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舞台型と祭り型のオンラインサロン

※このnoteは昨日のnote「YouTubeからオンラインサロンへの流れ」からの続きです。

オンラインサロンの進化

オンラインサロンと一言にいっても、運営者がそこで何を実現したいかによって、大きく二種類のタイプに分けられると思う。

一つは、運営者が定期的にメンバー限定情報を提供するパターンである。使用するメディアはメールだけではなく、秘密のFacebookグループへの投稿や、限定公開のYouTube動画の配信などに多様化している。1対Nの交流が基本であるが、コメント欄などを介してメンバー同士の交流もある程度存在する。ここで便宜上、この種のオンラインサロンを舞台型と呼びたい。

もう一つは、運営者がやりたいことをメンバーと一緒になって実現したり、逆にメンバーのやりたいことを運営者とメンバーで支援するパターンである。メンバー限定の情報配信だけでなく、プロジェクトを共に成功に導く仲間としてメンバー間のN対Nの交流が盛んで、オフラインでの交流も多い。この種のオンラインサロンを祭り型と呼びたい。

オンラインサロンのメンバーの参加動機も、舞台型と祭り型では異なるだろう。舞台型は中心者が与えるものを消費する楽しさを求めて参加するが、祭り型は皆で企画し運営する楽しさ(もちろん、祭りのように自ら消費することも)を求めて参加することが多いだろう。どちらが優れているということはないが、より楽しさを求めるメンバーたちによって、舞台型から始めてもいずれ祭り型に自然と移行するのではないかと考えている。

祭り型オンラインサロンが開く可能性

祭り型では、何か新しいことを始めて、こなすべき作業が発生すると、それを外注するのではなく、サロンのメンバーができることは自ら進んで請け負う傾向がある。たとえば、Webサイトやアプリを作る、イベントを開催する、パッケージデザインをする、本を出版する、映画を作るなどの作業が出てくると、それが得意もしくは挑戦したいと思うメンバーが自ら手を挙げる傾向がある。

というのも、祭り型ではそもそも一緒になにかを作り上げて行く体験を求めて人が集まるから、そこで自らの能力が求められていればメンバー自らが喜んでその作業を引き受けるし、サロン側としても既にそのサロンのビジョンや価値観に賛同しているメンバーだから、説明や擦り合わせが省けるし仲間として安心して任せられるメリットがある。

もちろん、最初はプロ並みの成果を出すことは難しい。しかし多くのサロンでは優れた製品やサービスをアウトプットすることが目的ではなく、祭りのように皆で作り上げる体験を求めているため、その意味では失敗は悪いことではない。むしろ、すんなりと成功するよりは、皆で共有するストーリーや歴史としては、山あり谷ありの波乱万丈のプロジェクトの方がスリルがあって楽しく、好まれるのではないか。

だが、そのうちプロ集団も安心してはいられなくなるかもしれない。最近はプロシューマーという言葉があるように、個人であってもプロ同等のアウトプットを出せる環境が整いつつある。プロ集団を上回るクオリティの成果がオンラインサロンから量産されるのも時間の問題だろう。

祭り型オンラインサロンを、単純にビジョンがあって、そこに賛同する人たちがお金を払って集合する場と見ていると、その可能性や潜在能力を見誤る。そこには、今までは単なる趣味として浪費されていた尖った特技を持つ人々が活躍できる場が用意されている。多様性に富む人々がビジョンに賛同し一致団結することで、様々な体験を共有して楽しみながら、新たな価値を創造する組織として君臨することになるのである。

ギークハウスとオンラインサロン

手前味噌になってしまうが、僕には自らのビジョン実現の場を強烈に求めていた時期があった。2004年に博士号を授与され大企業の研究所にも採用され、周囲からは順風満帆な人生を歩んでいると見えていたかも知れない。しかし、心の奥底では自らのキャリアに息苦しさや違和感を感じ続けていた。もっと自由に、もっと楽しい研究をして、社会にダイレクトに還元したいと思っていた。

そう思って動いていたら、結果的に2011年には自分の運営するギークハウスができていた。ギークハウスはIT系のシェアハウスである。運営は大変だし赤字になることもあった。けれど、そんなことよりも、自分も住人の一人としてそこに一緒に住んでワイワイ議論したり新しいことをやったり、卒業生がどんどん立派に成長し、身に余るほど感謝されたりすることが、本当に嬉しかった。

楽しい体験をたくさんさせてもらえたし、住人にも一人でも多くの人が楽しい体験を積んでくれたらと思って運営を続けてきた。運営に貢献してくれた人たちの自己実現を応援するために、利益が出ればそれをほとんど還元することもあった。

振り返ってみれば、僕のギークハウスはシェアハウスというよりも、コミュニティとして運営してきた感覚がある。今の言葉で言えば、僕の作ったギークハウス武蔵小杉やギークハウス新丸子は単なるシェアハウスではなく、祭り型オンラインサロンだったのかも知れない。

ギークハウスに限らず、オンラインサロンはとは名乗らなくとも、それに近い形態がすでにあちこちに存在しているだろう。そのうちオンラインサロンの上位概念が生まれるのではないか。例えばこのnoteもクラウドファンディングも概念的には近く、今は舞台型に相当する形態だと思うが、ある時点から読者やサポーターが共にコミットする祭り型への転換が始まるかも知れない。

新たな経済圏が生まれる

今後、祭り型のオンラインサロンが進化し、さらに複数のオンラインサロンが連携することで、新たな経済圏が生まれ、本質的な働き方の変化が起こると思っている。

というところで、もう時間も無くなってきたので、また明日へ続く。

良いお年をお迎えください!

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