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俳句 舞いあがれ1月


ごろごろと開け待つ門扉夏始
夏きざす自信製品無傷なり
古本屋写真撮影夏に入る
秋めきて珈琲の香の顔合わせ
未だ他人破談宣告受くる秋

瞬きや九月の検査ルーペ出し
お好み屋賞を見せたや秋の宵
十月やファンドビジネス隙みせず
ぶらここや夜目にも見えて柵の色
初仕事葉月の門の掃きし跡

オリジナル問われ電話や夜の秋
試作品時間と熱さ炎ゆる日々
会社閉づビールに涙感謝会
押釦真夏の動き転造機
プロポーズダイヤの指輪見せて秋

みなづき尽試作続きの寝不足日
試作試作すててこ仰ぎ夕の星
十度ずつ何処までテスト風死す日
秋近し五島の渚波静か
夕凪やスマホに映り大阪城

夏めく日案件持ちて父の友
仏壇の写真と話し夏の宵
麥の秋平安時代の短冊
試作品ゴールの見えて夏終わり
夏浅し認証規格準備して

父の螺子夢叶へたし秋の山
硯洗応募封筒気力込め
雁渡し取り立て人やすぐ帰し
素麵の緑の野菜母の味
卓袱台のクレヨンはみ出秋めく日

打ち合わせ右の窓には夏の山
古本屋居座りあそび聖五月
短夜の短歌の調短冊へ
写真立て語る未来の清和かな
身の丈の仕事続けて麥の秋

子供とて厳しき援助待つや春
春一新規製品の出荷日
鳥帰る五島の祖母の育て子等
冴え返る心飛び込み短歌詠み
行く春や鍵を手渡し古書店主

秋めく日再起の兆し仕事とり
秋涼し食堂集い待つ君ら
秋深し解らず製作方法
冷ややかな社員の目つき会社危機
会社閉ず決めて心や冬隣

秋の宵胸ときめかせ苺パフェ
うそ寒し留守居の遺影見返りて
行く秋や最敬礼の父の影
丹田や熱き売り込め冬はじめ
折り返し電話セールスそぞろ寒

秋近し信頼のため螺子の事
爽やかな日転造の螺子強くなり
仏前の梨の緑の映える宵
秋の夜千億の星我見つめ
天秤やパイロットと螺子選ぶ秋

再建へ冬の初めの向かい風
鳥渡る五島のばんば元気たい
電話帳上から掛けて秋終わる
飛び込みを断る居留守秋じむ日
不登校止めて見え来る秋景色

想ひ出は夏の小路の別れかな
炎昼の社員のためのリクルート
パイロット諦めきれぬ夏の果
再就職電話セールス汗流る
花八つ手咲くまで待てぬ無理願ふ

リストラや机挟んで隙間風
存続や身に入む風の強さかな
秋の宵お好み焼きの冷めていて
秋の大掃除リストラ採らぬ夫の意志
秋高し会社の未来指し示し

飛魚は海の中でも飛魚で
珈琲やランプの色も秋の色
秋日差空気流れぬ閉じる部所
秋の海母待つ母の宝船
査定前秋めく朝の床磨き

秋めく日念書の判子滑りけり
母と食むばんば弁当秋の昼
仏前に昔の部下や残り菊
白髪増えたたむ決断秋の宵
パイロット秋の空より母支え

五島へと別れ告げ来て夏の果て
骨壺や風死す路地へ父帰り
黒南風や向かう心を祖母説きぬ
銀行の念書の判子滑り汗
みなづき尽靴見て涙また涙

春疾風先行製作に決断
夏めく夜箱詰め止めて母の話す
息止まり設計変更夏終わり
夏の宵三代続き工場の香
梅雨の雷不安な予感床の父

電話切りツーツー流る雛の声
春の宵辞表届の定型文
土用前夕日差し込み会議室
明日からはやたら入れぬ夏夕べ
聖五月試作合格通知来る

食らいつく年の瀬入り新事業
嚙み合わぬ親子の思考年暮るる
小寒の遠い恋愛途切れ道
冬の宵アイスも解ける堅い椅子
馴染めなき油の匂ひ寒がはり

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