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私のショートショートの広場|わかりのぽん

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私がショートショート企画に投稿した作品を集めました。 推理・恋愛・ホラー・シチュエーション作品等、幅広いジャンルに挑戦しています。ショーショートはオチが重要です
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記事一覧

【毎週ショートショート】お題:バンドを組む残像(495文字)

あの日、高校の文化祭でバンドを組んだ時に奏でた音の残像は、今も心に深く刻み込まれている。 数十年ぶりに、バンドメンバーのテルに偶然出会った。 「なぁ、またバンドしようぜ」私は思わず笑ってしまった。 「今更、楽器なんて・・もう忘れたよ」と答えると、「楽器は”楽”な”器”だろ。音がでればいいんだよ」と彼は笑った。 他のメンバーに連絡を取り、1日限りのバンドを再結成した。 名前は「休日のバンド」 ギターのテルは大工になっており、ノコギリをビョンビョン震わせて音を奏でた。

【毎週ショートショートnote】お題:可愛い子には変化をさせよ

美容整形がブームになった。 昔は二重瞼や歯並び矯正等、部分的な整形だけであったが、今では鼻や顎の骨を削ったり、脂肪を吸引させたりと、元の原型を変えて美人にできる。 マスコミは【可愛い子には変化(へんげ)をさせよ】のキャッチフレーズで美容整形のブームを煽った。娘が二十歳になると、お祝いに美容整形させる親が続出した。 <美容整形がブームとなり問題が多発> ①子供が親に似ていない ⇒婚姻前には卒業アルバムの開示が必須 ⇒出産はDNA鑑定がセットになる ②美容整形後に顔写真

【毎週ショートショートnote】お題:残り物には懺悔がある

「どうして俺をチームに入れたんですか?」 上司に俺を選んだ理由をしつこく聞いてみた 俺は社運を賭けたプロジェクトチームの選考で最後に抜擢された。俺は問題社員であると自覚している。 案の定、会議では他メンバーとの激しい口論になった 「そんなこと、できっこない」 俺は提案に難癖を付け、会議では生産性の無い行動に終始した。 <その後、プロジェクトは成功した> ー俺は何もしていない 「働きアリを知ってるか?よく働くアリが全体の2割、普通に働くアリが7割、働かないアリが

【毎週ショートショートnote】裏お題:ひらめき膝

朝起きたら膝が笑っていた。 ゲラゲラと声を上げて笑っている 「うるさいから、黙れよ」 「うるせー!今まで大人しくしてたんだ。自由に笑わせろや」 返事をしてきた。どうやら知能があるらしい。 俺はこの右膝を「右膝小僧」と名付けた。 <右膝小僧はTVで紹介された> 俺は顔出しNGで、右膝小僧だけが喋りまくっている。 「ピザって10回言ってみて~ ピザピザ・・」 「じゃ俺は? ”膝でーす” 💣」 ー持ちネタまで作ったらしい <有名になると右膝小僧は権利を主張し出

ショートショート:ときめきピザ(562文字)

「いけない、アタシったら今日も遅刻よ」 私はピザをくわえながら学校へ急いで走る。 曲がり角で同じ学校の男子とぶつかった。 「イテテ・・いきなり飛び出してくるなよ!」 「あなたこそ、ちゃんと前向いて歩きなさいよ!」 <もう最悪ー遅刻しちゃった> 教室に入って友達と話していると 「そこ!静かにしなさい」 先生が入ってきて、転校生の男子が紹介された。男子の制服にはピザがべったりと付いている。 「あっ!あの時の!」 授業が始まったが、朝食ピザを落として何も食べてい

【毎週ショートショートnote】お題:タンバリン湿原&おまけ

俺はフリーの記者で、人付き合いが苦手だ。 読者から「避暑地の湿原で、謎の集団の合宿が行われており、夜にタンバリンの音が聞こえる」との情報を入手。 俺は避暑地の人里離れた湿原に向かった。集団は昼にBBQをしてくつろいでおり、怪しいところはない。しかし、夜になると全員がタンバリンを一心不乱に振りだした。 「曲者だッ!」 写真を撮ろうとした時に、関係者に見つかって拘束された。俺が記者だとわかると激しく動揺した。 「実は、私達はカラオケが苦手な人の集いなのです」 「無理や

【毎週ショートショートnote】お題:モンブラン失言(511文字)

俺は美容液を売っている会社で、キャンペーンの一環として「SNS美肌コンテスト」を開催した。 勝者は誰だって良い。いなくたっていい。 敗者にSNSで「この化粧品で、また頑張りましょう」と売りつけるのが目的だからだ。 1次審査は本気の選考を行う⇒1次審査の敗者が上客 敗者に営業するには”落とした理由”が必要となる。 主催者が直接言うと客が逃げる。そこでスケープゴートを用意する 主催者の意思で動く実体のない人物(?)を間に挟んで、本気の好き勝手を言わせる。敗者を晒しもの

【毎週ショートショートnote】裏お題:入浴委譲&おまけ

休日に風呂が故障し、買った店に電話をした。 「あーもう手遅れですかね」 「急に故障したんだ。これで手遅なら、いつ電話するんだ」 「せめて、買う前なら」 「ふざけるなよ」 <暫くして、家に修理屋が来た> 「○○メーカーの方から着ました」 「風呂が故障した早く直してくれ」 「リモコンが水に濡れてダメになってます。買い替えをおススメします」 「なんで買い替える必要があるんだ?」 「風呂は2万円、リモコンは5万円。工賃を考えたら、買い替えた方がお得です。今ならキャ

【毎週ショートショートnote】お題:誘惑銀杏<嘘の女神>664文字

「金杏と銀杏 お前が落としたのはどっちだ?」 私は学術員で遺跡を調査している時、禁足地の山奥の池で女神と遭遇した。 「いいえ、私が落としたのはどんぐりです」 「お前、話を聞いてないな。どちらかを選べと言っているのだ。」 足が固まって動かなくなった。逃げ出したり、黙っている選択肢はない。 「答えに何の意味が?」 「人は自分勝手で、嘘や欺瞞に満ちてこの上なく醜い。お前を試してみよう。正直に答えたら、この黄金の金杏と香ばしい銀杏を両方授ける。」 「・・この金杏は私の母

#毎週ショートショートnote【オバケレインコート】裏のお題、【花冷え全員集合】

「ごめん、ゲームのイベントあったわ」 これで5人目だ 大学のサークル仲間で花見をしようと誘ったが、今のところ誰も来ない。場所取りをして、弁当、酒、おつまみも揃えたというのに。 まぁ、いいさ。 最低でも香澄だけくればいい。 彼女から着信があった 「ごめんなさい。犬の機嫌が悪くて・・」 俺の中で糸が切れた音がした 「お前ら全員と絶交する!俺の貸した講義ノート返せよ!おい香澄!服や指輪は全部返せ」とLINEで一斉送信してやった。 しばらくたって返信が来た 「俺達

#毎週ショートショートnote【オバケレインコート】

【非常用:オバケレインコート】 引っ越してきた村に設置されており、レインコートがアクリル板の箱に入っている。 『オバケが出たら、レインコートを着て動かないこと。オバケは仲間と勘違いして襲ってきません』と注意書きがあった。 何かのいたずらかと思ったが、町内会のロゴが入っており、周りにはお供え物まである。善意の傘の様なものか? ある日、扉が開いており、レインコートが汚れていた 私が暫く観察していると 町内会のお年寄りがやってきて、新しいレインコートに入れ替えている。

#毎週ショートショートnote【深煎り入学式】及び裏のお題【モカ入り卒業式】

「白馬の王子は古いわー」 高校3年の美加は呟いた。輝比高校の入学式はいつもそうです。 この学校は「個性尊重」 日本で初めて「制服無・校則無」を取り入れ、全国各地から特別な人が集まる学校となっています。 入学式は輝比(こうひ)と掛けて「深煎り入学式」と呼ばれ、モヒカン、着ぐるみ等のコスプレは当たり前。 個性を認めてもらいたい新入生が、スクールカーストの頂点に立つべく熱いパフォーマンスしています。 「ヘリコプターからの登校は惜しい!去年出たから2番煎じね」 「もう、

毎週ショートショートnote~お題【記憶冷凍】嘆きの斎藤<前編> 

「記憶銀行」 記憶を冷凍して保管することができる銀行だ 新しいモノ好きの斎藤は興味があった 「悲しい記憶を忘れたいお客様にご利用いただき、大変好評をいただいております。」 払えない金額ではない 「わかった。試してみよう」 記憶銀行から届いた封筒を開けた 「斎藤様 記録No.F25690」 俺の預けた記憶とは何だったのだろう?気になって夜も寝れなくなった。 「記憶を解凍したいのですが」 「わかりました。記憶の解凍は2億円です」 「ふざけるな!そんな金額払え

毎週ショートショートnote~【記憶冷凍」裏お題【2億斎藤】嘆きの斎藤<後編>481文字

俺は起業家として成功し、貯金が2億あったはずだが無くなっている。 それが何故だかは思い出せない。 安アパートでカップラーメンをすすりながら、4隅が黄色くなったブラウン管TVで年末歌合戦を見ていた。 歌合戦は大きなテコ入れをおこない、今や視聴率90%を誇っている それが「歌合戦2億円名前くじ」である これはTVで名前の抽選を行うものだ 的には漢字を書いたルーレットが回っている 「おっと!苗字は『斎』『藤』で「斎藤」さんです」 「2億斎藤さん~チャンス」 「名前