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商品広告ではないことが、広告になっている広告事例

広告って嫌われるものですよね。
ネットサーフィンしているときに出てくるバナー、テレビ番組でいいところで入るCM…。
ぶっちゃけ、広告の仕事をしている人ですら「できれば見たくない」と思っている人も多いんじゃなかろうか。

「一番見てもらえるところで、宣伝したい!」という、これまでの広告がやってきた「枠」的な考え方の功罪は大きい。
「一番見てもらえるところ」は、企業にとっては最良の広告枠で、ユーザーにとっては「今いいところ!」だ。

どんな面白いCMを作ろうが、どんなに秀逸なバナーを作ろうが、嫌われていたら意味がない。

そのラブレターは、封を切ってもらえるか

「赤ちゃんが泣き止むCM」として有名な、ロッテの「カフカ」を手掛けた須田和博さんが、なんかの本で言っていた。

広告が、誰かが何かをメッセージを伝えたい、いわば「ラブレター」みたいなものだとしたら。

ユーザーはたくさんの企業からラブレターを受け取るめちゃモテ委員長である。

そんな中、どこかで買ったような、出来合いのデザインとプリントされた文字の封筒は開かれるだろうか?

問題は、ラブレターの中身のクオリティではなくて、「とりあえず、読んでみるか」と、こちらを向かせることが重要である。

売りたい気持ちは、下心である。
下心が見え見えのラブレターは、やっぱり嫌だ。

…というわけで、今回は「広告をしない」ことにこそ意味がある。
そんな事例の紹介です。

1.ゴリラ

2008年のカンヌで、日本人が「は、なんでこれが?」となった受賞作。
キャドバリーの「ゴリラ」。

別に商品に「落ちて」いないし、特に意味が分からない。

このTVCM”Gorilla”がリリースされた前年の2006年、キャドバリーは製品にサルモネラ菌が混入したことによる、合計2千万ポンド(約24億円)分の製品回収を行いました。
更に問題の報告及び対応の遅れから、罰金百万ポンド(約1億2千万円)の支払いを裁判所に命じられ、そのブランドは地に落ちた状態であり、名実ともに窮地に陥っていました。

結果として、広告のリリース後、商品Daily Milkの販売数は2006年の同時期から9%増加し、市場調査会社YouGovの公表によると、キャドバリーのブランドに対する市民の意識は20%向上したと述べています。

これ、商品がうんぬんとかでなく、ピンチに追い込まれたキャドバリーが「なんとしてもブランドイメージを変えなきゃ」と思ってリリースした広告なんですが…。

「ただ、ユーザーを楽しませよう。」
「めっちゃリアルなゴリラがいきなりドラム叩き出したら面白いよね。」
という考えのもと、作られました。

それでも、売上は回復した。

2.映画「湯豆腐」予告編

愛すべきオモコロより。

これ、なんのCMか分かる人ほとんどいないと思うんですが…
ドローンのCMとして制作されています。

映画っぽい演出って、ドローン一つあればできるんだぞ、ということを伝えるために作られたCMなんですが、いやほんとにそれっぽくできてる。

記事もあわせてどうぞ。

3.STILL FREE

「STILL FREE」は、アーティストのマーク・エコーが立ち上げたアパレルブランドであり、ブランドコンセプトは「自由を求める精神」や「あらゆる権威へのアンチ」である。

そんなSTILL FREEのWebムービーは、媒体費ほぼゼロで展開されたらしい。

内容は、真夜中の空港に忍び込んで、大統領専用ジェット機に「STILL FREE」と落書きする、というもの。

自由であるというブランドの「姿勢」を表す、非常に良い広告である。
(もちろん、実際には落書きしていない)

4.サントリー「話そう。」

サントリーの「話そう。」も、とても秀逸なブランド広告だと思う。

サントリーグループは、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、人との接触を減らすことが求められている中、「これまでも、これからも。私たちは、つながっている。」この言葉を大切に、今できることから取り組みを開始します。

創業以来、サントリーはお酒や飲料の提供を通じて、人と人とのコミュニケーション「話すこと」「つながること」を学んできました。こんな今だからこそ、「人と人が話す」その価値を改めて伝え、後押しするメッセージを発信できないかと考え、WEB動画を制作しました。

サントリー公式リリースより

特にサントリー製品をゴクゴク飲むわけではなく、有名人が話すだけなんだけど…。

芸能人たちにはたくさんのファンがいて、その人のリアルな今の笑顔が見れることに、どれだけの感謝が生まれただろうか…。

(ピスタチオの小澤くんが思いっきりクラフトボスの宣伝したのは、なんだったんだろうか…)

下心は見えないほうがいい。

「好きになってもらうこと」が目的の中に、色気、というか下心は不要である。
(本当に、本当に不要である!!)

あわよくば、収入を上げてやろう、とか。
どうせならキャンペーンの内容もちょっと入れられますか、とか。

メッセージを、研ぎ澄ますというか。
方向性をただすために。

そういった「下心」が見せることへのリスクを、本当にちゃんと考え直した方がいいと思った今日この頃でした。

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