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新歳時記より 11月の季語

11/1
冬(ふゆ):冬の宿(ふゆのやど)冬の庭(ふゆのには)冬の町(ふゆのまち)冬沼(ふゆぬま)冬の濱(ふゆのはま)
   逆立ちて野良犬が毛並み冬の町
文化の日(ぶんかのひ)
   通販で国旗揃えし文化の日
11/2
立冬(りつとう)
   立冬や新しマスクてふの柄
十一月(じふいちぐわつ)
   息見えて十一月の連休
初冬(はつふゆ)
   初冬やカメラ構えてフルムーン
11/3
神無月(かんなづき)
   人不足神主募集神無月
神の旅(かみのたび)
   八百万空路開通神の旅
神送(かみおくり)
   紙送り神事の後に神送
11/4
神渡(かみわたし)
   神渡地の神さまが社揺れ
神の留守(かみのるす)
   鎮守様宮司の守り神の留守
初時雨(はつしぐれ)
   身震いが雀あわてて初時雨
11/5
初霜(はつしも)
   初霜や袖口に受く陽の温み
冬めく(ふゆめく)
   剥ぐ蒲団冬めく朝の奪い合い
爐開(ろびらき)
   爐開や去年がかをりの舞い上がり
11/6
口切(くちきり)
   口切や正客眺む竹垣根
亥の子(ゐのこ)
   父残業猪の子餅搗く母と僕
御取越(おとりこし)
   山の上檀家少しの御取越
11/7
達磨忌(だるまき)
   達磨忌や僧の仕度の早さかな
十夜(じゅうや):「十夜粥・ごこく粥」
   提灯の招く参道十夜かな
酉の市(とりのいち):「一の酉・二の酉・三の酉」
   手拍子があちこち響く酉の市
11/8
熊手(くまで)
   皆が目を背なの熊手の引き寄せて
箕祭(みまつり):「箕納(みをさめ)」
   箕納を母の行事とはるか前
鞴祭(ふいごまつり)
   盆にのせ鞴祭の温き餅
11/9
茶の花(ちゃのはな)
    屋敷裏茶の花風に揺れもせず
山茶花(さざんか)
   のど自慢山茶花の唄鐘一つ
柊の花(ひいらぎのはな)
   文机柊の花かをりけり
11/10
八手の花(やつでのはな)
   竹鉄砲八手の花が咲く前に
石蕗の花(つはのはな)
   雨音を下から聴けり石蕗の花
芭蕉忌(ばせをき)
   芭蕉忌や森林を行く人の列
11/11
蘭雪忌(らんせつき)
   線香や菊の香被ふ蘭雪忌
空也忌(くうやき):「空也念佛」
   空也忌や奥州の空雪待てり
鉢叩(はちたたき)
   川越えて鉦のリズムや鉢叩
11/12
冬安居(ふゆあんご):「雪安居(せつあんご」)
   山寺や夕日の浮かび冬安居
七五三(しちごさん)
   七五三妻の着物も様になり
帯解(おびとき)
   帯解きて簪ゆれて氏神へ
11/13
袴著(はかまぎ)
   袴著や氏神様の石段を
髪置(かみおき)
   髪置や洗髪が指つんつんと
新海苔(しんのり)
   新海苔と墨痕太く乾物屋
11/14
棕櫚剥ぐ(しゅろはぐ)
   梯子持ち棕櫚剥ぐ父を見上げたり
蕎麦刈(そばかり)
   蕎麦刈て庵の裾も見えにけり
麥蒔(むぎまき)
   麥蒔やふわふわの畝紅葉の手
11/15
大根(だいこん)
   土出でて白き大根なまめかし
大根引(だいこんひき)
   真っ直ぐと大根引の極意聞き
大根洗ふ(だいこんあらふ)
   そそくさと大根洗ふ寒さかな
11/16
大根干す(だいこんほす):「懸大根・干大根(ほしだいこ)
   空稲架や大根を干す三方ヶ原
切干(きりぼし)
   切干や強風に耐えしがみつき
淺漬(あさづけ)
   浅漬やけふは固いが文句なき
11/17
澤庵漬く(たくわんつく):大根漬ける
   桶の中澤庵を漬くあがる息
茎漬(くきづけ):茎の桶・茎の石・菜漬
   茎漬や味すっきりと鷹の爪
酢茎(すぐき)
   名店へタクシー廻り酢茎かな
11/18
蒟蒻掘る(こんにゃくほる):蒟蒻干す
   風強し蒟蒻を掘る裏の畑
蓮根掘る(はすねほる):蓮掘
   泥水やホースくねくね蓮根掘る
泥鰌掘る(どぢやうほる)
   羊羹を切るが如しに泥鰌掘る
11/19
鷲(わし)
   一筋に棚田が煙鷲の飛び
鷹(たか):鷹渡る: 「鵟(のすり)」「沢鵟(ちゅうひ)」「大鷹(おほたか)」「蒼鷹(もろがへり)」「八角鷹(はちくま)」「鶚(みさご)」「熊鷹(くまたか)」
   駅の木や椋鳥散らすにほふ鷹
11/20
隼(はやぶさ)
   隼や眼光赤く睨みつけ
鷹狩(たかがり):放鷹(はうよう)・鷹野
   鷹狩や殿が休みの屋敷跡
鷹匠(たかじやう)
   鷹匠や鳥打帽をゆがめたり
11/21
小春(こはる):小春日和・小春日
   縁側の小春日和のカフェテラス
冬日和(ふゆびより):冬晴
   冬日和冷えた焼き芋歯に沁みて
冬暖(ふゆあたたか):冬ぬくし
   手探りて脱いだ靴下冬ぬくし
11/22
靑寫眞(あをじやしん)
   曇り空けふは出るかな靑寫眞
帰り花(かへりばな):返り咲(かへりざき)忘れ咲(わすれざき)狂ひ花(くるひばな)狂ひ咲(くるひざき)
   突然の濃くて口紅狂い咲き
冬紅葉(ふゆもみぢ)残る紅葉(のこるもみぢ)
   仲間ゆく取り残されて冬紅葉
11/23
紅葉散る(もみぢちる):散紅葉(ちりもみぢ)
   公園のベンチに一人紅葉散る
落葉(おちば):落葉掻(おちばかき)・落葉籠(おちばかご)・落葉焚(おちばたき)
   しんしんと庭の西にて落葉焚
11/24
銀杏落葉(いてふおちば)
   コーン立て銀杏落葉の終の色
柿落葉(かきおちば)
   柿落葉蜘蛛糸結びチークダンス
枯葉(かれは)
   枯葉散る夕暮れ時の露天風呂
11/25
木の葉(このは):木の葉雨(このはあめ)木の葉散る(このはちる)
   木の葉散る猿ゐる梢風の吹き
木の葉髪(このはがみ)
   木の葉髪けふは多いか新聞紙
凩(こがらし):木枯
   凩に負けてなるかとランドセル
11/26
時雨(しぐれ):朝時雨・夕時雨・小夜時雨・片時雨
   傘がない止むこともなき夕時雨
冬構(ふゆがまへ)
   築山や縄の広がり冬構
北窓塞ぐ(きたまどふさぐ)
   鉤閉めて北窓塞ぐ心地なり
11/27
目貼(めばり):隙間張る(すきまはる)
   一筋の光も消して目貼かな
風除(かぜよけ)
   風除や一段毎の増す温さ
新嘗祭(にひなめさい):勤労感謝の日
   新嘗祭祢宜捧げし鏡餅
11/28
お火焚(おほたき)
   お火焚や幣舞い上がり火を連れて
神農祭(しんのうさい)
   神農祭張り子の虎の首を振り
几董忌(きとうき)
   鳴瀧へ几董忌酌み交わす銘酒
11/29
報恩講(ほうおんかう):御正忌(ごしやうき)御七夜(おしちや)御講(おかう)親鸞忌(しんらんき)お講凪(おかうなぎ)
   山寺の告知板書く報恩講
網代(あじろ)
   波もなく上弦照らす網代守
柴漬(ふしづけ)
   柴漬や小魚跳ねて光る朝
11/30
竹瓮(たつぺ)
   寝ぼけ顔竹瓮が見えて凍てし朝
神迎(かみむかへ):神還(かみかへり)
   白鷺や屋根に並びて神迎



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