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定家蔓


定家蔓 (テイカカズラ) の原種に近い仲間。
よく玄関先に飾られる鮮やかな白色や桃色が
目立つものが初雪蔓(ハツユキカズラ)の名
で呼ばれるが、品種交配よって生み出された
園芸品種の事となる。


あちらもとても可愛いらしくて好きであるが
今回のものは自然環境の中で頑張って生きて
いるものでなかなかに葉にも味わいがある。
緑の葉の中、赤い葉が現れる葉姿も美しい。


定家蔓は花もまた魅力的なカタチと香りである。
白い五片の花びらが風車の様な独特のカタチと
中央部の黄色いオシベ姿がとても素敵である。
アジアンジャスミンの名通り芳香も甘くて良い。



さて、この植物につく定家蔓(テイカカズラ)
の名前は何の由来から来るものなのだろうか。
「定家」は、能の謡曲である「定家」に由来、
藤原定家は歌人であり、サダイエが本来の名の
読み方で音読みではテイカと呼ばれている。
小倉百人一首で権中納言定家の名で詠んだのが


「来ぬ人を 待つ穂の浦の 夕なぎに 
 焼くや藻塩の 身もこがれつつ」



藤原定家は式子内親王(シキシナイシンノウ)
という深い恋仲の女性がいて、相思相愛関係に
ありながら、両家の反対もあり互いに恋こがれ
ながらも逢うに逢えない日々が続く。


「山ふかみ 春ともしらぬ 松の戸に
 たえだえかかる 雪の玉水」


式子内親王は皇族の身ゆえ、定家との恋仲など
は認められず上の句には春の来ない自身の事を
謳ったものと思われる。その定家への想いから
独り身のまま彼女は寂しくその生涯を終える。
享年五十二歳であった。


その死を知った定家は嘆き悲しんだ。


やがて、藤原定家自身も寂しくこの世を去る。
式子内親王の墓石には、この定家蔓が巻き付く
ようにそれを覆い尽くす様だったという。定家
の式子内親王へのその想いの深さを知る人達は
この植物が定家の思いの化身であるものと判断
してこの植物を定家蔓と呼ぶ様になったもので
ある。


死して初めて抱擁をする姿に見えた、この蔓の
植物は誰も墓石からは取り除く事はせずに逆に
皆がそれを前に手を合わせたという。


昔も今も、人が人を想うことには変わりはない
のである。もしもこの花を見かける事があれば
そんな現世で結ばれる事の出来なかった男女の
強い想いと悲しみとを、その花姿に重ねながら
見守ってあげて欲しいと思う。



和名 定家蔓 (テイカカズラ)
   長葉定家蔓 (ナガバテイカカズラ)
洋名 アジアン ジャスミン
   (ASIAN JASMINE)
学名 トラチェロスペルマム アジアティカム
   (TRACHELOSPERMUM ASIATICUM)
分類 リンドウ目、キョウチクトウ科、
   テイカカズラ属
種類 多年生草本
草丈 15〜600cm
開花 春〜秋
原産 日本
言葉 爽やかな笑顔
   優美な女性
   優雅
   依存
撮影 西宮の山中(葉)
   京都伏見区(葉)
   大阪府淀川区(花)


下のものは、園芸品種の定家蔓
初雪蔓(ハツユキカズラ)となる


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