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らんまん 六月


豊の秋花婿見惚れ光らす目
高砂聞こゆ八月大名
鏡割新郎新婦笑み溢れ
山桜接ぎ木の繋ぐDNA
姥桜時代の母の映る時

風鈴や永遠の別れが泣きじゃくり
簾抜け二人泣き合ふ声の見え
並び寝る蚊帳の別れの式前夜
白無垢の秋澄む光金屏風
秋晴に眩き姿高島田

木下闇鎮守の森の杉木立
挨拶を老木の待つ山萌えて
胴乱や採集習い春の山
川の岩優しき咲かせヤマツツジ
山笑ふそれぞれの道山全て

花のころ試み届けと押す暖簾
石堅し新酒生み出し水と米
宵闇に香流るる峰の月
春動く動かぬ夕餉きみ忘れ
春まけて世界は細か邪魔なきみ

春きざす下弦の月の屋根の横
反物の座敷いっぱい春の海
縁側の桜の病別れ時
春深し故郷の草君を待ち
咲け守る春の行方の行脚かな

中庭の踊りじゃれ合ひ紋白蝶
ひ孫抱く孫の夢見て花疲
山門を潜れば我も卒業生
父知らぬ父の顔して父花見
巣立ち鳥海の向こうへ草の道

かるたとり開始合図の鹿威し
床の間の花ない花入れ老いて祖母
嫁迎え皿鉢料理の春の宵
告白の理由長々春の月
先生を迎えん明日の朝櫻

税務官甑倒しのだいじな日
春に伏す奥の願ひや草の道
春めく日色白の君や衆目
春の朝帰省挨拶障子開け
代々のかるた勝負の奥座敷

春来たり釣書懐榛名山
打水の飛沫の白さ初訪問
聞こえ来て甑倒しの仕事唄
花の頃峠やみせて土佐の村
まず急かす造石税や春惜しむ

白服の夕顔の姫吾もとに
汗拭ひ白いリボンの強き意思
意思堅し貴女と生きん鳳仙花
吾誓う図鑑完成夏夕べ
炎ゆ夕日祝や我も裏長屋

目の眩む白いドレスや夏めく日
夏の朝釣書懐菓子司前
踊り切りワルツのリズム秋近し
精一杯英語の別れみなづき尽
帰りたく夕顔の咲く店の先

風死すや面相筆の撓る形
竹の音校舎に響き西瓜割
涼風やステップの音の軽やかさ
炎昼や並び押し花石熱き
熱々と夏の夜集ひ牛鍋屋

靴の音終えてレッスン簾捲く
ヒルムシロランプの下の顕微鏡
頂きの裂けて現るすっぽん茸
羽根のようきみ想ひ舞ひ夏を追ひ
手引書の心のままに秋迫る

一枚の印刷用紙夏の宵
標本の分類整理暑き午后
熱弁の冷やしうどんや温くなり
我忘れ晝顔夕顔両方
秋近し破り捨てたく牡丹の絵

汗かきてヒルガオの待つ印刷所
八月や茎葉と試し刷り上がり
雰囲気で異国語話し秋めく日
処暑の夜の顔も隠さず人さらひ
麥湯だすインキまみれや草が好き

筆はこぶ石は滑らか土用午后
肘台の手首嫋やか晩夏描き
晩夏光練習進み一二三
愛し人窓にちらりと暮の夏
食べたくて甘い和菓子や秋隣る

父の日や巣立ちの朝の抜け毛舞ふ
蚊帳売りや小さき声の聞こゆ街
腰伸ばし枕も重し夏の午后
棘棘のコンクリの端薊咲き
マタタビや意外な一面みつけて

新しき花を探さん蚊帳は隅
水打つやドイツの石のきめ細か
暖炉納む姿勢は目線ダンスかな
夏きざす手にキス刺す目プロポーズ
古簾待つ人来なく古き本

肌脱のインクの黒し印刷所
夏負けや素材は重しインクの香
水被りつ見井戸端の雪の下
古き本頼み置き夏の店先
帰らん土佐突っ伏し目覚む夏早し

葭障子墨伸ばしては墨の色
日除け越し腹掛け揺らし印刷屋
とりどりの色の菓子置き夏暖簾
石版や野薊写し武骨な手
挟む絵や化けて狐の牡丹咲く

大の字や夏めく土佐の草浮かび
沈まない小石の数やヒルムシロ
夏めく日探鳥へこころは誘ふ
夏始肌にはこはし能登の風
約束へ蛙の子の国へ帰り

夏邸赤いリボンの日本髪
緊張のピアノ流るる夏館
夏の昼姫攫はれて姫抱っこ
聖五月ステンドグラス染めて頬
創刊の巻頭言や万緑

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