【毎週ショートショートnote】お題:「長距離恋愛販売中」(523文字)
演劇部の僕は、興味本位でレンタル演劇派遣店を訪れた。
「いらっしゃいませ、ここでは色々な役者を取り揃えております」
「一番安くて、手頃にレンタルできるものありますか?」
「お客さん恋人はいますか?」
「‥いません」
「好きな人はいますか?」
「…わかりません」
「なら、『長距離恋愛の彼女』がおススメです。本人とは会えないのですが、恋人同士の様な電話やメールのやり取りが出来ます」
「何の意味があるんですか?」
「長距離恋愛は、遠くて近い恋愛です、会いたいのに会えない」
「辛すぎて買う人がいるわけないでしょ」
「最初に辛すぎる恋愛を経験すると、後の恋愛が楽になりますよ」
「なるほど」
僕は「長距離恋愛の彼女」をレンタルした。毎晩メールが送られて、「一緒に満月を見ようよ」週1回は電話もできた。
―会えないけど、近くにいる気がするー
<学園祭の日、僕のクラスは模擬店で綿菓子を売っていた>
レンタル彼女に画像を送ってあげようと、スマホで写真を撮っていると、隣の席で同じ部活の恵理子が話し掛けてきた。
「あれ、何を撮ってるの?」
「え、彼女に送る写真」
「ふーん…見かけによらず、やるねぇ」と明るく笑って彼女は去っていた。
近くて遠い存在に、胸が張り裂けそうになった