映画感想文/『戦争と女の顔』

衝動的に見たくなったんで、『戦争と女の顔』を見てきました。
自己紹介記事は明日こそ書き終えよう。

まずはこの何とも言えない感想をぶつけさせて欲しい……

映画のあらすじ

ベラルーシのノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチによるノンフィクション「戦争は女の顔をしていない」を原案に、第2次世界大戦後のソ連(現ロシア)で生きる2人の女性の運命を描き、第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門で監督賞と国際批評家連盟賞を受賞した人間ドラマ。
第2次世界大戦に女性兵士として従軍したイーヤは、終戦直後の1945年、荒廃したレニングラード (現サンクトペテルブルク)の街の病院で、PTSDを抱えながら看護師として働いていた。しかし、ある日、PTSDによる発作のせいで面倒をみていた子どもを死なせてしまう。そこに子どもの母親で戦友でもあるマーシャが戦地から帰還。彼女もまた、イーヤと同じように心に大きな傷を抱えていた。心身ともにボロボロになった2人の元女性兵士は、なんとか自分たちの生活を再建しようとし、そのための道のりの先に希望を見いだすが……。
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前情報無しに見る映画じゃない

いや、これ、本当に原案を読んでない人が見たらただのチープな映画に見えてしまうんじゃないか……と思いました。
実際にレビューを見たら、上映中に寝るって意見もあったし、そのレビューを書いている方は大抵原案を読んでいない印象だった。

ちなみに、原案の『戦争は女の顔をしていない』についてはこの記事でも本当にちょっぴり触れているので、興味がある方はリンクからどうぞ。


良くも悪くもただただリアルな戦後映画だった。
本当にただただリアル。誇張されたような戦時中の回想もなく、悲劇の連続だけがフィクションじみた中でひたすら救いがない。
心底何とも言えない気分と兎に角感想書いて吐き出さなきゃって衝動だけ残った。

原案がインタビュー集なのでどう描くんだろうって思っていたら、本当にリアルすぎて……うん。

人の傷は、その痛みを埋める様は、時々すっごいチープだ。だって、そうだ。何も劇的なことは無い、ただの人なんだ。ただの人の話なんだよ。
奇跡的な何かがある訳でもない。
救ってくれる誰かがいる訳でもない。
そして、抱えるどうしようもない深さの傷は、経験者にしか正しく理解されない。

愛する人も、子どもも失って、ただ何かで自分の中を埋めたい。
映画の中で描かれるその狂気的なまでの執念と、その執念に答えようとする健気なのが贖罪なのかももう分からない友情なのか、愛情なのかもとうに見失ってるんだろう依存。

周りを傷付けるのも、自分を傷付けるのも容赦なくただただ埋まらない傷と対比する様に、画面は赤と緑に色付き、装飾品も増え、復興していく生活。
ただ、人の傷だけが埋まらない。

埋まるものでもないのだろう。
事実、今でも埋まってないんだろう。
蓋をして、隠しているだけで。

だからこそ、あのインタビューの生々しさがあるんだと思う。

あのインタビューは何も悲劇的な話ばかりじゃない。
第三者から見たらそりゃ非難しか受けないだろうな、という内容もあった。
でも、それが本人にとってのリアルな戦争で。
リアルって言うのは、そういう事なんだろう。
人の痛みなんてそれぞれだ、それがどれだけ人から見たら間違っていても。
理解できないものでも。
わかりやすい悲劇だけが戦争じゃない。
痛々しい回想だけが戦争の描き方じゃない。
こういう、どうしようもない傷から描く方法もあるんだなと思った。

映画中、自分でも理解できない衝動のまま2人の言動はどんどん悲劇に突っ走っていく。

希望を与えてくれるはずの何かや、無くしたものを取り戻すために、何かを利用して。偶に我に返って。それでも傷は埋まらなくて、希望も見えなくて。どうしようもないその痛みを理解してくれる相手はお互いしかいなくて。

現実では奇跡なんて起きない。
簡単に傷も埋まらない。

でも、ただ抱きしめ合う2人の傷がその間だけは少しでも痛まないように祈る映画だった。

頼むからみんな、本読んでから見てくれ…………。
見てると見てないで、全然感想が違うと思うから、本を読んでから見てくれ………………。

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