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架空ホラーゲーム『Barter』①

夏休みに入る終業式の日、みんなが帰った教室で三人の女子生徒が話をしている。
烏の濡れ羽色のショートボブのうきの前で、椅子の上に仁王立ちをしている、亜麻色でミディアムロングのシャマが、コホンと咳払いをして話し出す。

シャマ(以下シャ
「えー、今日皆さんに集まっていただいたのは他でもありませんー……」

うき(以下う
「前置きはいいから。 私これからバイトあるので早くしてくださーい」

シャ「はい、でた! バイト!!」
う「声、デカイから!」

癖のある赤毛のやんは二人のやりとりを眺めてニコニコとしている。 やん(以下や

シャ「わたくし、ここ最近金欠でございまして、欲しいものがすぐに買えないという危機的状況にあります」

う「そんなの小学生の頃からずっとじゃん」

シャ「野次飛ばさない。 そこで、わたくし考えました。 部活を立ち上げようと!」

う「……なんで?」

シャ「その名も、物々交換部!! 説明します。 物々交換部とは、物と物を交換することです!!」
う「説明になってない」
シャ「そして、良き所で換金させていただくという画期的なシムテムになってます!」
う「ずるぅー! 詐欺じゃん」
シャ「ご賛同いただきました、皆様には僭越ながらこちらを……」

カバンから、何かを取り出すシャマ。
それを二人に手渡す。

う「今聞いたばっかだし、そもそも賛同もしてないしって何これ」

受け取った物を広げるうき
ネオン看板の様な模様と物々交換のロゴが入っているTシャツだった。

う「え? ダサっ」
や「……可愛い」
う「ウソでしょ?」
シャ「やんちゃんは気に入ってくれると思ってたぁ〜」
う「ちょっと待って、これ作ったの?」
シャ「うん」
う「そういうことしてるから、お金無くなるんじゃないの?!」
シャ「これは必要経費!! これからジャンジャン稼ぐんだよ!」
う「いや、やるなんて言ってないし。やんだって生徒会忙しいでしょ?」
や「うん、まあ……」
シャ「もう受け取ってしまったら、断れないからね」
う「無理矢理渡したくせに」

シャ「考えてみて。シフトやクレーマーとかに振り回されて、やっすい時給でこき使われてさ、私たちの一度きりの青春なんだよ?楽しまなきゃ!この夏!!三人で海行くし、プール行くし、花火にお泊まりもだよ!」
う「詰め込んでんな……」
や「博物館行きたい」
シャ「もう!行こう!!ついでに動物園も行こう!!」
や「パンダ見よう!!」
う「丸め込まれるな!」
や「うきちゃんも行くでしょ?」
う「行くに決まってんじゃん。でもそれとこれとはね」

すごい速さでSNSに投稿するシャマ。

『おはよー!
最近知った幸運爆上がり方法なんだけど、学校の裏口とか裏庭に今は使われてないロッカーって大体置いてあるじゃん。
そこに、自分は必要じゃないけど他の人は欲しいかもって思う物を入れるんって。数日後に見に行くと、入れた物が無くなってる場合があるんだって!そうなると幸運が訪れるらしいよ!試してみて!』

う「また、適当な事を……」
や「こんなので集まるのかな」
シャ「みんな、こういうのが好きなの」

ー続くー

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