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ドラムを叩く時に考えているコト

今回は、ドラムを叩いている時や楽曲のドラムパターンを作る時にどんなことを考えているのか
という事について書いてみようかなと思います。

「考える」ことはミュージシャンにとって一番大切なことだと思いますし、
僕はずっと考えられるドラマーでありたいと思っています。

ここでの「考える」というのは
出している音の意味(理由)を考えるということです。

楽器を演奏する上で最も大切で難しい事であり、
これさえキチンと出来ていれば誰だってプロレベルでの演奏が出来ると僕は思っています。

一般的に、手数が多かったりフィジカル的に派手なフレーズを叩くことが出来るのが上手いドラマーだ
と勘違いされていることが多いです。

もちろんそういうジャンルもありますし、
テクニックがあることは正義です。あればあるほど良いと思います。

しかしそれ以上に必要なのは
そのフレーズを叩く理由だと思うんです。

歌のメロディに合わせてアクセントを付ける。
ギターの動きに合わせたフィルを入れる。ベースの動きを前に出すためにドラムは一歩下がる。など

具体的に説明しないと伝わりづらいとは思いますが、要するに
自分が叩いたフレーズは、なぜそれを選んだのかをキチンと説明出来てはじめて責任を持てる
ということです。

そういった考え方をすると、既存曲をカバーする時にも向き合い方が変わると思います。
多くの人は、自分が叩きたい曲のドラマーが
どうやって叩いているのかをコピーすると思います。その為に譜面に起こしてみたり耳コピしたりする訳ですが

そのドラマーがなぜそうやって叩いているのか
という視点で真似してみると、譜面に起こした時の感じ方や耳コピした時の聴こえ方がより明瞭になります。それは他のパートの音を聴くからです。

ドラムをコピーする為に他のパートをよく聴く事によって、そのドラマーが何を感じて何を考えて叩いているのかを想像することができます。


大学時代に師事していた師匠からこんなことを言われた事があります。
「誰よりも考え抜いたエイトビートが叩ければテクニックだけのドラマーなんて蹴散らせる」

これは今でもずっと胸に残っていますし、自分のプレイスタイルの指針となっている言葉です。


というわけで
エゾシカでのとあるリハの動画を使って
ワンコーラスだけですが、演奏中にどんな風に考えているのかを少しメモしてみました。

・「エスパー」で考えているコト
/Ezoshika Gourmet Club リハ


1つずつ軽く説明していきます。

Intro

まずイントロ
楽曲にとってはその曲のノリを説明するパートになります。「エスパー」は淡々とビートで踊ってほしい曲なので、余計なことはせずノリを覚えてもらえるようなパターンを心がけます。
合間に入れるハットオープンはシンセのフレーズのリズムに合わせて息継ぎのように入れます。少しビートに動きが出ますが、不定期に入れてしまうとビートのループ感が減るので周期は守って同じタイミングで入れます。


Aメロ①

Aメロの頭のシンバル一発ですが
これは音価の話です。(音の長さ)
大体どの曲もそうなのですがAメロの頭は一旦少し落としたいことが多いので、シンバルの音価を長くとりたいんです。
シンバルが実際に鳴っている音は同じなんですが、次にいつ音を出すかで音価は変わるので、腕の動きで出したい音価を調整します。音を伸ばしきってからハイハットを叩き始めます。

ドラムの音価に関しては少しややこしいのでまた別で取り上げてみようと思います。


Aメロ②

続いてAメロのビートに入ります
先程も言ったようにイントロと比べてテンションを落としたいので、ハイハットの刻みを減らします。
そのセクションでの軸となる一定の拍を「パルス」
といいますが、ここではパルスが8分音符から4分音符に変わっています。
パルス=何分音符を感じて演奏するか
というような認識で良いかと思います。

Bメロ①

Bメロに入りイントロと同じ8分音符のパルスに戻ります。
ここでベースのフレーズが変わります。ハイハット以外のフレーズは変えませんが、1拍目のキックと2拍目のスネアの間にスッポリベースが入るようなイメージでグルーヴを作ります。
また、パルスを変えたハイハットはアクセントを少し付けてベースのフレーズの後押し的なイメージで叩きます。


Bメロ②

ここはメロと歌詞に合わせるパターンです。
「程度」という歌詞のメロは少し独特でこだわってそうなので、ハイハットオープンで挟んであげることで少し強調してます。

Bメロ③

フィルのチョイスは毎回凄く難しいのですが、
ここは他楽器と合わせるのではなく
歌の「あぁ〜」に合わせて一緒に叫ぶ感じ。
フレーズ的には rrL rrL Rll rrL rrL Rll ですが、そんな事はどうでもいいです。叫んでそうなら何でもいいです。


1サビ①

サビに入ります。
ここでのパルスは4分音符。
サビのメロが

と、4分アクセントになっているので合わせます。

サビなのでハイハットの音を少しリッチにしたいのですが、オープンにしすぎるとうるさい。そんな時に自分がよく使うのが
左足のハイハットスタンドを閉じたまま右手で叩くタイミングでカカトを強めに下げることで、つま先の力が少しだけ弱まって
ハイハットの閉じ具合を弱まらせる

という方法です。ハーフオープンとはまた違う絶妙なニュアンスになるので、ハイハットのグラデーションの引き出しがめちゃくちゃ増えます。おすすめ。


1サビ②

基本的にこの曲は前半ずっと同じビートを続ける曲です。キックとスネアのパターンは一緒なので
ハイハットワークやスネアのゴーストによってセクションごとの印象を変えてます。
起承転結を作りづらい曲ほど少しの変化で印象が変わるのでそこは大事にしたいです。


1サビ③

この場面のフィルは
前半は歌合わせ、後半はギター合わせで考えています。ギターは毎回似たような温度感で弾いてくれますが、歌はその日の気分や体調でニュアンスが変わるので、強弱やタイム感はなるべく合わせるようにします。


Inter

ギターソロです。
どの曲でもソロのバッキングは難しいんですが
エスパーでは細かい音符で合わせにいくような演奏を選んでます。
今までパルスが4分音符で大きかったので
ギターソロの細かさに合わせて16分音符のフレーズを沢山使います。ゴーストも沢山入れて派手にします。
突然雰囲気をガラッと変えることでギターソロの抜け具合が良くなるような気がしています。


2A①

ギターソロから戻ってきてまだ少し熱量があるので
2Aの頭は少し仕掛けます。
歌メロと歌詞が潰れないようにリズムの重なりには気をつけつつ、あくまでも歌詞が前に出るように!
フィルを入れます。
フィル終わりはしっかり元のビートに戻って、安定感が戻る感じを楽しみます。


2A②

2Aも基本的には同じビートです。
メロが少し変わっているので、その部分のアクセントはしっかり合わせて変化を強調します。
こういうのが打ち合わせなくても各々のパートが変化したりすると楽しいですよね。アンサンブルしてる感が出ます。


楽しいね

というわけで
こんな風に色々考えて演奏してみると、同じビートが続く単調な曲でもとにかく楽しくなります。
難しい事はなにもしてないですし、鬼のようなフィルが入ることもないです。
でも楽曲に対する充実感は多少増やすことができたのではないでしょうか。

まぁこんな事は普通に聴いてても気付かないし
わざわざ説明するような事でもないと思います。

ですが、この「なんとなく充実してる感じ」
出すために沢山考えて演奏するのが何より楽しいですし、人知れず楽曲の支えになれていれば良いなぁと思います。

少しディープな話になってしまいましたが
自分が演奏する上で大切にしていることが
なんとなく伝われば良いなと思います。

まだまだ考える事に対しても未熟ですが
考えられるドラマーを目指して精進します。


※この楽曲のフル尺でのドラムはTwitterにあげているのでそちらも是非



○『エスパー』/Ezoshika Gourmet Club


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