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らんまん 七月


7/31
踏まれても塵の埋れど姫菫
カーテンの透ける色消し春の風
植物誌頁のめくり春の塵
張り巡る紙干す紐や春を待つ
悩めども赤子は育ちヒメスミレ
7/28
大柄の子守半纏友の事
秋落暉語り尽きなき女学生
次々と祝福述べて冬廊下
凍てし夜の印刷機より一枚出
屈辱の出入り禁止の暮れやすき日
7/27
こどもの日落ちて発見ムジナモぞ
石段の親子三人夏夕日
父の日の論文すすむ水の草
夏の宵徳利の油文字
咲かぬはずメジナモの花咲きにけり
7/26
人誘ふ頭の中は花畑
草萌ゆる世間話の身の話
野遊びや離れた吾子もこの空を
落ちそうに新種漂ふ春の池
石段の親子揃いて夕月夜
7/25
盂蘭盆会草花探し土佐の山
一つづつ守るもの増え秋の山
新酒には老舗の銘柄超えたし
蘭千種待ちて発見秘か咲き
秋の空楽しさの後の不安ぞ
7/24
夏始タイプライターのローマ字
歯朶を見たかの人の事口出さず
虫メガネ赤子の赤き紅葉の手
朝な夕姿を変えて去り茸
安らぎの月に叢雲羊歯繁り
7/21
春まけて草花採りの登る山
茶封筒陽当り好きな菫咲き
腹の子や花瓶のすすき枯れ始む
遅き春陣痛耐えぬ握り飯
花時の真夜の誕生第一声
7/20
胴乱や春の初めの土佐の山
日本植物図誌日本席捲夏きざす
顕微鏡見えぬもの見せ夏に入る
土用太郎瞳に映り青き空
盛夏着く標本のなか手紙かな
7/19
冬囲い人から逃げて人探し
たんぽぽや託す風待つ晴れた朝
南風寝転び眺む絶景画
足元の狙ふ気遣い水鉄砲
山桜出世する人停まる人
7/18
夕焼けの応えぬ妻の悪阻かな
三冬の食欲誘ふカルメ焼き
塩をふりポテトフライや春を待つ
夕蛙おいてきた吾子の泣き声
卒業試験逃げる理由を百並べ
7/17
新種草違い集めて冬暖
神無月一等目指し名付親
庭の草一つも名あり浅き冬
逃げ出して小春日和のウサギ小屋
おめでたの異変を耐えず布団敷く
7/14
神無月覚悟を決めて印刷機
新妻の背負子おろして小春かな
金銭出入帳眺めど増えず冬めく日
冬ざるる質屋の出会ひの温情
植物誌表紙を飾りヤマトグサ
7/13
神無月好きから始め植物学
味噌汁の豆腐氷らす破れ壁
楪や師弟関係揺らぎ初め
息切らし年越蕎麦を啜りこみ
節分の鬼運びこみ印刷機
7/12
身の丈の冬の始めの印刷機
芒原身の丈越して防ぐ道
小春日や何も隠せず壁の穴
ぼてふりの天秤軽き冬に入る
一陽来福新種発見世に出でぬ
7/11
井戸端の姐さん被り夏の朝
七輪の干物飛びそう渋団扇
雪女頃合はかり背中押し
珍客や釜揚げうどん囲む宵
鎌鼬妻のほしがり印刷機
7/10
その話どうでもいいかたぬき汁
出版や木叢ひつそりヤマトグサ
図を入れて植物図鑑冬に入る
不本意の標本作り浅き冬
上部だけ人事抗争年の暮
7/7
キャンパスの誰もゐぬ昼銀杏散る
重き耐え徹夜の机秋惜しむ
愛しみサボテン育て博物舎
教授邸花種もなき歯朶育て
水溜り飛び越したくて秋時雨
7/6
故郷の友が訪れ花八手
重陽の永遠の別れやアメリカへ
桐一葉蓬莱豆の置きみやげ
秋夕日残り僅かな油壺
十二月船は東に向き変えて
7/5
冷まじやプラントハンターの才
人見知り鞠唄出そう君のゐて
谷間の秋の草花君まちぬ
抱擁や解夏の灯の坂道
柔らかや火恋し一人待つ枕
7/4
石段や教授育てて歯朶の庭
歯朶の帯きりりと締めて立ち姿
秋の夜の下戸にわからぬウィスキー
チョコレート割る音響き秋の宵
酔ひ廻り本音飛び出し唐辛子
7/3
蝶ネクタイ九月の長屋の朝来て
靑芒新妻あわし流行り歌
夏休み採集旅行東北へ
土産持ち土佐の草花九月かな
土佐帰り背負ふ草花秋来る

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