時効だし良いタイミングだからここに書き記そうかと思う。

あれは25歳だったかと思う。大学と吉本の養成所NSCを同時に卒業して芸人になって1ヶ月くらい。事務所からテレビのオーディションに行ってこいとの連絡が入った。それも2本同時に。テレ東の深夜とTBSのゴールデンとのこと。

NSCを卒業したてでテレビのオーディションがくるなんて稀。俺は舞い上がった。NSC入学時は同期の東京15期生だけで800人もいた。それが卒業したのは300人くらい?そんなに大勢のライバルがいるわけで、とにかくオーディションの連絡がくるだけでも俺らからするとすごい事なのだ。オーディションにもよるが基本的に声がかかるのは若手の各期10人組くらい。この時点で倍率は30倍とかにもなる。ここもかなり重要な話なので詳しく書いておく。

オーディションに呼ばれる=その期のエリート。俺はエリートではなかったが1.5軍くらいには食い込めていた。だからエリートが他の仕事で行けない時なんかは俺におこぼれがやってくる。もっと下層になると事務所から顔と名前すら覚えてもらえていない。だからこそ俺はおこぼれが回ってくる位置にいれた事に舞い上がった。それくらい売れていない芸人にとってオーディションとは貴重なものなのだ。

ライブでウケたって多少の人気があったって事務所から嫌われていたら事務所の匙加減ひとつでオーディションは回ってこない。だから毎日が不安だったデビューしたての俺にとっては受かってもいないのに声がかかった時点で天にも昇る気持ちだった。

吉本は芸人が多すぎるため吉本内で勝ち抜くだけでも大変なことなのだ。肌感ではあるが日本にいる芸人の7割くらいは吉本に所属しているといっても過言ではない。

そんな大帝国にいる吉本芸人でオーディションに呼ばれるということは既に吉本内のオーディションに勝ち残った猛者ということになる。

オーディションに呼ばれる吉本の芸人がプロ野球の二軍とするなら、めちゃくちゃ失礼な言い方ではあるが他の事務所は草野球みたいなもんだ。少し大袈裟にも聞こえるかもしれないが、これはお笑い界の事実である。

そんなこんなで俺はオーディションに行った。
まずはテレ東の深夜番組だった。初めての経験だったが「あれ?なんか上手くいった?」と、ふんわりとした手応えを感じた。そんで受かった。即いついつに収録みたいなメールが届いた。

おいおい!!俺半端ねえやんけ!!
はじめて受けたテレビのオーディションだぞ!!
一生テレビ出れない奴ばっかの世界で一発合格!!
まだデビューして1ケ月なんだぞ俺!!

とニヤニヤが止まらず地元の友達を集めて祝勝会をしてもらった。

そして次にTBSのゴールデンとだけ伝えられた番組のオーディションに行った。内容は何も聞かされず当日もなんの説明もされないので芸人全員が不安な表情で少し変な空気だった。2個上と1個上の先輩達と俺らの合計30人くらいが集まっていた。上から順に呼ばれていき5分くらいで戻ってくるのが繰り返された。

戻ってきた先輩達からは「バイト辞めれるかとか彼女いるかとか聞かれたわ!長期間系かもな!」みたいな情報が入ってきていた。

みんな5分で終わるなか10分戻ってこない芸人がいると「お!あいつ受かったんじゃね?」みたいに盛り上がったのを覚えている。

そして人は減っていき遂に俺らの番が回ってきた。俺は同期の中でも最後の一組前だったのを覚えている。

そしてようやく俺の番になった。ニコニコハキハキを意識して気合いを入れてオーディション会場に入った。色々な質問をされたが1の質問に対して俺は30返すくらい死ぬほど喋り倒した。そんな俺のオーディションは1時間以上も終わらなかった。

最後は「もう終電無くなるから終わりだよ!」といわれて終わったくらい続いた。ずっとスタッフが全員大爆笑しまくってるし、芸人になって良かったし俺の選択は間違ってなかったんだと失禁しそうなくらい嬉しかった。

今思えばあの爆笑は裏笑いみたいなもんで自分の実力で笑わせたといえるものではなかったが、とにかく会場が揺れるぐらい爆笑が起きまくった事に対し俺は人生で一番嬉しかった日を更新するくらいの気持ちだった。

そして残って待っててくれた同期に「おまえ絶対受かったろ!!」といわれまくりニヤニヤしながらダッシュで終電に乗って地元に帰った。俺の次の芸人は終電が間に合わずタクシーを出してもらったとのこと。帰り道でバッタリ会った地元の先輩でもある、や団の本間さんに頼み込み居酒屋に連れてってもらいオーディションの話を遅くまで話しまくったのを覚えている。

それから受かった事は確かだろうが、どんな企画かが一切わからない不安が押し寄せてきた。電波少年みたいに攫われるのか?外国とかに行くのか?そんな不安を解消するため「しばらく会えなくなるぞ!俺きっと有名人になるぞ!」と、まだ何も決まっていないのに地元の友達に何度も壮行会を開いてもらった。

オーディションから数日後の壮行会中、急に事務所から電話がかかってきた。「おい!吉本から電話だ!多分受かったって報告だぞ!」と友達に話して俺は興奮しながら電話に出た。

すると

「おまえなに勝手に仕事ダブルブッキングしてんだよ!!なめてんのか!!」

と急に怒鳴り散らされた。

は?え?どゆこと?

まじで意味がわからない。

テレ東のは受かってからメールで収録日が伝えられたしTBSに関しては日程どころか何一つ聞かされていない。

恐る恐る

「あの…TBSのは日程とか何も聞かされてないのですが…受かったという事ですか…?」

と尋ねると

「あっ!やべっ!聞かなかった事にしろ!とにかくおまえが全部悪い!」

と吉本お得意の『擦り付け』が発動した。そもそもTBSに関しては多分ドッキリ系で俺が日程を知ってるわけがない。しかし吉本は「スタッフが絶対に伝えている!おまえの責任だ!」とキレ散らかした。そんで俺は多分ドッキリ系なのに受かった事も知ってしまった。

吉本芸人になって、たった1ヶ月にして早々と吉本のヤバさを思い知らされた。一応同期にも聞いたが誰も日程なんて伝えられていないと言っていた。NSC時代は少しでも問題を起こすと理不尽に即クビにされるのでデビューしたての俺はオーディションの結果どころか、ダブルブッキングしてしまった事に対する罰としてクビやら謹慎にされるんじゃないかという不安まで抱える事になった。

今考えると当時の吉本のヤバさはガチで半端ない。

と、ここまで長々と書いたのにまだ本題に入れていない。でも本題に入るまでにデビューしたての芸人が、どれくらい色んな権力や不安に脅えていたかは絶対に知っておいてほしい話なのだ。これを知ってるか知らないかでは監禁生活の話も全く違った捉え方になりうるから。

それでは本題の監禁生活について書いていく。

先輩芸人から電話がありW杯見るから終電後に三茶に集合と伝えられる。

俺は勘が良い。
それもめちゃくちゃ良い。

野球好きな先輩がサッカーを一緒に見よう?
サッカーの話なんて一度もした事ないのに?
しかも三茶?俺も先輩も交通の便が悪い三茶でサッカー見よう?

どう考えてもおかしいので俺は親や友人に連絡を入れた。「多分しばらく帰ってこれないし連絡取れなくなると思う」と。そして覚悟を決めて約束通り終電で三茶に向かって、まだ時間があるからとテキトーな1軒目で酒を飲んだ。

どうなるんだ!?一体何が起こるんだ!?とドキドキしていたが酒に弱い俺は1軒目で気持ち良くなってしまった。2軒目に移動する時には完璧に全てを忘れて純粋にW杯を楽しんでいた俺。確か本田がフリーキックを決めた瞬間だった。バチン!と急にテレビが消えた。俺らが騒ぎすぎて店主がキレてテレビを消したのかと思い焦ったのを覚えている。

しかし次の瞬間、テレビにロンブーの淳さんが映った。

その瞬間に全てを思い出し我に返った。そうだった。今日ドッキリだったんだった。なんで売れない芸人が三茶の高そうな店を貸切でW杯なんて見てんだよ!どう考えてもおかしいだろ!と思ったが、あとで考えるとまじで酔っ払って忘れてて良かった。

テレビに映る淳さんと話して外に連れていかれロケバスに乗せられた。この時は遂に夢のような時間が始まるんだと俺は思っていた。淳さんとのやりとりもウケにウケた。これで俺も芸能人の仲間入りができるんだと人生で一番嬉しい日が再び更新されたような気持ちだった。

そのまま目隠しとヘッドフォンをされて俺はどこかに連れて行かれた。その移動中も次は何を話そうかとか色々と考えて俺はドキドキワクワクしていた。出発してからヘッドフォンから流れていた曲が5回くらいで目的地に到着した。1曲4分として5回で20分くらいだから都内から出ていないのはわかった。山とか森にでも連れて行かれる気がしていたので少し安心した。

着いた場所はマンションの一室だった。俺が行う企画は一切の情報がない中で暮らせというだけのものだった。淳さんは企画説明を終えると足早に帰っていった。あんまり覚えていないけどスタッフと軽く何かを話してその日は寝たような気がする。

朝になって起きてみたが何も起こらなかった。布団と机とテーブルと日記帳とペンしかない部屋。そこで定期的に弁当だけ支給される24時間一人ぼっちの何もない生活が始まった。

俺が狂うまで残り3日。


つづく

長くなりすぎたので分けて書く事にします。
また次回も、よろしくお願いします。

⚠️せっかくなので有料ちょい足し
※別に話の内容とは関係ないので読まなくても大丈夫です

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