リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術 を読んで

仕事で良い結果を出してきたビジネスパーソンは、ついつい振り返る時間を後回しにしてしまい、結果を出す事に注力してしまいがちです。
ただただ突っ走って結果を出すということも大切ですが、振り返らなければ以下2つのリスクが伴います。
①他人に伝授できず、進化・成長が止まる
②過去の成功体験にしがみつく

自身の行動・考えを振り返ることが、このVUCAの時代において、個人や組織の成長の鍵となります。
本書ではその振り返り「リフレクション」の方法についてわかりやすく記載をされています。

リフレクション基本の5メソッド

メタ認知力を高めて自分を知る メタ認知•••認知している事を認知する
└自分の判断や意見を「意見」「経験」「感情」「価値観」に切り分けて可視化することによって、自分の内面を多面的に深掘りし、柔軟な思考を持つ事ができます。

⦅例⦆
意見:犬が好き
経験:昔から自宅で犬を飼っている
感情:喜び・安心
価値観:犬はかわいくて、癒しをくれる
この一方、犬が嫌いな人もいるので、そこからこのフレームに当てはめる事も可能です。

意識をしなければ、自己の認知(価値観)で判断しがちですが、4つに切り分けて考える事で、物事を多面的に見る事ができます。
また、他者と同じ物事に対して、このフレームワークを実施・共有することで、視野も広がると考えます。

❶自分を知る
└動機の源『内発的動機』を知る 動機の源:やりがいや喜びを感じる理由
例:仲間と一緒に取り組んで物事を達成した
  クリエイティビティが発揮できた
  誰もが無理だと思うゴールを達成した など
自分を知るリフレクション
◆キーワードリストを活用したリフレクション

キーワード
バランスのとれた生活/職業上の行い/チャレンジ/勇気・リスクテイク/職業上の成果社会的問題/名声・成功/パワー・影響力/正直/自己理解/オープンさ/良い人間関係/勤勉さ/孤独/瞑想/他者支援/仕事そのものの喜び/効率/物質的豊かさ/自立・独立/仕事の質/好奇心/精神性/未来思考/広範囲の関心/専門分野での評価/創造性・独自性/指導・育成/信条/真実の追求/成長・学習

⦅例⦆
意見:チャレンジ
経験:新入社員の時に会社にとって重要なプロジェクトメンバーとして仕事をした。優秀な先輩の下でアシスタント業務を行い、日々学びの連続だった。先輩たちは危機的な状況に陥った時でも、決して後ろ向きの議論をしなかった。このプロジェクトが完了するまで、その繰り返しだった
感情:誇らしい、わくわくとドキドキの連続
価値観:前向きさ、不可能への挑戦

◆日常の出来事を題材にしたリフレクション
⦅例⦆
意見:初めての大型受注の獲得にやりがいを感じた
経験:上司の指導を仰ぎ、丁寧に顧客と向き合い、成し遂げた実績。負担を感じた時期もあったが、周りの応援もあって、成果を出す事ができた。
感情:嬉しい、達成感
価値観:協力、仲間、感謝

◆腹が立ったことのリフレクション
└ネガティブな感情の時こそ自分が大切にしている価値観を見出せやすくなります
⦅例⦆
意見:会社の方向転換
経験:会社の方向転換で進めていた案件が中止になった。あと3ヶ月あれば成果が出せたのに、説明もなく納得いかない。
感情:悔しい
価値観:成果・結果、初志貫徹、オーナーシップ、責任

◆自分史のリフレクション
└自分史を作成し、カーブにあたる経験からリフレクションをすることにより、動機の源を明確にする事ができます。

⦅自分史のチャート例⦆

阪井のライフチャート

❷ビジョンを形成する

クリエイティブテンション:「現状を変えたい」「現状と理想のギャップを埋めたい」など、困難に打ち勝つエネルギー・内発的動機

◆実現したい事を明確にするリフレクション
⦅例⦆
意見:リフレクションを誰にとっても当たり前の習慣にする
経験:過去の成功体験を前提にしか物事を考えられない人と未来を創る議論をしても、理想の姿を描く事も、前進することも難しい。現状維持が死を意味すると言われているが、現状維持になってしまう。
感情:悲しい、怒り
価値観:境界線の外に出る、良い変化を創る

◆取り組んでいるテーマのリフレクション
└自分が何を実現したいのか、なぜ、そのことが大切なのかを自問することで、取り組みがさらに自分ごとになります
⦅10の問い⦆
「テーマ」「目的とビジョン」「動機の源とのつながり」「経験」「感情」「価値観」「誰のニーズ」「どのようなニーズ」「インパクト」「成功の評価軸」

上記のようなリフレクションから、自分自身のビジョンを明確にし、会社のビジョンとの接点を見つける事で、自分の動機を満たしながら、組織に還元する事ができるのではないでしょうか

❸経験から学ぶ

リフレクション:成功しても失敗しても、いずれにしても経験したからこそ知っていることがある、経験を知恵に変えることができる
※反省とは別

レベル1:結果のリフレクション
レベル2:他責のリフレクション
レベル3:行動のリフレクション
└自分の行動を振り返り、結果を結びつける事で、次に取るべき行動が見える
レベル4:内面のリフレクション
└行動の前提にある自分の考えを俯瞰することが可能になる
これまでのやり方が通用しないときや、何かに行き詰まりを感じた時に必要

【経験から学ぶリフレクションの実践】
step1:行動に振り返り
step2:想定していた結果と実際の結果
step3:経験の振り返り
step4:経験からの学び
step5:法則の定義
step6:行動計画
step7:疑問

❹多様な世界から学ぶ
step1:自分の考えを認知の4点セットでリフレクションする
step2:感情をコントロールし、評価判断を保留にする
step3:相手の意見を認知の4点セットで聞き取り、共感する※自分の解釈を加えない
上記を実践する事により、多様な価値観を学ぶことができ、自分の世界が広がる

❺アンラーンする
アンラーン(Unlearn)とは・・・過去の学び(成功体験)を手放す行為
step1:過去の成功体験のリフレクション
step2:アンラーンの先にある世界を想像してみる
step3:アンラーンする
何かに行き詰まったらアンラーンするタイミング
アンラーンで手に入れた新しいものの見方が、自分と一体化しているか、リフレクションを通してメタ認知する

リーダーシップを強化するためのリフレクション

リーダーシップ•••自分の言葉や行動、存在を通して、自分以外の人も主体的に動くようにしてしまう影響力
リーダーの条件•••未来に対する意図(目的、目標、ビジョン)を持っていること
チーム型リーダー•••全てのメンバーがリーダーシップを発揮すること
オーセンティックなリーダー•••自分らしさを体現したリーダー

ぶれない軸を持つ
ぶれない軸をつくるリフレクション
①過去にどのような選択をしてきたのか振り返る
②自分の使命、存在理由を明確にする
③自分が大切にしている価値観を明らかにする
④自分のビジョンを明確にする
⑤自分の強みを見つける
⑥自分が持つ、影響力の源泉を探す
⑦自分が抱く理想のリーダー像を考える

軸がぶれていないか点検するためには
└メタ認知⇨判断が自分の大切にしている価値観に基づいているかチェック
└信念、感情、思考、態度、行動の5つが一貫しているか確認

モチベーションが下がってしまった時には
自分の原点に戻るリフレクション
└なぜこの仕事を始めたのか なにを実現したいのか
マインドフルネス:今という瞬間への一切の評価判断を挟まない、気付きの状態
└リアルタイム・リフレクション(今起きている出来事や、この瞬間に感じている事をリフレクションする)がおすすめ
レジリエンス:人間が逆境からすばやく立ち直り、成長する能力
└レジリエンスを構成する8要素(自己認識力、自制心、精神的俊敏性、楽観性、自己効力感、つながり、遺伝子、ポジティブな社会制度)
グロースマインドセット:基本的資質は努力次第で伸ばす事ができるという信念
⇆フィックストマインドセット:努力しても伸ばす事ができないという心の在り方
└過去の成功体験をリフレクションし「フィックストマインドセット」から「グロースマインドセット」へ移行する

対話力・傾聴力を高める

対話を学びの手段として捉える
└対話では共感を伴う傾聴がポイント
共感:相手の考えや感情にもそれなりの理由があるという認識に立つ事
not相手の意見に賛同すること
⇨対立を恐れない
⇨他者の価値観に学ぶ

メンバーの自主性を引き出して成長させる

■主体性を育む
主体性:自らが定めた目的に対するコミットメント
人材育成の鉄則⇨相手に求める前に自らがその言動でモデルを示す

■自分の頭で考える力を育む
「Why (なぜ)」から考えるように促す⇨意見だけでなく「経験」「価値観」の観点から尋ねる
⇨自分は「なぜ」この考えに至ったかを自問する習慣が確立する
⇨思考力が深まる

■期待値で合意する
└誰もが自分のゴール(使命)を正しく理解する必要がある
しかし伝えたつもり、理解したつもりでスタートしてしまい期待値がずれてしまう事がある
そんな時にSMARTゴールで解釈のずれを解消
S (SPECIFIC):目標を具体的に
M (MEASURABLE):成功の評価軸を明確に
A (ACHIEVABLE):達成可能でかつチャレンジのある目標
R (RELEVANT):顧客や組織のニーズに応える意義のあるミッションである事
T (TIME):スケジュールを明確に

■経験・感情・価値観を聴き、信頼関係を構築する
└信頼関係を構築するために必要なのが聴く力⇨認知の4点セットで共感を伴う傾聴をする(過去の経験に基づく無意識の偏見を排除する)

■相手の強みを活かし、賞賛する
└自分にとって得意なことはできて当たり前のため気付きにくい
強みを自覚してもらうために•••ネガティブフィードバックの5倍褒める
褒める所が見つかりにくい場合⇨小さな事実を探して褒める

■成長を支援する
└的を得たフィードバックをする
└自分の部下に対する評価を認知の4点セットでメタ認知する
⇨事実・結果・理想の行動を伝える
⇨部下の意見に耳を傾ける

■自分の育成力を高め続ける
└結果や出来事のリフレクション、他者や環境のリフレクションで終わらない
⇨自分の行動のリフレクション、自分の内面のリフレクションも行う

まとめ

個人・組織等の具体例を記載しましたが、事実に対して認知の4点セット(意見・経験・感情・価値観)を行うことで、その事実を振り返ることが成長に繋がると感じました。

参考文献:リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術 
著者:熊平美香

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