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トンボ その狩猟法は3億年前に確立していた⁉︎


蜻蛉 (トンボ)


昆虫綱、トンボ目に属する昆虫で、地球上に
古くから存在している生物のひとつであり、
化石としても残されている。


その起源を辿ってみると約3億年前の石炭紀
(約3億6千万年前〜3億年前)までにも遡り
人類が形も決まっていない時代の事である。


この時代には現在のトンボに似た祖先である
巨大な昆虫が存在していた。代表的なもので
翼を広げた時のその幅が70cmにも達する
『メガネウラ』(MEGANEURA)なる巨大
なトンボの仲間が知られている。


このメガネウラなど祖先的なトンボは、当時
の地球の酸素濃度が現在よりも高かった為に
大きな体でも維持できたと考えられている。
現在のトンボとの比較でそのサイズは桁違い
だが、形態的にほぼ同じ構造を持っていた。



この様に、トンボは昆虫の中でも非常に長い
進化の歴史を持つグループで、数億年に渡り
生き延びてきた『生きた化石』のひとつでも
ある。そして空中を飛来しながら獲物を捕獲
しながら捕食するそのスタイルも古くに確立
していたのである。


現代のトンボの世界に話を移そう。トンボの
その生息地は、世界中の広範囲に分布をして
おり、池、川、湿地と水辺に多く見られる。
世界にはその種類は5000種で、日本には
200種のトンボがいる。


体の構造は、細長い体、大型の複眼、2対の
大きな翅を持ち、飛翔能力が他の虫類よりも
高いことで知られている。大型の複眼は非常
に発達しており、広範囲の視野を持つ事から
獲物を捉えるのに適しているものとなる。


その生態は、幼虫の時期には『ヤゴ』の名称
で呼ばれており、水中で生活をしている。
ヤゴは捕食型の肉食であり、小魚や昆虫類を
強靭な顎を瞬時に伸ばして捕らえ、これらを
食すものである。その貪欲なる食欲は水槽中
のメダカやオタマジャクシを片っ端から食し
全滅させてしまう勢いがある。なので、屋外
で小魚などを飼う場合はトンボの対策は必要
となる。


成虫になると水辺周辺を主体として飛び回り
主に小さな昆虫、蚊(カ)や、蠅(ハエ)を
捕食する。トンボは優れた飛行能力を持って
おり、ホバリング、急な方向転換や急停止、
急上昇などの複雑な飛び方が可能な昆虫。


この空中を縦横無尽に飛び回って獲物を的確
に捕えるシステムを解説してみようと思う。



■ トンボの巨大なドーム状の目


トンボの複眼(複数の小さな目の集まり)は
その飛行能力と捕食行動において非常に重要
な役割を果たしている。複眼は個々の小さな
視覚ユニット『小眼』(オマチディア)から
構成されており、これによりトンボは広範囲
かつ詳細に周囲を把握することができる。


トンボの複眼は、頭部の大部分を占めており
ほぼ360度の視野を確保している。これに
より、後ろや横にいる獲物や敵を的確に感知
する事が実現できるものである。この巨大な
複眼が重いと高速移動に支障をきたす事から
キャノピー状に構成されたものは軽いながら
強度を保っており、その中はほぼほぼ空洞と
なっている。コレはトンボを後頭部から撮影
したもので確認するとよく分かる。


トンボの複眼の特性として、動いている物体
を非常に敏感に察知できるシステムが搭載、
飛来する小さな虫の動きも即座に捕らえる事
ができるものとなる。


トンボの視覚処理速度は非常に速く、1秒間
に多くのフレームを視覚的に高速処理できる
『フリッカー融合頻度』が高く設定されており
高速移動の獲物も鮮明に捉える事ができる。
大型のオニヤンマは、蚊や蠅だけではなくて
シオカラトンボ、ムシヒキアブなど高速飛来
する虫なども背後から襲って、捕食する。


トンボは高速で飛行しながらも、複眼を活用
して獲物の位置を正確に把握し、飛行経路を
即座に調整して捕獲する。トンボには高度な
飛行制御能力が備わっており、急な方向転換
やホバリングが可能で、複眼からの視覚情報
をもとに獲物に向け迅速かつ正確に接近する
ことができるのである。


このように、トンボの複眼は広範囲を捉える
視野、動く物体への高い感度、そして高速な
視覚処理が組み合わさり、飛行中に他の虫類
を正確に捕らえるための重要な能力となって
いる。



■ 空気抵抗を抑えた流線型の軽量ボディ


一般的な戦闘機においても機動性を考えると
機体が軽量である事は重要である様にトンボ
の身体もまたその軽量性が重要となる。


トンボの身体が薄い理由に、優れた飛行能力
を可能とした形状となっている事が挙げられ
空気抵抗を最小限に抑えるために薄く流線型
になっている。これにより速く正確に飛行し
空中での捕食や逃避行動が効率的に行える様
になっている。また、薄い体は空中での方向
転換やホバリングの際に重要な役割を果たし
狭い空間での動きや急な旋回も容易になる。


また、軽量ゆえエネルギーの消費を抑える事
にもつながり、長時間にわたり効率的に飛ぶ
ことができる。これにより、獲物を捕まえる
ための飛行や長距離の移動において、少ない
エネルギーで行動できるのである。




■ 薄い羽に隠された秘密


トンボをグルグルと指を回し捕まえる遊びは
楽しくて、子供の頃は何度もコレでトンボを
捕まえたものである。だが、この時にいつも
気をつけていたのは、トンボの繊細な羽根を
痛めない事である。この羽根が痛む事は即ち
トンボにとっては死を意味するからである。


トンボの薄い羽根の厚みは種類により違うが
3〜5ミクロンと、とても薄いものである。
分かり易く換算すると、3/1000mm〜
5/1000mmの厚さである。これだけで
その薄さが分かるものだが、この羽根を秒間
に30〜50回羽ばたかせるのである。この
羽ばたきの回数は、ハエやハチが秒間数百回
も羽ばたくのよりも少ないのだが、4枚羽根
が独立して違う動きをして縦横無尽に飛ぶ為
逆にこの羽ばたきの回数で十分なのである。


この薄い羽根が、最小限の重量でありながら
強度を保っている理由は、羽の独自の構造に
ある。トンボの羽は、軽くて透明な膜で構成
されている一方で、強度や柔軟性を持つ為の
巧妙なデザインが施されている。その羽根に
走る『脈』(ミャク)と呼ばれる網目構造だが
非常に薄い膜とそれを支える網目状の骨格の
『脈』で構成されている。この脈こそが羽根の
全体を支える骨格として働き、軽量ながらも
十分な強度を与えている。脈は羽全体に均等
に分布しており、細かい網目状のパターンを
形成することで、風圧や衝撃にも耐える構造
となるものである。


またこの羽根には、剛性の高い縁(エッジ)
構造が施されており、膜の部分より特に厚く
剛性が高くなっている。この強化された縁の
構造は、飛行中の羽にかかる空気抵抗や外部
からの物理的な衝撃に対し、羽を保護し安定
させる役割を果たしている。こうした強い縁
の存在より羽根が簡単に破れたり曲がったり
する事を防ぐ構造となっている。



■ その脚は、獲物を逃さぬ空飛ぶ捕虫網


トンボは華麗な飛行能力だけでなく、多足
(6本の脚)を巧みに使い獲物を捕らえる
事でも知られている。トンボの多足は飛行中
の捕食行動に特化した役割を果たしている為
空中の獲物捕獲において極めて効果的である。


トンボの6本脚には細かい棘があり、これが
獲物をしっかりと捕まえる為の『捕虫網』と
しての役割を果たしている。これにより捕獲
した獲物が逃げ出すことを防ぐのである。


トンボの6本の多足は、前脚・中脚・後脚と
それぞれに異なる役割を担っている。前脚は
獲物を掴むために、中脚と後脚は獲物を固定
するために使われる。




■ 口は獲物を瞬時に粉砕するミキサー


トンボを羽を痛めない様に、優しく捕まえて
その尻尾の先端(生殖器)を掴むと、本能から
大口を開けて威嚇してくるのだが、この時に
視認できる口中の構造は、多くの刃物が並ぶ
ミキサーの様になっている。トンボによって
捕虫網の様な脚に捕えられた獲物は、瞬時に
このミキサーマウスにより粉砕されてしまう
のである。





■ トンボの捕食の流れをおさらい


1、トンボは優れた視覚で、空中を飛来する
  獲物を感知、高速飛行で獲物に接近

 
2、獲物に近づくと、トンボは前脚を前方に
  伸ばし、他の脚も連動し『捕虫網』の様な
  形を作り獲物を空中で囲い込む準備に入る


3、トンボが獲物近くに到達し、6本の脚を
  素早く閉じ獲物を捕獲。この動作は一瞬
  で行われ、獲物は逃げる事は不可能となる


4、捕獲後、トンボは空中で飛びながら脚で
  獲物を拘束し、大顎で獲物を噛み砕いて
  食べ始める。獲物は細かく粉砕される為
  殆ど無抵抗のまま、トンボに食される


トンボの多足を活用した獲物の捕獲は、視覚的
能力と飛行技術、そして巧妙な足の使い方とが
融合した優秀な捕食戦略である。トンボは空中
で巧みに多足を使って、獲物を逃さずに素早く
捕らえて食べる事ができる優れた捕食者である。
中でもオニヤンマはあのスズメバチを上空から
襲い捕獲し食べてしまうほどの猛者である。




■ 戦国時代に『勝ち虫』と呼ばれたトンボ


トンボは、日本に於いて戦国時代の世の中で
『勝ち虫』(カチムシ)と呼ばれていた。


その理由は『決して後ろに飛ばない』虫だと
信じられていたことに由来している。実際は
よく観察すると前を向きながら敵対する虫に
後ろへと飛ぶ姿は観察できるのだが、一旦は
それは置いておいて。トンボは常に前進して
後退する事がない為、戦国時代の世において
『勝利に向かって進む』との縁起を担ぐ象徴
とされてきた虫である。


この事から、トンボの飾りが武具や兜などに
取り入れられる事も多く、勝利をもたらす虫
として尊重されてきたものである。


トンボが後ろに下がらないその姿から武士の
決して退かぬという精神性を『不退転の覚悟』
とも結びつけられたものであった。


この様に、トンボは日本の文化において前進
し続ける象徴であり、勝利や成功を祈る為の
縁起の良い虫とされていたのである。


■ 『勝ち虫』として武具の装飾に使われたもの



■ トンボを家紋にしたもの




■ トンボ型の蚊よけグッズは本当に効くのか?

私も面白いとストラップタイプとワイヤー式の
2種を購入してみたが、何度か使って試すも
その効果は感じられずに、今は部屋の中に飾り
として置いてある。

そもそもが、蚊の視力はとても悪いものであり
我々人のもつ視力の何百分の一と云われており
人に寄ってくるのは、呼気中にある二酸化炭素、
体温の感知や、汗などの匂いに寄ってくるもの
である。夕方の薄暗くなる前に私のマンション
の自転車置き場で『おにやんま君』を試したが
全く効かずに、早々に私は退散したのである。

トンボ柄シャツなど、トンボ好きの子供が沢山
寄ってくるかもであり、ギャグ程度にとどめて
おくグッズ類と考える。



知人の女性が野良仕事の際の暑さ対策用に購入
した空調服では、その風によって顔周辺の蚊も
吹き飛ばされ、刺される事が激減したとの話も
ネット上でも多数上がる事から、こちらの方が
効果ありと思われる。トンボに近いメガネ写真
のものを掲載した。



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和名 蜻蛉 (トンボ)
   蜻蜓 (トンボ)
洋名 ドラゴンフライ
   (DRAGONFLY)
学名 オドナタ
   (ODONATA)
分類 昆虫綱、トンボ目
種類 トンボ類
分布 世界中
出現 春〜秋
種類 世界 5000種
   日本 200種
食性 幼虫(ヤゴ) 小魚など、水生昆虫など
   成虫(トンボ) 蚊、蠅、虻、蜂
撮影 近畿圏の各所

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